【第一章】 第四話

仮入部期間に突入した。

サッカー部に入部希望者は横一列に並ばされ、顧問の先生とサッカー部の先輩などの前で名前とポジション、一言の三つを言わされることとなった。そして、この最後の一言が他の入部希望者と差別化させる点だろう。


入部希望者は総勢二十五人で俺の順番は二十番目。手に嫌な汗を感じる。俺は別に緊張に強いわけではない。小学校の卒業式のあの時はかなり覚悟を決め、プロサッカー選手も似たようなことをやっていたからと言い訳をしてようやくできたのだ。


しかし、数百人ほどが俺を見ていた卒業式と比べて、今回は俺を見ている人数は数十人だ。何かできなければ、プロサッカー選手なんかになることはできないだろう。


「渡辺俊、ポジションはフォワード。先輩たちが卒業するまでに一対一をして、全員ぶち抜きたいので、ぜひよろしくお願いします!!」


先輩たちを挑発するような一言。

完全にやらかしたな、渡辺の奴。どう考えても失言だろ。先輩たちの様子見てみろよ、怒りで眉間に青筋が経っているぞ。

だが、一方の渡辺は「やってやったぜ」といった様子でどや顔だった。


俺の番は渡辺の次の次だったが、もうおかしなことを言えない。もし俺がここで生意気なことを言ってしまったら、先輩たちが殴りかかってきてしまうのではないか、という雰囲気だった。

俺は仕方がなく、ありきたりなことを言った。そして、俺の隣に居た凌太もありきたりなことを言った。

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