億回死せるは、偽勇者~バッドエンドの集束地点~

つきらゆ

第1章 バッドエンドの集束地点

第1話 最後のやり直し



 血が流れる。力が抜ける。

 雨が体に当たって、体温が急激に奪われていく。


 脈打つ度に血が吹き出して、その痛みとは裏腹に最早声すら出なかった。

 膝から崩れ落ちて、地面が視界いっぱいに拡がって。

 けれど俺はこの結末を、どこか他人事のように俯瞰して見ている事実に馬鹿みたいだと一人自嘲した。



 ──何度も経験した敗北。何度も経験した死の間際。

 それでもいつまで経っても慣れないどうしようも無い程確定的な“死亡”という現実に、俺は震える以外の選択肢を持っていなかった。


 冷たくなっていく身体は、まるで自分の物じゃ無くなっていく様で。

 それは痛いと言うよりも、どこか寂しいものだと俺は思った。



「──いやだ……っ! 嫌だ嫌だ嫌だ……ッ!」


 バシャバシャと雨水を跳ねながら俺に近づく声が聞こえる。

 その声は焦りと絶望を孕んでいて、ただ子供のように現実を嫌だと泣きながら否定していた。


 最期が愛する人の泣き顔なんて、きっと不幸以外の何物でもないだろう。

 殺そうと思えば一瞬で殺せたはずなのに、今も魔王は俺たちの絶望をただ眺めていた。そうやって、人の命で遊ぶ所業が奴が“魔王”たる所以なのかもしれないが。



「ユーロ゛っ……!! 何で、わだじなんか庇ったの……っ!」


 彼女の手が俺の身体に触れて、その温かさが冷めた身体に染み渡る。

 状況は逼迫していて、彼女が俺にかまけている余裕なんて本当は一秒だって無い筈だった。


 ああ、彼女もすぐに死ぬ。

 ここに来るまでに死んだ皆の様に。

 そして、今の俺の様に少し先の未来にどうしようもなく死んでしまうだろうと思った。


 目の前に立つ圧倒的な驚異に負けて、全てを奪われた上で死んでいく。

 それは、雨が上から下に落ちるくらいには自然な事の様に思えてしまった。



『その程度で勇者を名乗るか、愚図が』



 その感情の乗っていない声に、俺は苛立ちしか感じなかった。

 やっとここまでたどり着いたというのに、ここまでやっとの思いで積み重ねてきたのに、結局何ひとつ届かなかった。

 何度も何度もやり直して、結局最後の最後で当然の様に失敗した。


 そうだ。これが所詮俺の実力。

 魔王が言うように、勇者何て名ばかりのただの愚図。

 それが、この世界での俺の限界だった。


 否定する根拠なんて、ひとつたりとも持ち合わせては居なかった。







 ──けど、次は。




「殺……し……や、る……」

「ユーロっ……!! 喋っちゃ駄目ぇっ……!!」


 俺は、魔王の目を睨みつけた。

 次は殺すと、明確な殺意を込めて。

 最後まで生き残った仲間の「シーラ」が、死に体の俺を引きずって魔王から離れようとする傍から見れば滑稽な姿ではあったが。


 血の跡が一直線に続いて、すぐに雨に攫われて消えた。

 当然、その程度の逃げ足で奴から逃げられる筈も無く。


『…………』


 魔王は何も言わず、ただ右手を持ち上げた。

 その意味を、俺はすぐに理解した。

 けれど、その光景を俺はただじっと眺めるだけで、防ぐ事も、逃げる事も庇う事も何も出来なかった。


 黒い閃光。それが一瞬轟いて、シーラの胸をあっさりと穿つ。


「………………ぁっ………」

「……………………………」


 その光景を、俺はただ眺めることしか出来なかった。

 これまで多くのものを失い過ぎて、最早流す涙さえ残されていなかった。

 だから、俺はただ心の中で呟いた。


 ──ああ、また駄目だった、と。


 ベシャリと倒れるシーラ。彼女が倒れた事に伴って、引きずられていた俺も同時に倒れ込む。

 目の前で死んでいく仲間を見て、どこか慣れすら感じ始めている自分自身に嫌悪感すら沸いた。



「………………っ……」



 それでも、と思った。

 それでも、俺はまだ立ち上がらなければいけないと思った。


 腕に力を入れる。当然全く言うことを聞かなかったが、そんな身体は魔法で無理やり動かした。

 足りない魔力は寿命を使って。

 足りない身体はその辺の土で埋めた。


 俺は今出せる全てを差し出して、シーラの元へとただ這い寄った。

 どうせ、もうこれで最後だから。

 そして、その冷たくなっていく身体に少しでも雨が当たらないように覆い被さった。


「ごめ、……シー……ラ」

「……ユー…、…ロ……」


 シーラは、泣いていた。

 痛みにでは無い。そのくらいはすぐにわかった。 

 これは、俺の罪だった。

 ──数多のバッドエンド。何度も、何度も繰り返している癖に、未だに誰一人、一度すらまともに幸せに出来ていない俺の罪。


 そして、勇者の癖に未だ何一つ成し遂げていない、名前負けの偽物への罰だった。


「シー、ラ……。大、丈夫……次……は、…ぅまく、やる……から……」

「……つ……ぎ……? ──ゲホッ、ゴホ……ッ!」


 シーラの吐いた血が俺の頬を赤く濡らした。少しずつ浅くなっていく呼吸に、もう互いに残された時間が少ないことを悟る。



 俺は、もうこの世界をあきらめる。

 けど代わりに、次だ。

 次は絶対に──上手くやる。



 ──その世界では、君はまた俺の事を覚えていないけど。


 それでも、今苦しませてしまった分はちゃんと、次で幸せにすると心に誓って。


「ああ、つぎ……だ……」

「じゃあ……ぐすっ、……次が、あったら……ゲホッ……!」




「わたしと……結婚……して、くれる……?」



 目に涙を溜めるシーラに、俺は残された力で静かに頷いた。

 それで、この世界の君が少しでも報われるのなら。

 少しでも、希望を胸に抱いて死ぬ事が出来るのなら。


 砂粒よりも小さいその幸せを掴み取る為に、何億回だってやり直してみせよう。


「え、へへ……ユー……ロ……」

「シ……ラ……」



『……時間の無駄だった』



 そして、抑揚も感動も無く魔王はその手を再び振り上げる。

 空を包む闇より深い、深淵が俺たちをあっという間に包み込んだ。



 一秒先には、もう俺たちの命は無いだろう。



 けど──













「だい、すき──」
















 ──もう一度。いや、何度だってやり直す。




 ──これは、ハッピーエンドだけは約束された絶望の物語だから。

























────────────────

─────────────



 目を開ける。


「…………」


 身体を確認する。

 辺りを見回す。

 この光景に、いつもの場所だと思い出す。


 そして、声をかけてみる。


「──おーい」


 ──返事は無い。それも当然、ここには俺以外誰も居なかった。


 どこを向いても真っ白な世界。

 上も下も右も左も、無限に続くかのような真っ白な世界。

 どうやって立っているかも分からないし、足を前に出しても進んでいるのかすら分からない、何度来ても理解の及ばない世界の理を超えた不思議な空間。



 俺は、世界を“やり直す”度にここに来ていた。

 もうここに何度顔を出したのかも俺は正直覚えていない。

 ただ分かるのは、その全てに今の所失敗しているという事実だけ。

 未だに日の目を見せないハッピーエンドに本当にそんなものが有るのか疑いつつも、諦めきれずに俺は一人コンテニューを繰り返していた。


「おーい。早く次やらしてくれー。……次は、上手くやるからー」


 別に、何か根拠があって言っている訳では無い。

 つい先程まで戦っていた魔王の強さには頭を抱えて、全てを投げ出したくなるくらいには力の差がハッキリとしていた。

 客観的に見て、仮に少しの希望的観測を含めた上でも次やった所で上手くはいかないだろうと確信出来た。



 けれどそうやってなあなあになり始めると、いつの間にか惰性の周回になってしまうから。

 だから、どんなに絶望的な状況でも、俺は絶対に“今回救う”という覚悟を持って世界に立つ事を決めていた。


 その心構えが役に立ったかと聞かれれば、俺は今の所黙るしか選択肢はなかったが。


「おーい。か──」

『…………』

「あ」


 そして、何度も呼びかけているとようやくその人物は姿を現した。


 俺にやり直しの力を与えてくれている、“神様”とかいう不思議な存在。

 魔王が圧倒的な闇だと言うのなら、圧倒的な光とでも言うべき存在。

 彼女の事について俺が知っているのは、あの魔王に匹敵するくらいの不可思議で強大な存在である、という事くらいだった。


 そんな不可思議な彼女を見て俺は、


「次、頼む」


 いつもの様に真剣な目で、特に感慨もなく次を求めた。


 神様は、相変わらず何も言わなかった。



 今回の周回を、神様はどう見ていただろうか。

 ふと、そう考える。

 少しは惜しかっただろうか。それともまだまだだったろうか。

 個人的には今までで一番いい所まで行ったと思った。それでも、結果だけ見れば魔王にはまだまだ遠かったが。


 いつからか、雑談も何もしなくなった神様はきっと聞いても答えてはくれないだろうから。

 だから今更何も聞かないけれど、魔王さえ倒せれば、大事な人達さえ傷つかなければ俺は別に彼女の感情や考えはどうでも良かった。


 言わば利害関係の一致。

 やり直す限りは、俺には絶対には魔王に打ち勝つ日が来る。

 だから、どう思われていようと彼女には感謝していた。

 次がある内は、確かに彼女は味方だと思えたから。





 はずだったのに。


『次で最後です』

「…………………………は?」


 そんな、突拍子も無い事を言われたのは、当然の如く初めてで。


『次のループが、最後になります』

「いや…………は? 待っ──!?」


 戸惑いを隠せない俺に、神様は何の感慨もなくその右手を俺へと向けた。



 しかし、突然そんな事を言われてはいそうですかと冷静になれるはずが無かった。

 次で最後。それが俺の知る言語・意味なら、それは先程の魔王の存在以上に絶望的な状況を意味していた。

 死んだら、そこで終わり。

 そんな本来当たり前の、しかし俺の心を支えていた唯一の支柱。


「──待ってくれ!! なんでだ!? 説明してくれ!!」

『次のループで最後。これは決定事項です』


「……だからッ!」

『──お願いします』



 俺が詰め寄るのは、そんなのどうしたって納得がいかないから。

 急に死ねと言われて納得がいかないのと同じように、俺はただ叫んで懇願することしか出来なかった。


 けれど、そんな俺に対して神様は何故か泣いていて。

 泣きたいのはこっちだと言ってやりたかったが、俺は馬鹿みたいにその顔を見て黙ってしまった。


 その顔が、今まで辛い思いをさせてきた泣きながら死んだ仲間たちの顔を連想させたから。

 だから、



「…………そん、な……!」

『………申し訳ありません』



 その顔を見て、冷水をかけられたように血の気が引いて冷静になってしまった。

 神様の謝罪の言葉に、けれど俺は返す言葉が分からなかった。


 怒れば良いのか。

 泣けばいいのか。

 けれど神様の表情に、その考えはもう変わらない事が簡単に察せられて、俺は結局何も出来なかった。



「なんでそんな、急に……」

『………………』


 神様はそれ以上何も言わなかった。

 言わないのか言えないのかは分からない。というかそれはどうでも良かった。

 ただ、その絶望的な事実が頭の中をぐるぐると回る。

 たった後一回のチャンスに希望を持てるほど、俺の脳内は簡単に出来てはいなかった。


「…巫山戯んなよ……」

『……貴方は、良くやったと思います』

「……お前…………!」


 既に過去形にされた賞賛の言葉に、俺は湧き出た悪態を隠せなかった。

 いくら無理だと自覚はしていても。

 それでも、神様のその言葉は既に次の周回も駄目だと言っているようなもので。


 ──俺は、皆と約束したのに。

 絶対に、成し遂げなければならない約束が嘗ての周回の数だけあると言うのに。


 勇者も、それに力を与える神様すらもが諦めて、一体今から何をしようと言うのか。

 何が成せると言うのだろうか。



 重責と不安だけが、今はただ心の大部分を埋め尽くす。

 諦めたくない。まだ諦められない。

 けれど、果たして俺に出来るのだろうか。

 勇者なんて名ばかりの、まだ一度すら誰も救えていない俺が最後の最後に世界を救うなんて事を。



『──最後の、良い旅を』

「…………上手くやる……次は、絶対……ッ!」



 神様の目は、哀れみの目だった。

 しかしそれに俺は意地で否と答える。

 根拠なんて無くとも、やはりここまで来て諦めたくなかった。と言うよりも、諦められるはずが無かった。


 俺はそんな意思を込めて、最後に神様を睨みつけた。

 彼女はその間もずっと泣いていた。


 俺は誰かと別れる時、いつも相手は泣いてばかりだなとふと思った。


 それはきっと不幸な事だ。


 俺の最後のやり直しは、何処までも縁起悪く不幸で始まった。



 そんな事を考えながら、どうしようもない現実と共に俺は、この白い世界と神様に永遠の別れを強制的に告げられた。
























───────────

─────────





 ──ソルテラ紀1850年

 ──エタンセル国、ルフレ魔術学園





 ──4月。



 鳥のさえずりが聞こえた。

 日光が肌に当たってる。

 風が凪いでいて、遠くから人のざわめきが聞こえて人の往来が地面を叩いて揺らしていた。


 心地好い始まりだ。

 俺はこの始まりを、何度も経験していた。


 そして、次第に俺は目を開ける。

 眩しすぎるくらいの日光を浴びながら、それでも俺の目は望んだ光景を映し出してくれた。




「………………帰ってきた」



 何度も繰り返してきた光景に、何度も繰り返した言葉を吐く。

 何だかんだ、始まりはいつもこうだった。

 エタンセル国、ルフレ魔術学園校舎入口前の、そこそこ大きな噴水広場。

 その噴水に腰掛けた状態で、俺の物語はいつもあっさりと始まりを告げた。


「最後…………」


 けれど、今回は少しいつもと事情が異なっていた。

 これが、最後のループ。

 その溜息をつきたくなるような話に、俺はその場で頭を抱えて項垂れた。


 そんな様子に、周りを歩く新入生達からは奇異の目を向けられる。向けられるが、今ばかりは流石に許して欲しかった。


 本当は叫び出してしまいたい位なのだ。あの場で神様が泣き出してさえいなければ、とうに拳が出ていた自覚さえあった。


 魔王を退ける。その無理難題をこなす為の、その為の周回。その為のやり直し。

 前回の力をそのまま引き継げる何て、そんな常識外れな力があった訳では無い。

 ただ、アドバンテージがあるとすれば今みたいに記憶を引き継げる事だけ。

 それでも、何度も繰り返せばその知識は力にも劣らぬ手札となった。

 だからこそ、俺は何度も死にながら何時までも希望を捨てずに居られた。



「──入学式会場この道でーす!」

「御入学おめでとうございまーす!!」


「……平和だな…………」



 何度も経験はしているが、劇的に死んだ後とこの光景はあまりにギャップが強すぎた。

 抱えていた頭を上げて、この“光”包む光景をこれでもかと言うくらいに目に焼きつける。

 目の前にある門の先には、二人の親切な案内人が講堂へと新入生を案内していた。

 本来は知る由もないが、あの二人は後に関わることになる生徒会のメンバーだった。


 つい先程までの“前回”は、入学から四年の月日が経っていた。

 それでも、深く関わった人物や印象的な光景は存外ハッキリと覚えている。

 今目の前に立つその人達は、丁度そのギリギリと言ったライン。

 魔王討伐には深く関わった事は無いが、それでも気のいい人達だったと記憶している。



「今はちゃんと生きてんだもんな……」



 あの二人も。

 今俺の横を通り過ぎた人達も。



 皆、俺の裁量で死んだり生きたり、そんな事が平気で変わるのだ。



 余裕が無かった。

 そんな言い訳を誰にした所で無意味な事は知っていた。


 そして、未だ最適解を見つけられないまま最後のチャンスを迎えてしまった。

 これ以上検証だの何だのする余裕も無く、正真正銘の“本番”を実感させられる。


 今回は、いつも以上に慎重さを余儀なくされるだろうと思った。

 その上で、多分どうにもならないだろうとも。


 一番上手く行った前回。

 その前回と同じ事を繰り返しては絶対に上手くいかない事は嫌でも分かった。

 けれど、新しい何かを試すような度胸も今更ない。



 最後。最後……さいご。

 考えれば考える程、俺は踏み出すべき足を地面へと深く縫いつけた。


 仮に魔王を倒せたとしても、その間に誰か一人でも死んだらその人はもう生き返れないのだ。


 その誰かを選ぶのは、やはり俺だった。


「……頭痛てぇ」


 空を仰げば、俺の胸中何て知らずに太陽は輝いていた。

 あの空も、悪魔が現れればいとも簡単に黒く染まる。

 所詮はその程度の代物だ。それでも、その光がある内は少だけ俺に勇気を与えてくれた。


 そんな能力がある訳では無い。ただの気分の問題だ。

 はぁ、とため息をついて俺はようやく立ち上がる。

 少し冷静になったお陰で、こんな事をしている場合ではないと否応無く気付かされたからだ。



 本気で後悔しない為には、俺は少しでも早く動き出さなければならなかった。


 俺は、あの勝手に諦めた面を向けてきた神様の鼻をあかしてやらなければならない。

 そして、何より俺の大事な人の命を何度も奪ったあの魔王を殺さなければならなかった。


 だから、俺は足を進めた。

 今度こそ、あの無感情な憎たらしい顔を地につけてやると意気込んで、俺はここ、ルフレ魔術学園の門をくぐって──





 ドンッ



「──うおっ」

「…………」


 くぐ、ろうとしたタイミングで、俺の背中へと誰かの強めの体当たりが見舞われた。

 この頃の身体はまだ貧弱で、不意に小突かれた程度でこの有様だった。


 しかし、最後の周回だと言うのに実に幸先が悪かった。

 もしこれで転んだりしていれば、それこそ神様か魔王の意地汚い関与を疑わざるを得なかった。


 けれど、意地で何とか衝撃を耐えきった。

 数歩つんのめって、流石に俺は一言注意しようとして振り返る。






 そして、俺の目の前に現れたのはどうしようもなく理解不能な代物だった。





「────ユーロ」

「…………ノノア?」



 振り返り、目の前にいたのは出会うことになる少女。

 隣の席になった事から話すきっかけが生まれる、白い髪の、優しい目をした誰に対しても分け隔てない慈愛の心を持つ少女。


 俺たちは、当然この世界ではまだ初対面で。


 だと言うのに彼女の顔は、まるで“あの約束”をかわした“あの時”の顔のままで。




「──ユーロぉっ……!!」

「…………………え?」





 そして、人並み溢れる往来のど真ん中で、俺は彼女に泣きながら抱きつかれた。


 その状況に理解が追いつかないまま、周りから白い視線を浴びながらも俺は一歩も動けなかった。






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