魔女の美味しい食べ物魔法

トマトも柄

魔女の美味しい食べ物魔法

 ある森の中に一つの家があります。

 その家の前で魔女が何かを作っています。

「ぐつぐつぐつぐつ。 美味しい物をどんどん作っていきましょうねー」

 魔女がそう言いながら、鍋をぐるぐるかき混ぜています。

 そこにある一人の少女が現れました。

 その少女は優雅な服装のドレスを着ており、何かを欲しがりそうに魔女を見ております。

「あの……お時間よろしいでしょうか?」

 少女は魔女に話しかけます。

「私、これから舞踏会に行って踊りとかを披露したいんですの。 けれど、その体力が持ちそうになくて何か美味しい物で体力を作っておきたいんですの。 魔女さんのおススメの食べ物とかございますでしょうか?」

「ひぇっひぇっひぇ」

 それを聞いて、魔女は不穏な笑いを出しながら家の中に入っていきます。

 少女は不思議な顔をしながら魔女を待ちました。

 しばらくすると魔女がバスケットを持って家から出てきました。

 そして、魔女は少女にバスケットを渡してきました。

「ひぇっひぇっひぇ! このバスケットに入っている物を食べなさい。 きっと体力が付いてとんでもない力が発揮しますぞ」

 魔女の渡した物を不思議に思いながら、少女は聞きます。

「入っている物はなんでしょうか?」

 少女が聞くと、魔女は答えます。

「パンプキンパイじゃよ。 とても美味しくて体力が付きますぞ」

 そう答えた後、少女がパンプキンパイを一口食べます。

 すると、少女は準備運動を始めました。

「凄い! 魔女さんこれ凄いよ! どんどん体力が出てくる。 動きたくてたまらないよ! 今すぐお城まで走っていけそう!」

「ひぇっひぇっひぇ! そいつは良かった! バスケット落とさないように気を付けてね」

「はい! ありがとう! 魔女さん!」

 少女は受け取ったバスケットを片手に全速力で走っていきました。

 魔女はその少女を見送ってからまた鍋に向かってぐつぐつと煮込んでいます。

 そして煮込んでからしばらくした後、一人の少年と一匹の小鬼がやってきました。

「ここに魔女がおられると聞いた! その魔女はどこにおられるか!?」

 少年が大声で魔女を呼びます。

「ひぇっひぇっひぇ! どうしたんじゃい? 大声でお呼びになって」

 魔女がその少年と小鬼の前に立ちました。

「私の名前は餅太郎! ここに餅を作れる者がおられると聞いて参った! そなたが餅を作れる者でござろうか?」

「私だったらどうする気なのかね?」

 魔女が聞くと小鬼の方が答えました。

「あの…年に一回に人と鬼の武闘会をやっていて、それの催し物として餅を用意したいの。 今年は参加が多くて餅の数が足りなくて」

 そこで魔女が小鬼の話を聞いてうんうんと頷きました。

「つまり餅の足りない分を補充したいという訳じゃな」

 小鬼はその答えにうんうんと頷きました。

「量が要りそうじゃからわし一人では少し厳しいのぉ。 助っ人を呼ぶとしますか。 オカさん! 赤さん!」

 すると上空から一匹の狼男と赤い頭巾の少女が舞い降りて来た。

「お! 来てくれたねぇ! では早速仕事の依頼しても良いかな? 早急に餅を作って欲しいのじゃ。 道具は家にあるの自由に使ってよいぞ」

 魔女が狼男と赤い頭巾の少女はそれを聞いてすぐさま家に向かい、道具を持って戻ってきました。

 杵と臼を持って目の前で餅をつき始めたのです。

狼男のセイ!という掛け声で杵を振って、赤い頭巾の少女は調整をしてサー!と掛け声を出してどんどん餅を作っていきます。

 餅の数がどんどん増えていき、かなりの数の餅ができあがりました。

 狼男が少し休憩したいのか、手を休めました。

 そこで赤い頭巾の少女は餅太郎と小鬼に餅を一個ずつ渡しました。

 どうぞお食べと言わんばかりに渡しています。

 二人はその餅を食べ、頬がとろけそうな美味しさに笑顔が零れます。

「これを持って行ってもいいのか!?」

 餅太郎は興奮気味に言います。

 すると、狼男と赤い頭巾の女の子は持って帰っていいよと頷きます。

「ありがとうございます! この餅は是非美味しく頂きます!」

 小鬼はお礼を言って、餅太郎と一緒に餅を持ち帰ってその場を後にしました。

 魔女は狼男と赤い頭巾の女の子に謝礼金を渡し、全員が去ってからまた再び鍋を煮込み始めました。

 煮込んでしばらくしてからまた新たなお客さんがやってきました。

 今度はお姫様が小人達を連れてやってきております。

「ここに魔女さんがおられると聞いたのですが、あなたでしょうか?」

「ひぇっひぇっひぇ! それはわしじゃよ」

 魔女は煮込んだ鍋の手を止めて、お姫様達に話しかけました。

「実はみんなで食べれる物が用意したいんですけど、何分人数が多くて……何か良い物がないでしょうか?」

 そこで魔女が家の隣の畑に移動して、ある物を持ってきてお姫様の前に戻りました。

「これはどうだい?」

 魔女が持ってきたのはトマトでした。

「これならそのまま美味しく食べれるし、収穫もみんなで楽しめる。 どうじゃね?」

 そこで魔女はみんなを呼ぶように畑に招待しました。

 お姫様と小人達はそのままみんなで畑に入ります。

 みんなで畑に入り、トマトを収穫しながら楽しみ、美味しく頂きました。

「ありがとうございます! みんなとても楽しんでいてとてもいい思い出ができました!」

 お姫様が魔女に頭を下げます。

「ひぇっひぇっひぇ! 楽しんでもらえたら何よりじゃ!」

 後ろの小人達も満足したのか凄い笑顔になっております。

「ついでじゃ! このバスケットにトマトを入れておいたぞ! 帰ってからみんなで食べると良いぞ! ただ、食べ過ぎないようにな」

 お姫様達は再び頭を下げてお礼を言ってその場を後にしました。

 その去るのを見てから再び鍋を煮込みます。

「お! 良い感じになったわい!」

 鍋の煮込みが終わったのか、魔女は手を止めました。

「今日は色んな客がきたのぉ! やはり、人の笑顔とは良いものじゃわい!」

 そして、鍋を家に入れて、後片付けを始めました。

「やはり食べ物は偉大だわ! みんなに笑顔を届けていくんじゃ! わしは人の笑顔が好きなのじゃ! さぁまた新たな笑顔を届けるように新たな食べ物を作らないとのぉ!」

 

 その家には魔女が住んでおります。

 その魔女はいつも食べ物を作っております。

 その目的はたった一つ。

 笑顔を見たいからです。

 もしかしたら次はあなたに笑顔を届けるかもしれません。


 





 



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