セブンスター
雨宮結城
Mission 1
「……」
水の中で、少女は目を閉じていた。
何も考えず、心は安らぎ、心地良い。
このまま水と一体化すらしてしまうのかと考えていると、ある音が聞こえてきた。
〔ティリリリリーン〕
そして次は、誰か人の声が聞こえてきて、少女はゆっくりと目を開ける。
「
灯、そう名前を呼んでいる少女が視界に入った。
「__あれ……
「やっと起きた。さっきからアラームずっとなってるわよ」
夢の中で聞こえてきた音は、スマホのアラーム音だった。
「え!? うそ! あいたっ!」
スマホのアラーム音を止めようと急いで起き上がった灯は、勢いのあまりベットから落ち腕をぶつけた。
「いったーー!」
「もぉ……なにしてんのよ」
そんな灯を見て、呆れながらも手を貸す優芽。
「いてて……あ……ありがとう優芽」
その手を取り、起き上がる灯。
「しっかりしなさいよね。今日は大事な試験の日なんだから」
「! そうだよ! 今日試験の日!」
「そうよ。なんの為にアラームしたのよ」
「急いで行かなきゃ! 教官に怒られちゃう!」
灯は急いで制服に着替え、歯磨きなどを済ませ、バックを持ち、優芽と一緒に部屋を出た。
「急いで優芽!」
「どの口が言ってんのよ。てかまた転けたりしないでよ」
「分かってるって」
彼女達が暮らしている場所は、子ども教育支援施設の敷地内にある寮である。
そして灯と優芽が向かった先は、体育館である。
もともとこの支援施設は学校で、廃校となったが、長い期間を経て支援施設として生まれ変わった。
更衣室で着替えを済ませ、灯と優芽を含めた少女達は、体力測定や武術、格闘のセンスを図る為、試験を行なった。
少女達は全員で百人もいた為、一時間が経過したと同時に試験は終了した。
試験が終わり、少女達はタオルで汗を拭き、休んでいた。
「んっんー……あぁ終わったぁ」
試験の緊張が抜け、気持ちが落ち着く灯。
「お疲れ様」
そんな灯にタオルを渡す優芽。
「ありがとう優芽」
「あんたは相変わらずね」
「ん? なにが?」
「なにがって……体力よ」
「そうかな~?」
「そうよ。あんなに全力で一つ一つ取り組んだのに、その疲れで済んでるのが不思議で仕方ないわよ」
「まあ……体力だけは、私自信あるから」
「ホント灯って、底が知れないわ」
「でもそれを言うなら、優芽だって凄いじゃん」
「わたし?」
「そうだよー……剣術の試験ダントツだったじゃん!」
「まあそれ以外はからっきしだけどね」
「私は優芽のそういうとこ好きだよ。なにか一つの事を極めし者、カッコイイじゃん!」
「それって褒め言葉? バカにされてるようにしか聞こえないんですけど」
「バカにしてないって! めちゃくちゃ褒めてるんだよ!」
「ふ~ん……そう。 まあそれはいいとして……今回の試験……私達はSクラス維持かしらね」
「まあSより上はないからねぇ……降格は避けたいけど」
「まあ降格って言っても……Aランクだし……それより下もないからね」
彼女達は、秘密部隊セブンズの一員であり、隊員である彼女達には、ランクが存在している。
Aランク、危険度があまりない人助けや迷子探しなど、戦いを避けた任務を任されるランク。
続いてSランク、危険度が高い任務、つまりは銀行強盗や通り魔、戦いがメインの任務を任されるランク。
セブンズの隊員は、十六~十八の少女達で構成されている。
よって、Aランクの者は、昇格すればSランク、降格はしないが、試験結果によっては任務を任される事が減ってくる。
Sランクは昇格こそないが、降格しない限りSランク維持となり、引き続き危険度が高い任務を任される。
「そう言えば……優芽は聞いた? あの噂」
「噂?」
「なんかSランクより上のランクがあるって、SSランク? よく分かんないけど、限られた精鋭しか入れない部隊があるって」
「あぁ……セブンスターね」
「そうそう」
「そんなの噂話止まりに決まってるじゃない」
「どうしてそう思うの?」
「だってその話、ホントに噂だけじゃない。長官達からそんな話聞いた事ないし、漫画好きの子から出た夢見がちな妄想から生まれた噂って所かしらね」
「そうなのかなー」
「第一そんな部隊があるなら、なんでわざわざ秘密にするのよ」
「それは……うーん、わ……かんない!」
「そんな噂話真に受けてたら、なにが真実か分かんなくなるわよ」
灯と優芽がそう話していると、アナウンスが流れた。
「
アナウンスが終わり、灯と優芽は長官室に呼び出された。
「さっ……そんな噂話は忘れて、長官室へ行くわよ」
「はーい」
二人はタオルで汗をしっかりと拭き、更衣室でセブンズ制服に着替え、長官室へ向かった。
二人は長官室に着き、トントンとノックをした。
「入りなさい」
そう言われ、ゆっくりドアを開け中へと入る。
「失礼します」
「紗音邑灯、鷹宮優芽、試験の結果を伝える」
「はい」
「__昇格だ」
「……」
昇格、その言葉に、二人は困惑した。
現在二人はSランク、これ以上昇格しようがなく、本来維持か降格しかないからだ。
「えっとぉ」
困惑し、思わず声が出た灯。
「まあ、当然の反応だな」
「長官、昇格とはどういう、私と灯はSランクで、これ以上昇格しようがないと思われるのですが」
「その反応は予想していた。 二人共困惑しているだろう。なのでその事について、私から説明させてもらおう。 SSランク、セブンスターについて」
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