新たな動画共有サイトについて
「どこの世界にもネットに強いニキネキがおるんやなぁ」
マチルダがジニーとキャリーとイリヤを伴ってオフィスへと入って来た。
「あぁ、今日はねぇちゃんねるの管理人と会う日なんだっけ」
「そやで、何考えてるんか分からん変わった二人やったわ」
マチルダは、元
管理人であるひろことゆきえが英語を喋れる為、同行予定だったメアリーが行く必要がなくなったのだが、面白そうだからと理由でマチルダがイリヤに頼んで連れて行ってもらったのだ。
ちなみにねぇちゃんねる掲示板は
ジニーがYourTunesを解雇された事で、ジニーの部下である開発メンバーの半数がYourTunesへ退職希望を出した。
ジニーとキャリーのように解雇された訳ではないので、引き継ぎ等がありすぐさま退職とはいかない。希望者が日本に来るまで時間が掛かるので、それまでにだいたいの動画サイトのコンセプトを考える事になった。
ジニーだけがコンセプトを考えても、それはYourTunesの二番煎じであるというツッコミどころになってしまう。
その為、日本のネット文化に詳しいネキこと、ひろことゆきえに白羽の矢が立ったのだ。
「
ひろことゆきえは、新しい動画共有サイト内でのみ、動画の合成や音声の差し替えを許可してはどうかと提案してきた。
MAD動画と言われるもので、既存の動画や音声や画像を寄せ集め、切り貼りして再編集する二次創作動画だ。
「ただの切り抜き動画じゃなくてって事か」
「そうそう。例えば、『ショタきゅんのこの表情が好き♡』って字幕を入れたり、動画と動画を繋ぎ合わせて兄弟間で会話してる風に編集してみたり」
「じゃあ編集しやすいように素材用の動画を用意してアップするってのもありかな」
「おぉ、ええんちゃう?」
二人の会話をキャリーが英語に通訳し、ジニーとイリヤへ説明している。
キャリーは伊吹との面接の後、大喜利にカモフラージュさせた転生者チェックシートを
日本で暮らしているうちに少しずつ自分が日本人であった記憶が戻って来ているので、今では流暢に会話出来るだけでなく、読み書きまで完璧に思い出している。
「あと、安藤家は動きと声を自由に操作出来るんやから、無限に広告動画が作れるやろうって」
「広告動画?」
ひろことゆきえの言う広告動画とは、動画と動画の間や動画再生中に流れる広告の事であり、その広告動画に安藤家を出演させるのはどうか、という話だ。
VCスタジオとVCうたかたラボの技術力が向上した為、今となっては伊吹がいなくても安藤家を動かし喋らす事が出来るようになっている。その技術を生かして、広告制作をしてはどうかという提案だ。
歌わせる技術については継続して開発中だ。
動画共有サービスが収益を得る方法として、視聴者に広告動画を見てもらえば見てもらうほど、広告出稿主から広告宣伝費が支払われる形になっている。
新たな動画共有サービスでは、その広告制作自体をVCスタジオで請け負うという新たな商機になる。
「今でもテレビCMへの出演依頼来てるんやろ? 動画共有サービス用のCM作ったら、逆輸入的な感じでテレビでも流せるし、一石二鳥やん」
「なるほどなぁ、でも広告代理店がどう言うかな」
伊吹の零した疑問を受けて、
「
現状、安藤家はどこの広告にも使えない状態ですので」
「それは良かった。
広告にまで手が伸ばせないから、これを機にガンガン広告出演させていこうかな」
となると、VCスタジオの内部に広告制作班を用意してやる必要があるかも知れない。声を当てる必要があるので、VCうたかたラボの協力も必須だ。
「うちも
くねくねとモデルのようにポージングするマチルダに、伊吹が話を戻して質問をする。
「で、ひろこさんとゆきえさんの提案は以上?」
「あぁ、えっとな、チャンネル登録の無料版と有料版に分けて、有料会員やないと見れへん動画を投稿するのはどうやって言うてたな」
「あ、メン限か。自分が入った事なかったから存在忘れてたな」
メンバーシップ限定動画は、チャンネルの有料登録者にのみ見れる動画投稿や生配信が行えるシステムだ。
「正直あんまりやりたくないかなぁ。投げ銭も止めようかと思ってるくらいだし」
伊吹は自分自身が投げ銭も有料登録もした事がないので、それよりも手元に残るグッズなどを買ってもらった方がお互いに良いのではと考えている。
「あと思い付くのは、安藤家のアバターと『あんどうた』を使って個人制作の歌や踊りを公開出来るようにする、とかかな。
もちろんうちの動画共有サービスのみで」
歌わせてみた、踊らせてみた、というこの世界では新しいジャンルの娯楽となる。
「何にしても、とりあえず強いサーバを用意すべきて言うてたよ」
「やっぱそうなるよなぁ」
こうして、独自の動画共有サービスの開始へ向けてさらに資金投入される事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます