第103話
〜〜 8月4日 スカイツリー展望デッキ内ダンジョン 中層 朝 side 佐藤 渉 〜〜
「…」
「…スゥ…スゥ…」
何だこれは、誰かこの状況を説明してくれ。
(落ち落ち落ち落ちっ落ち着け俺!昨日はどうした?鏡餅の如く上に桜を乗せて寝落ちしたよな。
なのに何故こんな恋人みたいに抱き合ってねているんだよ!?
こんないい匂い…ゲフンッ、いやこんな柔らかい…って何言ってるんだ俺は!?)
俺は体を動かさずに頭の中で悶絶していた。
俺は目覚めて数秒で頭をフル回転する羽目になったのだ、理由は簡単で目を覚ましたらいきなり桜を抱き枕みたいに抱きしめていたのだ。眠気もぶっ飛ぶどころかほぼ明後日の方向にしか思考が回らない。
(とっ取り敢えず桜から離れよう。皆の朝ごはんを作らないと後が大変だ)
しかし、上手く思考が定まらない頭を無理やり動かして俺はゆっくりと桜を起こさないように離れていく。
「…っん、渉…」ボソッ
「〜っ!?!?!?」
しかし、桜から漏れる優しい声の寝言に俺は思いっきり下唇を噛んで叫び声を殺したのだった。
〜〜 数十分後 〜〜
「桜の奴、俺を社会的に殺すつもりかよ」
俺は何とかベッドから脱出して、部屋から出た。そして扉を閉めた後にそう呟くと、キッチンの方に意識を向けようとした…が、
「…血の匂いだと!?」
狩りをする度に嗅いでいる血の匂いがするのに気がついた。
「…中庭か?」
俺は血の匂いが中庭からするのを感じながら内心はかなり焦っていた。拠点を出したのは帰還用ポータルの効果範囲内だ、つまり敵意の無いモンスターしか入れない。だから絶対に共食いはしないから血の匂いなんて嗅ぐことなんて無い。
つまり考えられるのは…
(誰かが拠点に入ってきたのか?)
俺たち4人以外の誰かが拠点に入った可能性だった。
その場合は正直どうしたらいいか見当もつかない。
「…確認するしかないか…」
俺はそう言うと中庭に向かって歩きだす。
(頼むから話が分かる人であってくれよ…)
そして、俺は中庭に出る扉の前までいき扉を開けた。
「…」
そして俺は目の前にある光景に絶句した。
その光景とは…
「血まみれの茄子…だ…と!?」
「食料を確保してきたのに何その言い方?流石に否定する」モグモグ
中庭には沢山の種類のモンスターが混ざって山積みになっていたり、ヤシの実みたいな果実やバナナみたいな果実など様々な果実がなった木が木ごと乱雑に置かれてていたり、自然薯などの数種類の植物が何かの植物のツタで縛られてまとめられていたりしていた。
そして俺の目の前には元々紫色だった茄子の着ぐるみパジャマだったがモンスターの返り血で真っ赤に染まっていて頭から角と下半身からパジャマを突き破って尻尾を生やした一二三が無表情でバナナみたいな果実を食べながら俺と話している。
「いや、これは流石に予想できないって…」
「…因みにこのバナナは私以外は食べないほうがいいよ。
甘さがグラブジャムン並だし、味の濃さが二郎系ラーメン並。後、私のスキルでわかったんだけどこのバナナはカロリーが1本で20代成人男性の2週間分の摂取カロリーに匹敵するし、更に噛んだ瞬間にアボカド十個くらいの濃度の油が果肉から溢れ出るよ。
まあ、私には半日のカロリーを1本で摂取できるからかなり有り難いんだけどね。でもそれとは別に朝食を頂戴、なるべく甘くないやつ希望」モグモグッ
「何この状況、全てが色んな意味で超怖い」
何だコレ、もはやツッコミどころが多すぎて頭痛がしてきそうだ。
「…取り敢えず、どうしてこんなに食料を取ってきたの?」
俺がマジで苦い顔をしながら絞り出すようにそう言う。
「ムシャクシャしてやった、後悔はしていない。文句は私の両親へどうぞ」ゴクンッ
一二三はそう言うと口の中の果実を飲み込んで今度は近くにあったココナッツのような果実に近いてその内の一つを手でもぎ取り、自分の尻尾を器用に突き刺して穴を開けてそこから中身を飲みはじてた。
「…因みに味は?」
「ングッ…飲むヨーグルトにライチを足した感じ」
「何それ飲みたい」
「わかった」
俺がそう言うと、一二三は飲むのを一旦やめて足元にあったココナッツもどきをまた一つ外して尻尾で穴を開けてから俺に渡してくる。
そして俺は渡されたものを躊躇いなく飲んだ。
「…あ、うまい。俺これ好きだな」
「そう、因みにスキルで確認したこの果実のカロリーなんだけど、具体的にはほぼ冷や奴くらいだから結構低カロリーだね」
「へぇ…味的にもカロリー的にも朝食にピッタリだな。なあ、今日の朝食にコレを出してもいいか?」
「問題ない、しょっぱい味をさっぱりできそうだし」
「しょっぱい味は確定なのね…」
俺はそう言いながら少しため息をつく、正直モンスターの解体と果実等を食べても問題ないか調べるのにかかる時間がどのくらいになるか分からない。
つまり朝食は簡単かつ量が作れる甘くないやつ…つまりアレだな。
「…朝食作るから風呂入ってこい。流石に血の匂いを漂わせての朝食は勘弁したいからな」
「ングッ…確かに。了解、一緒に入る?」
「飯抜きがいいか?」
「冗談」
一二三は無表情でそう言うと両手の握力で果実を粉砕してその場に捨てた。
そして俺の横を通り抜けて建物の中に入っていった。
「…さて、俺もやりますか」
俺はそう言うと立ち上がり、モンスターの山に近づいていく。
そしてどんどんモンスターを拠点に送って行ったのだった。
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