凄絶震撼映像ヤバすぎ!『ろくろ首丸結び作戦』後編
「マジかよおい!!」
監督が女性と少女達との間に立ち塞がり、顔を突き飛ばす。
「及川、後ろ下がれ!」
「はいっ!!」
助監督が少女達を引っ張って女性から遠ざける。しかしまだ女性の首が少女達を狙ってにゅるんと伸びた。
「話聞きに来ただけだっつってんだろうが、よっ!!」
監督が女性の首に向けて思いっ切り金属バットを打ち付けた。バコッ! と言う音と共に、女性の首が白目を剥いて地面に落ち、身体が床へと倒れ込んだ。
「おっ? やったか?」
「こ、殺しちゃったんですか!?」
「「「ええっ!?」」」
少女達が落ちた首を見つめて絶句している。
「はぁ? お前妖怪に殺したもクソもねぇだろうがよ。退治だ退治!」
監督が落ちている首を金属バットで突いている。
カメラが家の中で倒れている女性の身体にズームする。手がピクピク動いているのが分かる。
「そうだ、丸結びにするんだったわ」
監督が金属バットを地面へ放り投げ、女性の髪の毛を掴んで持ち上げる。少女達が悲鳴を上げるのにも構わず、伸びた首を曲げて丸結びにしようとするが、なかなか上手くいかない。
「及川! 手伝えよ、人の首って滅茶苦茶重いんだな。片手で持てねぇわ」
「今人って言いましたよね?」
助監督は文句を言いながらも監督の指示通りに手伝い始める。が、白目を剥いていた女性の目の焦点が合い、首を縮め始める。
「うわっ、まだ生きてやがった!」
監督が髪の毛を掴んで離さない為、女性が奇声を発して逃れようとする。家の中にあった身体が立ち上がり、監督へと襲い掛かる。
「及川! バットで殴れ!!」
「そんな無茶な!」
助監督が金属バットを拾い、女性の背中を殴り付ける。女性の身体が向きを変え、助監督の肩を掴んで監督の方へと押しのけた。
「うおっ!?」
助監督の身体がぶつかった事により、バランスが崩れて監督が倒れ込み、女性の髪の毛から手を離してしまう。
そして女性は首を伸ばしたまま、家の中へと走って逃げてしまった。
「追うぞ! 及川、黒田着いて来い!!」
監督が土足のまま縁側から室内へと上がり、女性の後を追う。助監督が少女達の方を見ると、三人共首を振って同行を拒否した。
「家の敷地から出たところで待ってて!」
「及川! 黒田!」
「はいー!」
助監督が少女達に逃げるように言い、室内へと飛び込む。そしてカメラマンがその後を追う。
畳の部屋を何部屋か通り過ぎ、廊下を抜けてさらに畳の部屋へ進むと、監督が剝がされた畳の前で膝を着いている。
「監督! ろくろ首はどうなりました!?」
「この下だ、ここを降りて行った」
剝がれた畳の下には、階段が隠されていた。監督に追われていた為に、女性は元に戻さずに降りて行ったようだ。
「……行くぞ。
俺はバットを握ってっから、及川が懐中電灯で照らせ」
助監督が背負っていたリュックサックから懐中電灯を取り出し、階段を照らす。監督がバットを両手で構えたまま降りていく。助監督が後を追い、カメラマンが最後尾で着いて行く。
「結構広いですねぇ」
階段を降りた先、カメラマンが助監督の懐中電灯を頼りに周りを見回す。石造りの地下道になっており、高さは三メートル、幅は四メートルほどの広さがある。
「先が見えないですね」
助監督の呟きには答えず、監督が腰を落としてバットを構えたまま、ゆっくりと歩いていく。
しばらく進むと、地下道はさらに広い空間へと繋がった。懐中電灯の明かりでははっきりと分からないが、高さも幅も数十メートルはあるであろう巨大な地下空間だ。
「何なんだここはよぉ……」
「下水道ではなさそうですね」
「んな事は分かってんだよ!」
監督の声が地下空間に響く。そして、響く音の中に微かに何か別の音が混じり、こちらへと近付いて来ているのが分かる。
「何か来ます!」
「叫ばない方が良いと思うよー!?」
カメラマンが小声でそう言ったと同時に、監督のバットが振り抜かれる。ドゴンという重い音が響く。
「何なんだよチキショー!」
懐中電灯に照らされた金属バットには、ぬらぬらとした緑色の液体が付着している。
「かかか河童だっ!!」
カメラマンが指差した先に、河童のような緑の人型をした何かが倒れている。監督がバットを振り降ろそうとした瞬間、人型が起き上がって途轍もない速さで走って逃げて行った。
「監督! ヤバいですよ、引き返しましょう!!」
「河童があっちに走ってったんだぞ! あっちに走ってったって事は、向こうに何かあるって事だ!!」
興奮しているのか、監督が頭をぼりぼりと掻いて叫ぶ。肩を掴んで止める助監督を振り払い、先に進もうとする。
「あぁー!! もういいわ、及川。懐中電灯貸せ、お前は先に帰ってろ。
黒田、お前は着いて来るよな!?」
「懐中電灯なしでどうやって帰れってんですか!?」
助監督は監督の指示に対してキレているが、カメラマンは迷っているようだ。
「監督、落ち着いて下さい。明らかにヤバいです。ここを調査するにしても、一度帰って日を改めるべきです。
人数を増やして、もっと強力な明かりを用意して、武器もあった方が良いですし」
助監督がそう提案するが、監督は答えずに闇の向こうを睨みつけている。
「監督!」
「あー分かった分かった! 一回帰るが、また明日来るからな!!
でも人数は増やせんぞ、こんなすげぇとこ教えたらすぐに噂が広まっちまうからな」
ようやく監督が撤退の決意をし、元来た道を戻る。地下道は分岐していないので、真っ直ぐ歩くだけで階段へと戻れるはずだ。
「……何か聞こえねぇか?」
「さっきの河童が戻って来たんじゃないですか!?」
巨大空間と階段のちょうど中間地点で、後ろから何かが近付いて来ている事に気付く一行。
振り返ると、今まで最後尾を歩いていたカメラマンが先頭になる。
「うわぁー!!」
そして走って来た何かに襲われて、カメラマンが転倒する。撮影していたカメラが地面に落ちて、映像が乱れる。
カメラマンが河童らしき人型に組み伏せられている姿が映される。
「黒田!? このクソボケこらっ!!」
人型の背中に金属バットを振り降ろす監督。しかし人型は甲羅を背負っているので、人型の行動を止める有効打が入らない。
「また何か来ます! それも複数!!」
河童らしき人型が来た方向から、複数の走る足音が聞こえる。
「全く、何でこんなところに
「兄者、言っても仕方のない事を申すな」
白い狩衣を着て、顔に天狗のお面をした四人が駆け寄って来た。
「お姉さん、それ僕達にぶつけないでね」
「男性様!? 四人も!?」
声や姿形から、助監督は四人が男である事に気付いたようだ。
「はいドーン!」
桜色の刺繍が入った狩衣の男性が、河童らしき人型に向かって飛び蹴りをかます。カメラマンに跨っていた人型が態勢を崩して転がる。
「ここは任せて地上へ戻れ!」
「二度と来ちゃダメだよ?」
「と言っても無駄であろうな」
「
「おい! 名前を言うなよ!!」
「あっ、ゴメンゴメン」
男性四人が河童を囲んでゲシゲシと蹴りを入れている。起き上がったカメラマンがカメラを拾い、その様子を撮影しようとするが、男性に遮られる。
「ここにいる妖怪は河童だけじゃない。鬼が来る前にさっさと地上に戻れ。お前達三人を守りながら戦うのは面倒だ」
「鬼!? 今鬼って言ったか!?
ってかあんたらは天狗なのか!? 天狗で良いから私とけっこ」
「監督! 良いからもう引き返しますよ!!
男性様方、助けて頂いてありがとうございました!! 失礼します!!」
監督が握っていた金属バットを無理やり奪い、バットを使って監督を羽交い絞めにして助監督が無理やり連れて行こうとする。
「分かった! 自分で歩くから離せ!!」
そんなやり取りを撮っていたカメラマンが、ふと後ろを振り返ってみると、先ほどの男性四人組と河童らしき人型は忽然と消えていた。
「……何だったんだ、あれは」
場面が変わり、助監督が室内の畳の上に立っている映像が映し出される。
「はい、日本家屋の床下の階段から地下道を進んだ次の日です。
えー、ご覧の通り、畳をめくっても地下へと続いている階段が見当たりません。
我々は確かに昨日、ここから戻って来たのですが、今日戻って来てみると何故か階段が消えてなくなっていました。
監督は今、念の為にと他の部屋の畳の下も確認しているのですが、恐らく手掛かりは見つからないでしょう。
一体あの男性様四人組は何だったのでしょうか。地下で何と戦っているのでしょうか。どこに行けば会えるのでしょうか。
皆様からの情報を、お待ちしております」
「あーチクショウ! せっかく男性様と出会えたってのに何で手すら握れなかったんだ!」
監督が畳を投げ飛ばしている映像の下に、字幕が流れる。
≪
≪
≪
≪少女A:
≪少女B:
≪少女C:
≪ろくろ首:
≪河童:
≪協力:株式会社宮坂工務店≫
≪天狗のお面四人組:
≪この動画は創作物です。実在する人物・団体とは無関係です。畳を剥がしても安藤家四兄弟とは会えません。首の長い女性を見てもバットで殴らないで下さい≫
≪脚本・監督・制作総指揮:VC副社長≫
≪制作・著作:
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