64.か、噛み合わない……… part1

「みんな!オハヨ!く~ちゃんです!今日はですね!以前から告知していた通り、コラボ企画になります!それでは早速ご紹介しましょう!これからパテメンとして苦楽を共にする~?………あれ?カミザ君?」



『どこだ?』

『どこ?』

『どちらに?』

『いないが』

『ドッキリだよな?男とコラボとかないよな?』



                         「はい!何でしょうか!?」

 


『あ、いた』

『遠くて草』

『遠www』

『チッ』

『パーソナルスペース配慮してえらい』

『ススム、それは逆にキモいぞ』



「何でそんな遠くにいるの~!?お~い!?」



                         「僕はこの辺で大丈夫です!

                          進めちゃってください!」



「今カミザ君が自己紹介する番だけど~?」



                      「あ、すいません!日魅在進です!

                       お世話になります!」



『頑なに距離が開いてるの草』

『お前はそういう奴だよ、ススム』

『なーんだ、ススムに女が出来たと思ってウッキウキで見に来たのに』

『面白い人だな』

『ヤクザの事務所かな?』

『従軍するんじゃないんだから』

『結局他の配信者と同じく、オフパコ野郎と尻軽女だったってことかよ』

『もっとイケイケなのを想像してた、思ったより陰の者をお出しされた』

『カーストの違うアイドルに話し掛けられたオタク君そのもので草』

『純朴なボクぶってるのキモい』



「これから協力していくんだから、もっと私に慣れてね~?」



                「はい!“く~ちゃん”さんの画角をけがさぬよう、

                 精進させていただきます!」



「あと情報伝達が遅くなるから、敬語もやめてくれると嬉しいな~!」



                    「配信だとこういうキャラなんです!」



「もう……。みんなごめんね?見ての通り、まずは警戒心を解く事から始めないといけないみたいで……『犬の飼育一日目かな?』…クスクスクス…そうだね?ペットをお迎えした感じに近いね?うんうん、ンムッ、画面外に怖いお兄さんはいませんよ!フフフ、みんな私のイメージ酷くないですか?日頃の優しい私を見ずに、何を見てるんですか~?角膜に私の魔法挿されて治療されたい方?フフフフフ…」



『そういうとこ』

『そういうところ』

『ご自分の発言を振り返ってください』

『鏡どうぞ』

『眼球治療助かる』

『つい噴き出した笑い声であったまる~』

『あれ?意外と愉快な人だぞ?』

『くっさん思ったよりおもしれー女で草』

『ススムー!早く来てくれー!揺らいでる!推し変しちゃう!』


 いや知らんわ。

 く~ちゃんのファンが増えるのは良い事でしかないから、諦めて大人しく推せ。俺は奇跡のローマンの前に、一人のヨミトモだからな?

 そして詠訵さん、進行ありがとうございます。

 俺が複数人での配信に不慣れなせいで、まるっと負担させてしまい、申し訳ございません。

 それにしても、あのくれぷすきゅ~るチャンネルの、専用カスタマイズカメラを直に見れるなんて、役得である。ブレ補正、追尾性能、魔力検知と回避能力、本体の耐久性、キツネにも見える尖った青ラインのペイント、くれぷすきゅ~るチャンネルのロゴ、完璧だ…!


「いつものコラボ配信と同じく、潜行中はあまりコメントに返せません!だけど、みんなが私の配信を見て、ワイワイ盛り上がるのを見るのは楽しいので、お約束を守って積極的にコメントして下さいね~?アーカイブ見返すのとか、結構好きなんです!」


『りょ』

『了解です』

『承知』

『初見です、ススムから来ました』

『これからカップル売りですか?く~ちゃんはそういう事しないって信じてたのに。失望しました』

『ススム、そこだと映らん』


「カミザ君のリスナーさんも来てくれてますね~。よろしくお願いします!…そうだ!カミザ君!」


  

                    「はいっ!なんでしょ……何かな!?」



「カミザ君も、そろそろファンネーム決めたら?」


 おっと。

 今まで数多の配信者をハシゴして来た俺が、自分の事となるとすっかり抜けていた。

 俺だけしか出ない配信なら別に良かったのだが、他所様ヨソサマと関わっていくのなら、決めておいた方がいいか。

 ファンの一体感のようなものは、見る側にとっても見られる側にとっても、居心地を良くする要素になる。内輪になり過ぎると新規を弾いてしまうので要注意だが、既存視聴者を繋ぎ止める一因になったりする。

 「カミザススムの視聴者」だけだと、一々言いにくいだろうし。


                       「今度の個人配信で考えとく!」



「楽しみにしてるね~!うん、それじゃあ『物は試し』!まだまだ付け焼き刃のパーティーですが、まずはやってみましょう!今日は学園もお休みなので、時間はたっぷりあります!」


『さてどうなるか』

『結構楽しみ』

『この二人のコラボが見れる日が来るとは…』

『蹂躙される浅級カワイソ…』

『推し×推しの俺得コラボ』

『まんさん腰振ったの?味見したの?』

『ススムに安定的な回復力搭載したらダメだろ…』

『ススムから入ったから魔法を使うディーパーって初めてなんだよな』


 一応事前に割り振りは決めておいた。

 後は実戦の中で、少しずつ擦り合わせていこう。

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