カケル君の優雅な一日

トマトも柄

カケル君の優雅な一日

 今日は待ちに待った給料日。

 ただ今日優雅に使うのは給料……ではなく、今まで貯めに貯めたポイントを使う時なのだ!

 そう、この時のためにポイ活をしていたのだ!

 ポイ活ってのは何かって?

 アプリとか条件を満たしてお小遣いを貯める事ができるという画期的なシステムなのである。

 私はこの時のために一万円分貯めておいたのだ!

 この一万円で今日は贅沢をするのだ!

 まずは腹ごしらえだ。

 私はステーキ屋へと入った。

 普段はパンとかで飢えを凌ぐためにギリギリでやっていたのだが、今回は違う!

 贅沢に肉を食うのだ!

 ステーキ屋に入り、私は真っ先にステーキを頼む。

 ここで普通サイズ? ノンノンノンノン! 豪勢にビッグサイズを頼むのさ!

 そしてしばらくするとジューシーな肉がテーブルの上に置かれていく。

 鉄板の上に置かれて焼かれている肉。

 まだ余熱が残っている状態での焼かれている音。

 私の口に入っていきたいと待っているかのように焼かれた色。

 私はナイフとフォークを持って肉を切り始める。

 断面からは薄い赤色を伴いながら少し湯気が立っている。

 私はすかさず口に頬張る。

 口の中で拡がる肉汁、噛むたびに響く柔らかい感触。

 そして、私は満面の笑みになっておる。

「う…美味い……!」

 私は思わず口に漏らす。

 普段が小食で済ませているのか美味しさが滲み渡ってくる。

 美味しさのバーゲンセールが口の中で始まっている。

 私はどんどん口に頬張っていく。

 美味しさを噛みしめ、今の幸せを感じ取っているのだ。

「はあ……。 幸せ」

 この幸せをずっと噛んでいたかった。

 しかし、始まりがあれば終わりが来てしまうのである。

 肉はみるみる内に消えていき、遂に最後の一口になってしまったのである。

「これが……最後か……」

 別れを惜しむように私は最後の肉を頬張った。

 その肉はとても美味かった。

 だがまだお別れの時間には早い。

 私は最後にある物を注文した。

 メロンクリームソーダである。

 肉との最後のお別れの為にメロンクリームソーダを飲む。

 クリームソーダによってわずかな炭酸が口の中で弾けていく。

 肉との別れの挨拶をまるで手を振っているかのようである。

 口の中で出会い、幸せ、別れを体現した後で私は席に座って余韻を嗜んでいた。

 これが私の月一の楽しみであり、幸せでもある。

 この幸せのために生きている……。

 これが実感できるのだ。

 最後に私は会計を済ませていく。

 会計の値段は約二千円。

 二千円でとても優雅な一日を過ごせた。

 残りの金額でどんな優雅な事をするか、それを考えながらステーキ屋を後にした。

 



 

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