294.き、奇遇………?
「!」
「おまえ……っ!?」
少しのお見合いの後、飛び
が、そこは個室内!
「………!そういう事か……!」
「そういう事、とは……?」
トイレ周辺はドアで隔てられ、人はあまり集まらない!ここなら確かに、修学旅行中且つ新幹線の中であるにもかかわらず、一時的に人目を避けられる!盲点だった!周囲に人が居るからと油断していた自分が恨めしい!
「この前は見逃すような事を言ってたけど、やっぱり気が変わったのか?」
どうする?大声を出すか?だけど今俺は何もされてない。ここで人を呼べば「何故」を聞かれて芋づる式に俺の隠し事が全部バレる!かと言って魔力がほとんど使えない今の俺じゃあこいつが本気の1%を出したくらいでも十分死ぬ!装備も無い!バックパックは座席上の棚に置いたままだ!
「……お前の相手をする為に、わざわざこんな狭くて臭い場所へ詰め掛けるなど、ワタクシがすると思いますの?」
「そう言って後ろから、か?舐められてるな…!そんなのには引っ掛からない…!」
それでも負けるつもりは無い…!
息を止め、相手の攻撃がいつ来るか、それだけに集中しろ……!
あっちが魔力を使う時、もしかしたら溜め込んでいる魔素も一緒に排出してくれるかもしれない……!それを吸って自分の物にして、なんとかこの車両から逃げ出してやる……!
「ワタクシには今、お前と遊んでいる暇などありませんのよ……!?」
「じゃあ何しに来たって言うんだ!ここに来る用なんて俺以外にないだろ!」
「………イ、ですの」
「は?何?」
「……ライ、ですの」
「設定までは用意してなかったか?杜撰な計画だな、そんなんで俺を捕まえられると思ったら」「お!て!あ!ら!い!ですの!」
「………」
………
………………
………………………なんて?
「ノックして!入ろうとしているのですから!他に!何が!あるんですの!?」
「え、あ、いやあ、」
「淑女の口からこんな事言わせないでくださいまし!」
「ああ、うん、ゴメン……」
いや待て、有耶無耶にさせるな。
「だったら隣に入れば良い……!」
「そちらも
「ほんとかあ……?」
「だったら御自分でお確かめくださいまし!ほら!」
そう言って彼女は横に退き、隣の個室を指差した。
俺は出来るだけ相手から離れていようと、ジリジリと背中を壁につけながら「お早く!」「はいっ!」跳ぶように外に出てそっちのドアを見たが………
「………」
「どうです?閉ざされているでしょう?何かワタクシに言う事があるのではなくって?」
俺がそいつの目の前でドアを押し開けると、そいつは目を丸くして固まった。
「………」
「………」
「………
「ランプを見るんだよ!使用中だったらそこが点灯するの!」
ガックシ来てしまった。
こいつ常識を知らなすぎだろ。
「よく考えたらそんな格好で白昼堂々と出歩いてるし……。大丈夫か?バレるぞそのうち」
「お前に案じられる筋合いではございませんの!」
本当にそれはそう。
「って言うか、普通にその、排便っていう概念あるんだ……?モンスターはもっと、魔素とか食ってるのかと………」
「ワタクシ達は魔素を作る側ですわよ?と言うのはさておき、この身体は人間などを再利用していますので、何かを口に入れれば、こういった事に煩わされるんですの」
「へ、へぇー……?でもその言い方だと、人類流じゃなきゃ問題無い、みたいに聞こえるけど?モンスター流の栄養補給すればいいじゃん」
「勿論!常はその通りにしておりますの!ただ、その、今回は………」
「今回は?何か事情が?」
「いいえ!何でもありませんの!決して必要が無いのに食べ過ぎたですとか、音に聞く駅弁なる物を出来るだけ多種に亘り食してみたかったですとか、そういった事では一切御座いませんの!決して!」
「全部言うじゃん」
ただ、こいつが嘘に向かないって事は、よく分かった。
「その……悪かったよ……疑って……」
「分かれば宜しいですの」
「………」
「………」
「………?」
「ちょっと!?いつまでそこに居ますの!?そこは気を遣って去る所でしょう!淑女の恥部ですのよ!」
「あ、ごめん」
「デリカシーの無い方!失礼しちゃいますの!」
そう言って個室の扉はバタンと閉められ、居辛くなった俺はそそくさと自分の席に戻るのだった。
「ススム君、おかえり!」
「うん……」
「どうかしたの?」
「いや、何でもないよ、うん………」
俺はミヨちゃんの前を通り、腰を下ろした時に、
「あ」
思い出した。
そう言えばあいつ、結局なんでこの新幹線に乗ってるんだ?
「す、ススム君?カンナちゃんが袖の裏ですっごいプルプルしてるけど?バカウケしてるけど?何があったの?」
「ああうん、後で教えるよ……」
ここで言うと、誰かに聞かれかねないしね。
って言うかカンナは笑い過ぎだろ。さっきから1分くらいぶっ通しじゃねーか。
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