第158話

「!?!?」


「んっ…」


俺は余りにもビックリして立ちあがろうとした、しかしそれはキスしている桜といつの間にか後ろにいた2人の桜によって阻止される。

そしてそのまま数分…いや数十分?…とにかく長い間桜とキスをしていた。そして…


「…っ…ふふ、初めてだったけと、心から満足感が溢れてくる。キスっていいね」


「…あ…え…?」


分身が消えたと同時に桜が離れた。その後直ぐにそう言うと唇を指で撫でながら笑顔になる。しかし顔は赤いし目線は俺を捉えている。

俺も俺で桜のとんでもない行動にもはや言葉がでない。

桜の唇からつわわって来た彼女の体温や息遣い、それに何処からかいい匂いも感じた…正直に言うとオーバーヒート寸前です。

しかし桜はある意味で的確な追い討ちをしてきた。


「渉…







ボク月神 桜は、貴方の事が好きです」



拝啓今の父さんと前世の父さん。私は今生まれて初めて女の子から告白されました。しかもキスの後にです、肉食系です。アッアッアッア…


「最初は渉の事をそんな目では見てなかった。

今までにボクに告白して来た男性は皆ボクの夢なんてお構いなし、揃いも揃ってボクの容姿や家柄で近づいて来た人が大半だった…けと、渉だけは違った。

渉はボクの夢を理解してくれた、夢を叶える為に身を危険に晒してまで全力で協力してくれた、ボクの容姿や家柄ではなくボク自身を見て全てを判断してくれた、本当のボクと対等に話してくれたり弱った時には助けてくれた…そんな君にボクはどんどん惹かれていったんだ」


そう言うと桜は未だ頭の処理が追いついていない俺に顔を近づけてくる。


「ボクは君が好きだ、それは絶対に変わらないし変えるつもりもない。

でも今のボクの気持ちは片思いだ。こうやって告白しても渉を混乱させるだけ、マトモな思考の時の渉じゃないとキチンとした返事を貰えないのはわかってる…だからね」


そう言うとまたキスできる距離まで顔を近づけた桜は…


「君がボクを好きになる様に、これから猛アタックする事に決めたんだ。君からボクに告白してくれる、もしくは君が他の女性に告白するまで決して諦めない。

ボクの新たな夢は『渉と一生添い遂げたい』…この夢だけはボクの力で全力で挑みたいからね」


そう桜は言い切った。

正直桜みたいな女性からから告白されるなんてマジで天地がひっくり返る位に嬉しいが、俺もまだ全力で叶えたい夢が叶え終わっていない。だからせめてその夢が一段落つくまでは答えられる資格はないし、そもそも途中で死ぬ可能性だって大いにあり得る。そんな状態で桜の告白を受ければただ彼女を悲しませるだけだ…ならば俺なりにこう言うしか無い。


「…桜、お前の気持ちはわかった。だからあえてこう言う。

俺が好きなら全力で俺の心を狩ってみろ、お前が全力で来るならば俺も全力で対処する。そしてお前がもし俺の心を狩れたなら俺の一生はお前の物だ」


「…渉らしい例えだね。素敵だな」


そう言うと、一瞬だけ桜は優しい顔になったが、直ぐに何かを思いついたのか意地悪そうな顔になる。


「…あ、ごめん。一つだけ言い忘れてた事があったんだ」


そう言うと桜は俺の首筋を撫で始め…


「んっ…」


「ふぇ?」


そのまま撫でていた所に吸い付いてきた。

俺は桜のいきなりの行動や吸い付く力、そして非常識な現実に情けない声を上げるだけだった。

大体数十秒くらいだろうか、そのまま首筋を強く吸い続けた桜は満足したのか笑顔でゆっくりと離れる。


「…へ〜…本当な跡ってつくんだ…いいね」


「おま…何を!?」


桜はそう言いながらも笑顔を崩さない。俺はようやく体が反応し、吸われていた首筋を押さえる。


「渉、ボクって一途なんだけれど…それと同時に嫉妬深いんだともりかいしてるんだ。

だから渉に『虫除け』をつけちゃった♪」


「いや虫除けって…」


桜はそう言いながら席から立ち上がる、しかし俺は未だ首筋を押さえたままだ。


「渉、ボクは先に会場に戻るからトイレで見てくるといいよ。

別にゆっくりでもいいけど怪しまれないようにね」


桜はそう言うと俺から離れていく、恐らく会場に戻ったのだろう。

俺は少しの間、無心で席に座っていたが取り敢えず席から立ち上がりトイレに向かう。そして手洗い場に到着し、自分の首筋を確認した。


「…ガッツリ唇の跡があるな…どうしよう…」


俺はそう言いながら取り敢えず持ってきていたハンカチを少し濡らして跡の所を拭きながら今日の事を自分なりにまとめ始めた。


「桜の脅威の排除、一二三の夢の達成、報酬や進路の件、そして桜の告白…一日で事が起きすぎだろ…!?」


俺はそう言うと首筋を拭くのをやめて鏡を凝視する。今日一日は濃密すぎる事が起きすぎた。マジで頭が痛くなってくる…が、同時にワクワクもして来た。


「最高の新しい学舎へ信じられる仲間達と進学…最高じゃないか。桜の件は今はまだ考える状態じゃ無い、俺の夢が一段落してからキチンと返答しよう…てか、この首の跡をどう説明したらいいんだよ?」


俺はそう言いながらまた首筋を触る。

そんな事を俺は考えながらも時間は過ぎて行ったのだった。



~~side 無 ~~


古びた狩人の拠点の建物の中、ソファーの後ろにある石像が七色に光りだした。


ドサッ


そして光が収まると、今度はソファーの近くの机の上に1冊の本が音を立てて置かれ、ソファーの上には何かが居た。

机の上に置かれた本のタイトルは 


『Gourmet・Hunter・World』


そしてソファーにいた何かもゆっくりと体をお越し、ソファーから降りて二足歩行で立ち上がる。


「…?」


そしてその何かは周りを見渡してから中庭に出る扉まで行き、建物の外に出たのだった。

果たして、この本とこの何かが佐藤渉にどの様な影響を与えるのか、それは誰にもわからない。

そして渉の中学生の生活は流れるように過ぎ、遂に波乱の高校生活が幕を開けるのだった。



~~~~~~



第二章 完







NEXT  新しき学舎×再会の五人目=樹海の絆


















佐藤渉/男



ジョブ



『職人』



『料理人』



スキル



『解体名人』


『採取&採掘名人』


『地図』


『鷹の目』


『努力』


『モテ体質(動物)』


『(湖岸の古びた狩人の拠点)』

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