うちのキッチンタイマーがタイムマシンだった件

菜月 夕

第1話

 なにせ歳を取ると忘れっぽくなって困る。

 そこで家であまり使われ無くなったキッチンタイマーを備忘録の上に置くことにした。

 このキッチンタイマーも最近の電化製品は自前で賄うので使われなくなったもので、まるで私の様だ。

 何か思いついた時には備忘録に書いてタイマーをかけておく。

 そんな事をしているうちにフト気が付くとタイマーをかけた時間だけ自分の記憶が無い事に気が付いた。

 まるでそのタイマーの時間だけ間を飛ばしてしまったようだ。

 もちろん。初めはボケかと思ったさ。

 しかし。腕時計を見るとタイマーを押した時間のままだ。

 でもまぁ、このキッチンタイマーで計測できるのは30分だけ。

 30分だけ年を取らないで済むと言ってもなぁ。


「ねぇ、お爺ちゃん。またあのタイマー押したまま固まってるよ」

「いよいよボケが酷くなってきたのかしらねぇ。施設に入れるのも考えなくてはねぇ。

壊れた腕時計もキッチンタイマーも酷く気にしてるけど自分と同じだと思ってるでしょうかねぇ」




 孫がキッチンタイマーを整備してくれた。

 私はメモをタイマーで挟んでタイマーをセットした。

 孫が冗談でタイマーのメモリを分でなくて世紀と書き換えていた事には気付かずに。

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うちのキッチンタイマーがタイムマシンだった件 菜月 夕 @kaicho_oba

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