スキル【開錠】を突き詰めたら人生変わった

夢神 蒼茫

第1話

「カンダタ、悪いがお前とは今日でお別れとする」



「マジっすか!?」



「はっきり言うと、お前は足手まといなんだ。だから、足を洗って抜けてくれ」



「そんな~! 今まで一緒にやって来たじゃないっスか!」



「今までは今まで、これからはこれからだ。恨むんなら、いつまで経っても成長しない、お前自身を恨むことだな」



 パーティーのリーダーからそう言われ、俺は放逐されてしまった。


 何年もの付き合いなのに、この一言で本当にパーティーから追い出されてしまった。


 冒険者に憧れ、この業界に飛び込んだ。


 今のこのパーティーメンバーは、駆け出しの頃から付き合いだ。


 あの当時はみんな未熟だった。


 右も左も分からぬ青二才で、小鬼ゴブリンの小集団にすら手こずっていたのも懐かしい。


 しかし、今はベテランの域に到達するほどに熟達。小振りなやつであれば、ドラゴンでさえ討伐可能なパーティーへと成長していた。


 そんな中にあって、“今”も未熟なのは俺だけだ。


 冷静に考えれば、今までパーティーに入れてもらえていただけでもありがたいと思わなければならない。


 そう言い聞かせるも、深層心理に潜む俺の心はそう思っていないらしく、昼間っから酒場でやけ酒である。


 喉を通る麦酒エールのなんと不味い事か!


 仲間と飲む酒の旨さを知っていれば、こんな酒はクズもクズだ。



「いや……、でも、ここ一年、そんな酒も飲んでないか」



 そう、パーティーの中に立ちこめる不協和音、その原因は俺なのだ。


 今の今まで我慢してくれていたようなものだ。特にリーダーは。



「まあ、そうだよな~。いつまで経っても、所持しているスキルが【開錠】だけじゃな~」



 そして、酒をもう一杯。やっぱり不味い。


 酔っぱらってそのまま倒れ、涙とこぼれた酒に突っ伏しながら寝入ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る