第293話
『お喋りはここまで…いくよ』
俺が武器を構え直したのを見て、緋雷神龍は俺に向かって突撃する。その際にはもう右肩に新しい砂鉄を集め終わったのか砂鉄の布が復活している。
そして、突撃すると同時にその布が変形、まるで鞭のように細長くなり俺に向かってしなりながら向かってくる。その様子はまるで獲物を見つけた蛇のようだった。
「チィ!?」
流石の俺も触れただけで致命傷になりかねない攻撃は普通に避けるしかない。
そして避けていると次に来たのは緋雷神龍の左腕による左ストレート。もちろんこの攻撃は砂鉄の攻撃では無いから先程と同じくギリギリで避けた、その後すぐに黒くなった左腕にナイフでカウンターを仕掛ける。
「…は?」
しかし、黒い甲殻に切りかかるナイフの刃は寸前で何かによって強制的に止められる。まるでナイフと黒い甲殻の間にスーパーボールが挟まっているような感覚に驚いていると俺の真後ろから殺意を感じる。
「クソッ」
俺は急いでナイフで切り掛かる勢いを利用して体を回転、左腕を足場にして蹴ることで真後ろから迫ってきていた砂鉄の氷柱を回避する。
『甘い』
だが、ここで更に予想外の事が起きた。何と回避した先にあった左腕に砂鉄の氷柱が刺さろうとしたその瞬間、まるで石を持つように氷柱が止まるとそのまま回避中の俺の方に方向転換したのだ。
「マジか!?」
今の俺は回避中、流石にその状態では攻撃されたら回避できない…なら、切り札その2を使うしか無い。俺は左手を回避中に見えた緋雷神龍の背中に刺した複数の睦月の一つに向かって左腕を伸ばす。
『!』
すると服の袖から複数の太い糸が伸び、苦無である睦月にの取手に絡みついた。そしてすぐに取手が回転、絡みついた糸を俺ごと一気に巻き取り始め俺は一気に引っ張られて移動する。
緋雷神龍も予想外の行動だったのか慌ててまた砂鉄の氷柱を発射、それは俺のいた場所を瞬時に通り過ぎるがもう俺はそこにいない。
『妖滅伝』の絡繰武器の一つ『睦月』、対象に刺す事で返しを発動して抜けなくする。さらに取っ手に内蔵されている巻き取り機能を使えばこの様に自分を引き寄せるのも簡単な多機能何苦無だ。
そしてもう一つの絡繰武器『影蜘蛛』、両腕の服の中に仕込んだ特殊なカーボンファイバーを内蔵した手の部分を手首から肘までを守る仕込みガントレット。この武器自体に攻撃性はあまり無いがこの様に他の武器と組み合わせると様々な使い方ができる他、糸だけでも様々な使い方ができる便利アイテムだ。
だからこの様に糸を睦月に向かって射出すれば回避中でも移動は可能だ、そして背中に着地してからすぐに俺はまた右手のナイフを背中に突き刺すように振り下ろす。
「…まただ」
しかし、またナイフは背中の甲殻に触れる手前で減速し止まる。力一杯に振り下ろそうとしてもこれ以上は先に進まない。
『無駄、武器が磁気を帯びやすい性質の物なら私の磁気で一時的に磁石にできる。だから接触できないようにする事なんて余裕』
「…クソ、武器を鉄じゃなくてステンレスで作るべきだった!」
思いっきり体を揺すり、背中にいる俺を落とそうとする緋雷神龍とそう会話しながら糸を回収しつつ背中を蹴り、俺は地面に着地する。
奴は雷を放電できなくなったが代わりに甲殻や鱗は磁気を発生させて砂鉄を操れるようになった。だがまさかその磁気が俺の武器を一時的に磁石にできる能力があるとは予想外だ。
あのスーパーボールがナイフと甲殻の間に挟まっている様な感覚は磁石の反発作用。磁石のN極とN極、S極とS極が絶対に引っ付かないみたいにナイフと甲殻が触れる前に磁気で同じ極にして弾いていたのだ。
確かにそれなら先程の2回の攻撃が当たる前に止まったのも、俺が避けて当たるはずだった砂鉄の氷柱が止まって方向転換し、再度俺に突撃してきたのも納得できる。赤い雷を捨てて物理攻撃に特化したと思ったらとんでもない防御手段を持っていたものだ。
(くそ、ざっくり磁気に影響されない物を上げるならステンレスに銅、金と銀…そしてアルミくらいだな。
でもアルミ製の花散は残り十本しか無い。更に至近距離だと俺も爆発に巻き込まれてしまうから遠距離で投げる以外は使えないし、何より遠距離だとあの砂鉄でガードされて爆発が届く可能性は低い…くそ、マジでナイフの材質をステンレスにするべきだったな。鉄製の方が材料が手に入りやすいからこっちを採用したのが仇になったか!?)
俺はそう言って急いで左手の睦月をポーチに仕舞い、ある物を取り出そうとした。
『油断大敵』
しかし、緋雷神龍はその動きを読んでいたのか俺の周囲から大量の砂鉄が浮かび上がり回転しつつ俺の周囲を完全に取り囲む。
『このまま砂鉄の竜巻で渉、貴方を殺す…コレ、本当で死ねるヤツだから耐えれたら凄いよ?』
そう緋雷神龍が言った瞬間に大量の砂鉄が渦を巻きたちまち俺を中心に竜巻が発生すし、その竜巻は渦を巻きながら俺のいる中央に向かって徐々に削りながら迫ってくる。
「鬼畜すぎだよ本当に!」
俺は急いで左手に彼岸花が彫られた人体総変異装置を構え、サバイバルナイフを逆手に持つ。そして俺は…
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