第298話

〜〜 side 佐藤 渉 〜〜



双魔変異、それは『people's redemption 〜罪を狩る者達〜』のDLCの一つである『実験体番号:142番』にて追加されるシステムである。

元々報酬品ガチャと言う沼システムであった人体総変異を更に沼らせた根元のシステムであり、このDLC以降のミュータントがこのシステムを使用して戦う事前提で調整されたという戦犯DLCでもある。

このDLCの内容は簡単に言うと自業自得、ゲーム内で共産主義国家を作ろうとしたとある団体がミュータントとの戦闘で死んだ討伐部隊の死体から人体総変異装置を回収、分析して独自発展させた。それが双魔変異でありコレに気づいた主人公サイドが双魔変異について調査するという感じの内容であり最終的には三種類のミュータントの細胞を入れられた実験体番号143番の男性が暴走、キメラじみたミュータントになり研究所もろとも共産主義者達を皆殺しにした。

唯一生き残ったのは実験体番号142番の白髪の少女、『カナリア』とそのカナリアを守りつつ共産主義者側を内側から崩壊させるべく暗躍していた研究者の老人だけであり、そのミュータントを討伐した後は主人公側に付き、老人は罪滅ぼしの意味をこめて双魔変異の技術を主人公側に提供しつつそのまま研究者として働き、カナリアは何故か主人公の妹として一緒に生活する事になる感じの内容だ。

そして双魔変異というのはぶっちゃけると簡単で、今までら変異装置から出た針を直接人体に刺して傷を回復するついでに変異させていた。だからそこに双魔変異装置を内蔵した特殊な武器に変異装置を組み合わせて使う事で変異している制限時間と副作用の軽減をしつつ、変異の時間が半分になる代わりに別の変異装置を使えば更に人体総変異を重ねがけできるようになる。

それが俺が持っていたサバイバルナイフの正体であり、アレの名前が『試式変異短刀〈国崩れ〉』である。

そして、実はこの双魔変異を作れたのにはあるモンスターとの出会いがあったから製作できた背景もある。そのモンスターとは…


(⦅お前の力、使わせてもらったぜ…金ピカ蠍!⦆)


前回のダンジョン制覇において禁層で戦った金色の蠍型モンスターだ。

あのモンスターは食べた獲物の特徴を得て強化できる力があった。つまり昔手に入れた回復するスライムの粘液とは違うが本質は同じ様々な物に変化する細胞を持っていたのだ。だからそれを参考にして今までの技術を総動員した結果、人体総変異の改良に加えて双魔変異装置が完成したのだ。


『チィッ、私が力負けするとか本当に人間なの!?』


「『今の俺はさっきに加えてもう一体、俺の思い入れのある龍の力が加わっている。だからさっきまでとは次元が違うんだよ!』」


緋雷神龍がそう叫ぶようにして尻尾や砂鉄で攻撃してくるが、俺はそれを全て受け流しつつ反撃の蹴りやパンチなどを繰り出しているのだが力の差が大きいのかそのまま緋雷神龍は少しずつ押され始める。

まあ、それは当然の結果だろう。何せ今の俺は緋雷神龍と魂骨炎狐龍の身体能力と特徴が付与されている、つまり2体分の龍の力が今の俺にあるのだ。力負けして当たり前、それどころかそのまま直ぐに倒されずに攻撃を続けている緋雷神龍の方が驚きであり、俺でさえ隙を見て止めを刺そうとカウンターに徹している状態だ。


『…』


しかし、そんな時にチャンスが訪れた。何と緋雷神龍が黙った瞬間に砂鉄の氷柱で集中砲火をし始めたのだ。


「『…レールガン!』」


俺はその場で放電しつつ、この行動が先ほどのレールガンを撃つ前段階であると判断した。

そう、コレこそ俺が待っていたチャンスだ。俺はそう理解すると操っている骨の左手を未だ口を閉じつつこちらを見ている緋雷神龍の間に移動、そのまま左手を分解して骨の柱を何本も俺の前に並べる。


「『さあ、来な。最後の大勝負だ』」


『…』


俺はそのまま体をいつでも動けるように構え、白い炎と赤い雷を全力で放出する。

そう、俺はレールガンを避けるつもりはない。骨の柱で受け止める事にしたのだ。普通に考れば無謀、死ぬような考えだが今の俺なら間違いなく耐えれる。何故なら…


『!』


次の瞬間、爆音と共に赤い光に溢れた。次の瞬間衝撃と共に目を閉じて一歩後ろに下がる俺。


















『グァ…な、何で…!?』


そして聞こえてきたのは緋雷神龍の驚きの声。

その声に俺はゆっくりと目を開ける。


「『…一歩下がって正解かよ』」


すると目の前には六角の形に形成された砂鉄の塊が状態で止まっていた。


「『砕けた際の破片と骨粉、そして白い炎による接着能力に全てをかけたが…上手くいったな』」


俺はそれを見て賭けに勝ったのを実感した。

俺は魂骨炎狐龍を研究した際にわかった事がある。それは確かに魂骨炎狐龍は骨を操る白い炎を吐くのは間違いない。だが操る骨の状態…例えば完全な状態の骨なら榴弾みたいに使えたりブロックのおもちゃのように組み合わせて好きな形にできるのだが、骨粉に炎を灯すとせん断増粘流体の約10倍くらいの衝撃吸収能力に加えゲル状かつ粘着性の高い白い液体のような炎ができる。

コイツは計算上だが弾丸は愚か戦車の砲弾、果てはレールガンの弾すら止められる可能性がある最高の緩衝材なのだがそれはあくまで計算上の話だ。実際はどうなるか分からなかったからぶっつけ本番にかけるしかなく、実際に骨粉使った骨粉も柱にした骨の余りを気づかれないように赤い雷で砕いた物とレールガンが当たった際に砕けた骨の破片で代用したし、それらを余す事なく使う為に最大出力で白い炎を展開し続ける羽目になったが結果的に最後の柱を貫通した穴にゲル状の炎が引っかかり最終的にレールガンの弾である六角の形をした砂鉄の塊は止まった訳ではあるが本当にギリギリだった。一歩下がっていなかったら眉間に当たっていたかもしれないしもし賭けに負けていたら頭どころか上半身はは跡形もなく吹き飛んでいただろう。

だが、俺は賭けに勝った。


「『シュ!』」


俺は急いで緋雷神龍の元に走る、奴はレールガンを撃った後はしばらく動けない。先程の会話を参考にするなら3分間は間違いなく全身が動かない。このタイミングしか俺には勝機は無い、俺は全力で走り、そして…


「『オラ!』」


『グッ!?』


最初に変異した後にナイフで切った腹の傷に俺のを槍の様に尻尾の骨が全部入るまで突き刺したのだった。


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