VC伊真心
「書く・読む・描く・見る、でクムクルでどう?」
「うーん、パッとせんけど仮称としてそう呼ぶようにしよか」
イラストコミュニケーションサービスと小説投稿サイトをひとまとめにして、ク厶クム(仮称)というサービス名とした。
ひとまとめにする事で、小説とイラスト単体だけでなく、小説原作を漫画化したりイラストから世界観を小説化するなど多様な作品が生み出される事を期待している。同一サイト内だと収益の分配もしやすく、幅広い閲覧数が見込まれる。
VividColorsの庭を作ってしまう事で、
秘書達が宮坂グールプを優先として、各関係先にサービスの構想を説明して回る事となった。
「社名と社長を決めようか」
伊吹としては自分が代表となるよりも、実際に取引先と顔を合わせて話が出来る女性の方が良いだろうと考えている。特にサイト運営にとって営業活動は重要だ。クライアントから広告の出稿を得ないとならない。
「社長とかはええわ、気が重い。社長の下で自由でクリエイティブな発想で仕事するわ」
伊吹は十歳の少女を社長にするという発想がなかったが、マチルダには特に何も言わずに
「イラストレーターの気持ちが分かるだろうから、頼むよ」
「んー、大学優先になっちゃうだろうけど……」
学生である事を理由に難色を示す燈子。しかし伊吹としては社長は藍子か燈子に任せたい。藍子は現在、技術者との面談に掛かりきりで、とても新会社の社長まで手が回らない。
「諸事は
「お任せ下さい」
紫乃のサポートがあるなら、と燈子が何とか納得してくれ、社長が決まった。
続いては社名である。
「創造とか芸術とかの神様からあやかる?」
燈子がスマートフォンを取り出して芸術の神様を検索する。
「
「あんまりええのないねぇー」
自らもスマートフォンで調べていたマチルダが零す。
「もうVCイマジンで良くない?」
創作活動において創造が一番重要である。VC創造では何となく見た目が良くないので、英語で良いだろうと伊吹は考えた。
「Imagineか、うーん。
せや! 伊吹の伊に真智の真、心で
ドヤ顔を見せるマチルダだが、ヤンキーの夜露死苦とそう変わらない発想である。
「ご主人様のお名前から取るのはちょっと……」
「伊は『杖を使って神様を呼び寄せる聖職者』を意味する漢字らしいから伊吹の伊やって言わんかったら分からへんって! 真の聖職者の心を持つ会社って意味やってホームページに載せとこ! な、ええやろ? ともねぇ頼むわぁ!!」
抱き着かれて耳元でわーわーとまくし立てられ、智枝はマチルダに降参してしまった。
こうしてクムクルの運営会社はVC伊真心となった。
「で、サーバはどうすんの? 自社サーバ? それともクラウド?」
「クラウドはまだそんなに信用出来るレベルじゃないんだよね。それに強いテック企業しかクラウドサービスしてないから、結局元栓を閉められるとサービス提供がストップしてしまうからなぁ」
マチルダと伊吹にとって当たり前の存在だったクラウドサービスだが、この世界ではまだ登場したばかりであり、この世界独特の世界情勢や政治的判断などから、情報を抜き取られたり、突然クラウドサーバから閉め出される可能性もある為、安易に選択出来ないのだ。
「地震が起きにくい大陸中央部に使える土地ないん?」
「それは
技術持ってる国内の会社と提携してってのが早いだろうけど、何にしても最初はどこかのサーバを借りるしかないんじゃない?」
「ほなもうちょっと掛かるかー。秘書さんらが声掛けて回ってくれてる間にうちは安藤真智としての動画の撮影しとくわ。
そうそう、
「え、そんな人いるの? VividColorsとしては会社の住所に直接物を送って来ないでってアナウンスしてるんだけど、ギフトコードならセーフだと思ったんだろうか」
伊吹の場合であると、男性なのでいくら物や土地や現金を貰ったとしても、贈与税が掛からないので大きな問題にはならない。
しかしマチルダの場合はそうはいかないので、受け取らないようにと智枝が説明する。
「でも何で女のうちに送って来てくれるんやろ」
「黙ってれば可愛いからじゃない?」
「そっかー、黙ってたら可愛いからかぁって一言余計やねん!」
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