第313話

〜〜 某墓地 〜〜



「風香…終わったよ、全てね…」


あの後にお風呂などを済ませてから父さん達と朝食を食べ、その後タクシーにて移動。途中花などを購入し、今は無事に母さんのお墓に到達した。


「「「…」」」


そして今、喪服に着替えた父さんがお墓の前に線香を備えてから何があったかを報告する父さん。

その後ろには同じく喪服を着た俺、姉さん、そして渡辺さんがいた。

何故渡辺さんがこの場にいるのかといえばただの偶然。前回の東京タワーの制覇の際に手に入れた禁層のモンスターの素材や深層の素材諸々を年末にオークション形式で販売するのだがそれに関する書類と父さんの手に入れた絵に関する重要な書類があり、それぞれ紙に直接目を通して貰った後にサインや項目にチェックなどが必要になったので、それをしてもらうために今日俺達家族と合流した…のだが、その流れで何故か参加する事になった。

正直申し訳ない気持ちで一杯である。


「風香、実は君の両親なんだが…」


そんな状況でも父さんは黙々と報告を続ける。

内容的には確かに全ての因縁が終わったという内容だが、その話には母さんの両親について話さないといけない。

今回岐阜で起きたスタンピードで発生した怪我人は重軽傷者合わせて970人、死者251人、行方不明者34人となった。

その中の死者251人の中に…実は母さんの両親が含まれている。

母さんの両親はスタンピード発生時、老人ホームに避難せずに何故か自宅の一室に立て篭もったのだ、だがそこにヴェロルが強襲。自衛隊の人が救助に来た時には家は半壊、かろうじて無事だった部屋には瓦礫に押しつぶされたのか材木が体に刺さっていたヴェロルの死体が1匹と部屋の奥に置いてあった金庫に縋り付く様にして亡くなっていた母さんの両親の死体があった。


「その後、私が君の実家に行ってね…金庫を開けたんだ。君の誕生日に設定していたから簡単に金庫は開いたよ」


そしてスタンピードが終結し、父さんが母さんの代わりに母さんの両親の家に現状確認をした際に試しに母さんの誕生日で金庫を開けようとした。すると金庫は簡単に開き、父さんはその金庫の中身を見て驚愕した。

金庫の中にあったのは父さんと母さんの小さい頃から成人するまでの写真を集めたアルバム、俺の記事が載った新聞、そして血まみれの手紙が入っていて、手紙にはこう書かれていた。



『コレを読むのが雄二君であることを切に願う。

まずは君に謝らせて欲しい。

私達夫婦の家庭は長年佐々木家に世話になり続けており、故に例えそれが犯罪であろう行為でさえ決して従うしかない位の関係だった。そのせいで君達家族に多大な迷惑をかけ続けてしまい、君と息子さんに会わせる顔は無いのも理解している。

だが、コレだけは信じて欲しい。私達夫婦は君と風香の結婚も孫が生まれた事も心から祝福していた、そして同時に我々夫婦は風香の死には佐々木家が関わっているとも睨んでいる。

だが我々はもう年だ、できる事は少ない。だから佐々木家が意図的に起こしたこのスタンピードを利用し、これから警備が薄くなっているいるであろう佐々木家に忍び込み、今までの悪事の証拠をなるべく集めてこの金庫に入れておこうと思う。

もちろん我々夫婦もタダじゃ済まない事になるのは十分に理解している、だがこれ以上風香が愛した君と風香と君の子を苦しめる事だけは絶対にしたくない。

だからもし君がこの手紙を見…(コレ以降は血まみれで読めなくなっている)』



「…以上が君の両親の手紙の内容だ。現場を見ただけの推測だけど、多分この手紙を書いている途中にモンスターに襲われて、急いで金庫にこの手紙を入れて閉じてから鍵をかけた段階で力尽きたんだと思う…ずるいよね、そんなに思い詰めているならばキチンと話して欲しかったよね…」


そう言って父さんはお墓の前で涙を流し始める。

父さんは母さんの両親は俺達親子を恨んでいる、そう思っていた。だが、本心は真逆で恨む所か祝福していて、佐々木家に協力しつつ裏切り、一矢報いるタイミングを見計らっていたのだ。

正直俺も父さんに同意見だ、佐々木家の目を欺く為に全力で芝居をしていたとはいえ何処かのタイミングで俺達に相談の一つでもしてほしかった。そうすれば俺だって母さんの両親の安否を確認してから佐々木家に行く事だってできた筈だ…本当に、惜しい人達を亡くしてしまった。

そんな父さんの横に姉さんが一歩前に出てお墓の前に出る。


「始めまして、渉の姉になった佐藤 千花です。貴方からは生まれていませんがキチンと渉と父さんとは血が繋がっています、恐らく貴方とも血が繋がっています。

だから母さんと呼ばせて下さい、そして…私をどうか娘と呼んで下さい」


そう姉さんが言うと顔を暗くする。

そんな状態がしばらく続いた後にようやく父さんは泣き止み、立ち上がる。


「…帰ろう、渡辺さんもありがとうございました」


父さんはそう言って歩き出す。俺達も急いで後を追い、ある程度歩いた場所にあったコンビニの駐車場についた。その後父さんがスマホでタクシーを呼ぶ為に電話をして、渡辺さんとも少し話してから俺達の方に来る。


「渉、今日は時間を作ってくれてありがとう。それと千花の住む場所だが…」


「問題ない、このまま千花姉さんは俺と一緒に住むよ。スキルの訓練にも付き合ってもらわないとダメだしね」


「…そうか」


俺と父さんはそう言って空を見上げる。正直今の天気は曇りだが、今の父さんの心は晴れの様にスッキリしている、俺はそう感じたのだった。



〜〜 数日後 〜〜



「それで、今日までカバンを返し忘れていたんですよ?」


「ああ、すっかり忘れていたんだよもち丸」


俺達は無事に墓参りが終わり、東京に帰って数日が経過した。相変わらず姉さんとの訓練は継続して行っていた日々を送っていた、しかし昨日の夜に姉さんの装備を作ろうとモンスターの素材を選んでいたら佐々木の家の部屋で回収したエアタグがついたカバンを発見し、今日の早朝に届ける為に現在荒川区の実家があるマンションの階段をもち丸と一緒に登っていた。


「…っと、この階だ。もち丸、604号が実家だからもう肩に乗ってくれ」


「了解ですよ!」


俺はある程度上るともち丸へ指示を出して肩に乗ってもらう。今日はただカバンを返しに来ただけだ、コレが終われば月の兎でモーニングを食べる予定もある。

俺はそう考えながら604号室の前まで歩き、インターホンを押す。


「…ん?…留守か?」


「いや、足音が近づいているですよ。もうすぐ開くと思うですよ」


しかし呼び出しても反応が無かったのだが、肩に乗せたもち丸が足音を聞いていたので恐らく何かをしていたからインターホンに出れなかったのだろう。そのまま少し経つと玄関の扉がひら…いて…


「はーい、お待た…せ…」












「何でこの家にいるんですか渡辺さん?」


「うぁお!ダンナ、褐色美人さんが男性用のシャツ一枚で出てきたですよ。眼福眼福!!」


扉から出てきたのは父さんの仕事着の一つであるスーツのシャツ一枚を着て下は生足の状態の渡辺さんだった。


「…何で渉さんが?」


「それはこちらのセリフです」


流石の状況に頭が混乱し、肩のもち丸は何故か両手で合唱して渡辺さんに感謝していた。

その後しばらくそのままお互い固まっていると家の奥から父さんが出てきた。


「…渉」


「…父さん」


出てきた父さんはズボンはキチンと履いている、しかし上半身は裸であり首元には既視感のある赤い跡が大量についていたり明らかに噛み跡のようなものまで見えている。


「渉…不甲斐ない姿を見せてすまん。私とした事がお酒に負けて…コレでは風香に合わせる顔が…いや、私は一応バツイチの父親だから再婚もできるし、何より責任は取らないと渡辺さんに失礼だな…うん…」


「大丈夫、ウチは雄二さんLOVEですから寧ろいつでもばっちこいでした。

ですので、いつでも雄二さんと再婚できますよ!」


頭に手を当てて部屋の天井を見上げる父さんに渡辺さんは正面から笑顔で抱きつく。

その光景を俺は見て全てを理解し、俺ともち丸は顔をみわせた後にまた父さん達の方を向いてからひとまず息をすう。











「まさかの『ゆうべはおたのしみでしたね』だとーー!?!?」


「伝説の朝チュン展開ですよーーー!!!」


そして一気にもち丸と一緒に大声を出し、マンションの周辺に俺ともち丸の声が響き渡ったのだった。

こおして俺達家族の因縁は終結し、新しく千花姉さんが家族に加わった。その後しばらくして父さんが渡辺さんと再婚する事になるのだが…それはもうちょっと後のお話。



~~side 無 ~~


古びた狩人の拠点の建物の中、ソファーの後ろにある石像が七色に光りだした。そしてその石像の前には焔がいた


《さて、1ヶ月くらい遅れての発光だ。それに今回は4回目の発光…そろそろ残留思念が何を言っているのか少しは分かると思うんだが?》


焔はそう言って未だ光る石像に自身の狐耳を向けて集中する。


《…うし、少しだが聞こえる。さて、何を言ってるんだ…?》


そう焔は言うと焔はどこからか紙と筆を取り出して不規則に文字を書いていく。

そして石像の光が収まると焔は字を書くのをやめて、文字を書いた紙を見た。


《『止めてくれ』、『崩壊』、『合成』、『計画』…そして、『翔太』、『室谷』、『桜花』…か…最後の3つは人の名前…だろうな、翔太は今回の騒動の首謀者の名前と一致している。なら…室谷って奴と桜花って奴は誰だ?》


焔は紙を見て頭を悩ますが、今はこれ以上の事は分からない。だから今は判断しきれないと思った焔は隠す様に紙を自分の懐にしまう。

そしてしまい終わった後に今回もいつのまにか机の上に置かれた本を手に取り、タイトルを見る。


《『Monster Hand Live 【Eden&Herr】』…英語ばっかりでタイトルを見るだけで読むの気力が失せるな…日本語を使え日本語を》


タイトルを読み上げた焔だが、余りの長い英語の文章にうんざりしていた…のだが、急に名無しの友狐達が働いている農場が騒がしい事に気づく。


《おいおい、何でアイツがいるんだよ…本当、前回同様予想外すぎて退屈しないな…チクショウ》


そして、急いで建物の外に出た焔は農場を見てそう吐き捨てるのと一気に走り出し、農場に突撃する。

こうして今回の渉達の戦いは幕を閉じた。しかし渉達は今はまだ知らない、暗い闇からゆっく想像もできない悪魔がゆっくりとだが光の先へ出てこようとしている事に。

そんな中、次に渉達が動き出すのは渉達が無事に2年生になり、桜が散り梅雨が近づいてくる5月…渉達〈狩友〉は1人の女性の儚い願いの為に京都で大暴れてる事になるのだった。




~~~~~~



第四章 完







NEXT  女性の願いと旧家の望み×叶とカワウソドラゴン娘と鬼と純粋=京都海の魔物


















佐藤 渉/男



ジョブ



『匠』



『狩人』



スキル



『解体の極み』


『採取&採掘名人』


『地図』


『観察眼』


『努力』


『(自分の理想の狩人)』


『(湖岸の古びた狩人の拠点)』

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