拝啓 自分が大嫌いな貴方へ
葉名月 乃夜
第1話
その日は、大雪の日だった。
テレビなんかでも数十年に一度と言われるほどの悪天候で、吹雪が一向に治る気配は感じられない。
こんな中、外に出るなんて遭難したい人間だけだろう、と、誰だって思うはず。
そう、私は遭難したい。そして、この雪と共に消えてしまいたい。
そんな願いを胸に、冷たく
そこは小さな公園にある、滑り台の下の空洞。直接、雪が私を襲うことはないが、冷たい風がずっと吹き抜けて、皮膚に鋭い痛みを与えている。
その上に、さっきから睡魔が襲ってきていた。ゆっくりと、しかし確実に。
それが何を意味しているのか、分からないほど私は馬鹿じゃ無い。
だからこそ、それを望んでいる。その時が来るのを。
(ああ、もうダメかも……)
酷い睡眠欲は瞼を鉛のように重くした。薄らとしか開かない視界は純白に染め上げられている。
最期の最後まで、私は不運に見舞われていた。
とうとう、起きているのが辛くなってきた。眠ってしまいたい、と魂が叫ぶ。私はそれに応え、とろんと、甘やかな睡魔に身を委ねようとした。
フッと目を閉じる。
その瞬間、まるで映画館のように、脳裏に今までの記憶が甦った。はっきりと、鮮やかに。一つ一つが、光の玉のような物に浮かび上がっている。
(これが、走馬灯ーー)
初めて見る。そんなのは当たり前だ。何度か耳にしてきたその光景を、いざ目の当たりにすると、不思議な感覚になる。
走馬灯は、私が覚えている限りの記憶を見せた。
その中から、一つの記憶の玉が大きくなる。脳内で、私はそれに手を伸ばした。
瞬間、私は追体験する。私自身の記憶を。
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