カオスメモリー
マツダセイウチ
第1話
大森健吾が目を覚ますと、真っ白な天井が見えた。身体が全体的に痛い。右腕に違和感を感じて目をやると点滴が刺さっていた。
固い白いベッドの回りをクリーム色のカーテンが囲っている。ここはどうやら病院のようだ。
ここへ来る前、バイクを運転していてハンドルを切り損ない、ガードレールにぶつかった所までは覚えている。
俺は事故を起こしたのだと健吾は気付いた。きっと親切な誰かが救急車を呼んでくれたのだろう。どうしたらいいのか分からないし、身体も痛いのでそのまま寝そべっていることにした。
30分くらい経ったころ、誰かがカーテンを勝手に開けた。目だけで確認すると白衣を着た中年の男が立っていた。すぐ後ろに若い女性が居た。おそらく医師と看護師だろうと健吾は思った。
医師は健吾の顔を覗き込んでこう言った。
「目が覚めましたか?念のためお名前をお願いいたします」
「はい。大森健吾です」
医師はカルテに何かを書きながら質問を続けた。
「ありがとうございます。ここに来るまでのことは覚えていますか」
「はい。バイクを運転していてガードレールにぶつかったことは覚えています」
医師はペンを走らせた。書き終わると顔を上げて健吾を安心させるように微笑んだ。
「うん、記憶も大丈夫そうですね。ですが念のため記憶のテストも後でしましょう。貴方が気を失っている間に色々検査させて貰いましたが、骨折もないし脳のダメージもないようです。何ヵ所か打撲傷があるくらいです。ラッキーでしたね」
本当にラッキーならそもそも事故を起こさないのではと思いつつ、健吾は
「はあ」
と気のない返事をした。医師はカルテをチェックしながら簡潔に説明をした。
「今日は大事を取って入院してもらって、何もなければ明日にでも退院できます」
「分かりました。ありがとうございます」
医師と看護師は去っていった。大したことはなかったのが分かって気が緩んだのか健吾は急な睡魔に襲われた。回復のためにもそのまま眠るに任せ、健吾は夢の世界へ旅立って行った。
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