35.日進月歩チャンネルは、リスナーの皆さんに支えられて成り立っています part2
〈キャ!キャ!ギャギャ!キャ!〉
「うるせーぞ猿共、サカってんのか?相手してやるから降りて来いよ」
チビ猿の一匹が振り子のように紐を揺らして、勢いがついた所で飛んでくる。速い!避けるのが精一杯だ。俺が動いた先にはG型。脚を強化し「行け!」魔力を飛ばして踏み込みかけた相手の右足を浮かせ、それによって斬撃が空振った猿公の胸に蹴りを刺す。反動でさっきのチビ猿に向かおうとするも、既にそこに居ない。柱だ。柱の一本に登りそこから跳んで切りつけてきた!「うわッ!」防護膜喪失。これほんとに全然持たないな。いい加減もっと良いヤツに買い替えないと。
だがこれで敵は空中に投げ出された。カウンターを、そこで殺気、パーカーとボディスーツの二重防御が入った左腕で受けるが、それでも肉まで届いた。
もう1匹のチビ猿。相棒を助ける為の的確な一手。更にもう一体のG型も接近してきたことで、反撃を諦めて建物内部の方向へ飛び
面倒な事に、さっき傷を負わせたG型が、L型の魔法で治療されてる。それが終わると、L型はさっさと屋根上に退避した。鎧まで直ってやがる。折角の一撃を無駄にされた。
このままだとジリ貧だな。チビ猿共は後に回して、G型を一撃で排除する、それしかない。
床を蹴り、走る。
チビが来る、と思ったタイミングで足を強化、緩からの急。身体強化はなるべく長く、よりも、こまめにオンオフを切り替える方が、有効な時もある、ってカンナが言ってた。特に俺だと長時間持続が不可能だし、このやり方を磨くべきだ。
後方にチビ猿が置いて行かれたのを気配で確認。そのまま真っ直ぐG型に、身体強化を全身に切り替え、
ジャンプ! ドロップキック!
喰らった奴は耐えきれずに転
が
り
落
ち
た。
そう、落ちたんだ。
戦車の上から。
登って来るのに何秒掛かる?それとも何十秒か?
『お、上手い!L型は傷が治せても、引き上げる事はできない!』
『鎧が重くて這い上がるのに時間かかるのか』
『L型が補助しても手間取るし、登ろうとしてたらまた蹴り落とせばいいだけだからな』
受け身を取って横になった姿勢のまま、腰あたりを軸に体を回転させ踵で後ろに迫っていたチビを迎撃!もう一度床を叩いて起き上がり残っていたG型の横からの切り下ろしをかわす!完全に立ち上がって刀を上げる前の猿公にショルダータックル!これも投棄完了!
残ったチビ2匹はどうするか?そうだな、逃げに徹して味方を待つよな。そうするよな。
動体視力強化を発動。俺の攻撃を貰わないよう縦横無尽に跳ね回っている猿共に目が追いつく。軌道を単調にしないようあちこち飛んでいれば、少し飛距離が長めのジャンプを必要として、滞空時間が伸びてしまう事もある。
ほら、例えば今のお前とか。
「落ちろ!」
通過地点に魔力を伸ばし、チビがそこに着く直前に炸裂させる。残念ながら落ちない、だけど減速はした。即座に強化を下半身に切り替え、後を追い、次の足場に着く前に跳躍蹴り上げ!
『サマーソルトキック!』
『サマーソルトキックだ!』
『決まった!秘技!流星返し!』
『チャンスで外さない男は違うな』
これ実戦で決めてみたかったんだよね。
そこでL型が跳び乗ってきた。どうやらG型の戦線復帰を待てなくなったらしいが、
「遅いんだよ!」
諦めが悪すぎた。チビ猿はもう、片方が犠牲になった後だ。
重い打撲。骨とかいっただろうし、頭も潰れてる。あれは死んだ。
俺は坊さんを優先して攻撃。
妨害魔法はいつも通り魔力飛ばしで対応。錫杖は殺気検知で避け、ついでに強化した左腕で掴んで引っ張り込む。右手にナイフ。右腕にも強化を回し、脳天に突き刺して、スロットにコアをセット、グリップスイッチを握り込んで魔力抽出機構作動!ダメ押しに右拳を柄にぶち当てて刃を押し込んでやる!
振り向く。チビが目と鼻の先、来ているのは分かっていたが、L型を仕留めるのを優先した。左腕は防御態勢に入っている。また装備の耐久で受けようとして、ふと思う。
さっき、チビ猿を狙った時、魔力は撃ち出すのでなく、伸ばしていた。飛ばして当てようとしたら、タイミングがシビアになるから、という軽い理由でそうしたが、しかしこの使い方、よくよく考えたら——
生き残りチビが短刀で首を狙っていた事が分かったので、刃が通るであろう場所に左腕を置く。そこで、チビが減速。まだ刃は上着にすら届いていない。しかし何かを切っているように、重くなっていくのが分かる。やがてパーカーを切りつけられるが、布一枚で止まってしまった。
チビと俺は、そこで顔を見合わせる。
沈黙の後、
ニコリと笑って見せて、
強化が続いていた右腕でぶん殴った。
手応えあり。
随分手こずったが、G型2体を始末して、取り敢えずの勝利となった。
未だ遠くから狙って来るM型と、頭上で機を待つF型は、考えない事とする。
さっき俺は、腕の外側を覆うようにして、魔力を集めた。「纏わせた」、と言っていいかもしれない。
元々魔力を集める事は出来ていたが、それを留めておいたり、複雑な形で何かを囲んだり、そういった融通は利かなかった。精々が、発散の仕方を変えて、飛び道具の助けにするくらい。
だけど、体内での精密な魔力操作を体得したことで、魔力そのものの扱いが上達したのだろう。体外魔力操作にも、新たな可能性が出てきた。
カンナの言葉を思い出す。
——ダンジョンでの戦いにおいて、防御力や生命力とは、大方の場合は保険であり、補助であり、副産物です。
その意味が少し分かった。
避けたり守ったり、そういったテクニックは、倒す力を研ぎ澄ませば、自然に付いてくる。
「ふうー……、人心地、ですね」
C型の車体は、ダンジョンに完全に取り込まれるまでに、時間がかかる。だからしばらくは、M型の攻撃から守ってくれるだろう。
それと、この間に感謝を伝えておきたい。
「皆さん、応援とアドバイス、ありがとうございました!特に“34号線”さん、“ノナイン”さん、“ハトスキー”さん。お三方のコメントは、C型討伐にとても役立ちました。重ねてありがとうございます!」
“34号線”さんなんかは、ローマン騒動の前から見てくれてる人だ。あの時離れたんだろうけれど、いつの間にか戻って来てくれていて、最近の配信でもよく見かける。
特別扱いはあんまり良くないから、長々と言及はしないけど、こういうの、ムショーに嬉しくなるよな。
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