181.夏休みスペシャルでーす part1
「どうだった?今回は」
「うーん、難しい所だね。索敵する人がどれだけ優秀かで、思った以上に難易度が変わりそう」
中級ダンジョン、“
下町のアーケード商店街みたいに見える通りを、顔の造り以外の統一性があまりないモンスター、“パラス”達が行き来する。
架空の家電量販店の店舗が変形してD型となったり、Z型が青い顔した鬼みたいな奴だったり、やりたい放題なダンジョンなのだ。
その具体的内容は、ちょっと特殊で、このダンジョン内では、絶えず謎の気配に悩まされる、という、嫌がらせ的な物である。
所狭しと並ぶ店先。
“
のに、このローカルである。
敵の有無に関係無く、「何かに見られてる感じ」だけずっと続くので、どれが本物の気配なのか、緊張しっ放しになってしまう。
え?じゃあ上側を歩いて渡ればいいんじゃないの?って思うかもしれないが、実はその通りだ。
このダンジョン、道中の収穫がゲロマズになる事を許容すれば、敵をスルーして、深層までぱっぱと行ける事で知られている。
D型前の7層は大人気だ。
が、同時に、思い上がった玄人気取りが、事故りやすい事でも有名。
中級モンスターを相手に気配を誤認するっていうのは、それくらい致命的。
でもそれが分からない奴が、スイスイ進める事に気を良くして、6、7層辺りでやらかすらしい。
県内最多の死亡件数にも、それが表れている。
という訳で、中級なのに、人気度としては微妙な位置に立っているのが、ここなのだ。
「でも、悪いダンジョンじゃないんですよ。層が進むごとに感じる視線が強くなってくので、順当に進めて行けば、自分がどの程度の索敵精度を持ってるのか、その指標にする事が出来ると思います」
「ズルしてショートカットしないなら、逆に便利に使えるダンジョンって事かな?」
「そうだね。く~ちゃんの言う通り、死亡案件が多いのは、潜り方がマズいんだと思う。中級だから、低階層でも十分実入りが良いし、『折角だし近道を』って考えず、普通のダンジョンとして向き合えば、『曰く付き』なんて言われるような所じゃないな」
「奇襲の為のローカルだから、普通の戦闘だとむしろやり易いくらいだもんね?他の中級以上でよくある、『思ったよりローカルの強化・弱体化幅が大きかった』、っていうのが原因で起こる事故が無いって、結構大きいと思う」
『あー、それは確かにプラス』
『うんうん』
『たすかる』
『ススム、いつもありがとうな』
『今回は進行遅めだったな』
『ちょっと行ってみたくなったわ』
『巡礼候補地を増やすな、ススム』
『ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!ろーさん!』
『修行に良さそうって事ね』
『俺が見たからもうアーカイブ消して良いぞ、ススム』
『いや踏破出来る実力あるなら普通に上から行けよ。時間掛け過ぎだろ』
『やっぱ中級だけあって、D級以降はクソ強かったけど、確かに浅い層なら行けそうだわ』
『バズり狙いの迷惑TooTuberが全部悪いって事?』
『今日は死にかけノルマなしですか?』
『察知スキルが無い奴に人権無いって言われるのはちょっとキツイカモ汗』
『数字吸われるんだからコラボやめろよ』
さて、という訳で、夏休みに入ってから始まりました、くれぷすきゅ~るとカミザススムの、ご当地ダンジョン巡り!
いや、ダンジョンなんて同じ物は世界に二つと無いんだから、「ご当地」じゃない物なんて存在しないんだけど、まあ雰囲気を感じ取ってください。
この企画は、あまり話題にならなかったり、逆に避けられているダンジョンに潜り、実際どんな感じなのか検証していく物です。
モンスターの強さや特徴、ローカルとの噛み合い、地形の複雑さ等を見て難易度を肌で感じ、人気ダンジョンとの違いは何かを見て、どうすればいいのか考えます。
と言っても、ダンジョン側に改善してもらうなんて事は出来ません。なので、どういう人、どういう魔法、どういう編成、どういう魔具だと楽に攻略出来るか、得があるかを考え、そのダンジョンに合った人を呼ぼうという方向性で、案を出していきます。
訴求対象を決めるって事ですね。
一人称潜行配信を試す為、“
地域振興にも繋がるし、俺達は経験を踏めるので、多分ウィンウィンだと思われる。ただ最低限のラインとして、極端なマイナス意見はNG。良いトコ探しをしよう。
ダンジョンを隅から隅まで、じっくりと検証していく事になる。ので、企画と知らずいつものハイスピード攻略を見に来た人達が、その遅滞っぷりに、ちょっとトゲトゲしちゃうのが、困った所ではある。
が、コメントを書く前に概要欄の注意事項を見るくらい奥ゆかしい人は、そもそもコメントを書かない事が多く、ここに表示されてる人達は、少なからず勢い任せだ。
故に、早とちりする人の割合も高い為、どんな企画配信でも、こういう事は起こってしまう。必要な注意だけした後は、割り切ってしまおう。
あと配信企画とは別に、シャン先生からの宿題である、
人型の敵相手には、結構有利に立ち回れるようになったから、次は対複数でも、同じ事が出来るようにして行きたい。
「総括すると、『中階層が穴場と化しててウハウハだった』、ですね」
「ぶ、ぶっちゃけちゃったね…。でもそうだね。半端な深さだと競合がいないから、なんか稼ぎが良いんだよね。これから偶に来ようかな?」
「とか言って、これでリスナーの皆さんが利用し始めて、普通の中級になったらどうする…?いや、それで良いのか。それを目指す企画か。みんな来てくれ!勿論諸々に注意して!それで万事解決です!」
「皆さんも、危な過ぎないくらいの階層で、適度に稼ぐ分には良いので、是非寄ってみて下さい!」
よし、こんな所か。
「じゃあ今日はこのへんで」「あ!そう言えば!議題がもう一個あります!」
俺が配信を畳もうとしたら、手を挙げて制止された。
え?どしたん?
何も聞いてないぞ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます