風がはこぶ

アオイロノペン

第1話

あるところに

美しい花があった

葉は青磁の色

花は翡翠の色

その静けさを

人々は愛した


ところでこの花には

小さな蜘蛛が棲んでいた

蜘蛛は悩んでいた

わたしは花だろうか

わたしは葉だろうかと

色合いは葉に似て

姿は花に似ている

小さすぎる気もするが

まあ いいわ

蜘蛛は思った

どちらにしても

美しいと


ある日やってきた

娘が花を摘み

いやだ蜘蛛だ

そう叫んで

蜘蛛を振り払った


蜘蛛は嘆いた

じぶんは葉ではなく

じぶんは花でもなく

なにかいやなもので

あるらしいと


しかしふと

風が吹いた

振り払われた手からは

真白な糸が流れていた

蜘蛛は知った

わたしは自由だ

蜘蛛は思った

わたしはわたしだ

そして

どちらにしても

美しいと

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