第23話

ゴクッゴクッ


この狩りは俺が勝った、しかしこの勝利は偶然に偶然が重なった結果だと思う。

もし俺が閃光玉を持っていなかったら?

もし斧の稼働機構が上手く動かなかったら?

他にも色々と考えてしまう。

しかし、俺も満身創痍だ。

特に頭からの出血がひどい、今更だが頭が痛くなってきた。

俺は急いで少し離れて落ちている麦茶の入ったスキットルを拾いに行く。

そして俺は中の麦茶を飲んだ。すると…


バキッバキバキバキッバッキッ


全身からやばい音が鳴り響いた後、頭の痛みが消える。

俺は顔に付いた血を袖で拭くが新しく血が垂れてくる事もない。


「…いや、効果は知ってたけどね…改めて思うとヤバいわコレ」


この世界にはポーションと呼ばれる密閉された瓶に入った液体がある。

現在確認されている種類は青・黄・赤の三種類で青いポーションはすこし深い傷くらいしか治らないのに対して、赤いポーションは体の一部がなくなっても生えてくるし大抵の傷も治る。黄色のポーションはその中間だ。

そしてポーションはダンジョンの宝箱でしか手に入らないので貴重であり青いポーションで価格が平均10万程度で取引される。赤いポーションなら価格は天井知らずに吊り上げられるのもザラだ。

そしてポーションは飲めばスグに効果が表れゆっくりと傷が回復するが瓶から開けたら直ぐに飲まねばならない。何故なら酸化が物凄く早く、直ぐにただの色のついた水になるからだ。

しかし俺が今飲んだのはポーションではない、『people's redemption』に出てくる回復薬Aだ。

この回復薬の主原料はモンスターの血であり、作り方は血を入れた容器に数種類の漢方を一緒に入れてしばらく待つ。すると血が発光するので漢方が入ったまま血を鍋に入れて沸騰させる。

そうしたら何故か漢方が完全に分解されて血と交じり、完全に沸騰した頃には血の色が茶色になる。

最後に色が変わったら火を止めてそのまま時間をかけて冷ましたら完成する。

効果は骨折にヒビは治り大抵の傷も治る、オマケに筋肉痛や骨のズレも治る。そして味は麦茶だ。

これの保存については調べたら保存方法は密閉を推奨くらいであまり必要な事は無い。

薬の効果は密閉しなければ約半年、密閉すれば一年は効果がキチンとでると検査結果が出た。しかし1年たっても味は麦茶だった……試し飲みした日の翌日に腹は壊したが……

因みに注射するタイプやタブレットタイプもレシピにあったので制作を考えたが、水みたいに飲むタイプなら喉も潤うし一石二鳥だと思ったためスキットルに入れて飲み物として携帯するこの薬にしたのだ。

この薬は解毒作用はないが殺菌作用があるから本来お酒を入れなきゃいけない物でも入れられたのはありがたい、だが洗いにくさは変わらない。スキットルの構造が悪いと思う。


「モンスターはやっぱり不思議だね」


モンスターの魔石は砕いて粉にすれば効果を増大させる汎用性の塊だかモンスターの血は何にでも変化する可能性の液体といえる物なのだ。

何せ回復薬だけではなく閃光玉に使う電球、その電球に一番重要なフィラメントと呼ばれる光るのに重要な部分があるのだがコレを竹炭の粉に血と蜂蜜を使いなんやかんやすると一瞬だけ光るが光り方が強烈になる赤黒いフィラメントが出来る。

それを閃光玉用の電球に使えば威力はさっきの戦闘が証明している、そして懐中電灯と斧に入っている4本の単二の乾電池もモンスタ―の血が使われているのだ。

薬にも道具の材料にもなる、正に魔石並みに必要な素材といえるのだ。


「……ポーション探すか……これは飲み物として携帯しつつ回復した時の言い訳にするために……」


取り敢えずこれがバレたらヤバい、改めて考えても追及されたら言い訳がない。

何せギルドにはポーションをキチンとした流通、管理するための部署がありそこで市場に流す量を制御している。

そんな世の中にこの麦茶の味だが効果は折り紙つきの薬が量産できると言ったらどうなる?

見つかったら間違いなく強制的に生涯コレを作るだけの人生になるし、もしかしたら他国との戦争の引き金になるかもしれない。

だからこそ隠す、そして言い訳の為にもポーションの入手は絶対だ。探そう、保身のために。


「取り敢えずここから離れよう、武器や道具の回収や死体の回収も忘れずに」


俺はそう言いながらまずは近くに落ちていた予備用の電池を拾う。そして斧から電池を抜いてからキチンとしまう。

そして数分後、その場に血痕以外何もない事を確認してから急いで森から出る。今襲われたら次は確実に死ぬからだ。


「目指すは帰還用ポータルだな…」


無事に森からでた俺はそう言いながらポータルに向かい歩き出そうとした…が、


「…全身から血の匂いがする…気になるな…」


覚えた地図だと少し戻れば小川がある、そう思った俺は来た道を引き返したのだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る