GoolGoal代理人との会談
『
振込手続きは通常、
「まるでこっちが嘘を吐いているかのような言い方だな」
翌朝、報道は昨日の生配信の内容で持ち切りだ。さすがに生配信の様子をそのまま放送する番組はなくなったが、法廷画家に描かせたイラストをイメージ画像として使用して、何とか再現しようとしている。
まるで伊吹が犯罪者であるかのような印象操作に、女性達が憤慨している。
「入金はまだみたいだね」
「おかわりかなぁ」
「いっくん、おかわりって?」
「いやぁ上手く行ったね。がっぽり稼がせてもらったよ」
「それはそれは」
福乃と伊吹のやり取りを見ても、まだピンと来ていない様子の藍子と燈子。
「つまり、空売りを仕掛けたという事でよろしいでしょうか?」
「そうだよ。うちだけじゃなく信用出来るところ複数に声を掛けてね」
「生配信中に一気に五パーセントも値下がりしたから笑うの必死に我慢してましたよ」
伊吹が福乃と組んで火を付けた今回の騒動で、
空売りとは株取引をまず売りから入り、安くなったところで買い戻して差額を利益とする取引方法だ。
Alphadealの時価総額は約二兆ドル。日本円にして約二百兆円なので、一時とはいえ十四兆円が吹き飛んだ計算になる。
今は多少値を戻し、前日比マイナス三パーセントで落ち着いている。
「皇国からAlphadealを売り浴びせるのに合わせて為替も動くからね。
Alphadealだけじゃなくアメリカ全体でちょっとした騒ぎになってたよ。いらない喧嘩を売るからだ」
「朝方に私のスマホにGoolGoalの代理人から何度も着信があったんですけど、伊吹に言われて出てないんです。大丈夫なのでしょうか?」
ご機嫌な様子の福乃に、藍子が尋ねた。
「へぇ、伊吹に言われて、ねぇ」
福乃は藍子が伊吹を呼び捨てした事、朝方に一緒にいた事には触れず、大丈夫だと頷いてみせる。
「もうこっちに向かってるんじゃないかい? 直接話せばいいじゃないか。
何なら私も立ち会わせてもらうよ」
「じゃあ僕もドット絵お面付けて……」
「「ダメです」」
すかさず待ったをかける
「ご主人様、福乃様にお立ち合い頂くのですからご心配される必要はないかと」
「いや、心配とかじゃなく単純に面白そうじゃん」
「なおの事ダメです」
という事で、伊吹はオフィスでお留守番となった。
GoolGoalの代理人はこの区画を検問している警察官に止められ、
このビルに入らせる訳にはいかんとの事で、福乃が経営する喫茶店を指定し、そちらで会談が行われる事になった。藍子と福乃と
「話にならないね、全く……」
一時間ほどで三人は戻った。福乃は不満を隠さずにどすんとソファーへ座る。
「何て言ってました?」
「顔を合わせた途端今すぐ生配信で発言を取り下げろだとさ。私が宮坂福乃だと名乗ったら急に態度を変えて来たよ。
伊吹はアメリカの弁護士にも名を知られているという福乃への評価を改める。
「それで、その福乃様だと分かった先方は何と言いましてございます?」
「止めておくれよ、宮坂家中ではすでに伊吹様の方がよほど重要人物だよ」
いやいや、まぁまぁ、などと言いつつ、代理人との話の内容へと話題が移る。
「何とかあの発言を取り下げてほしいと言って来たから、事実だろうと言い返してやったさ。
そして藍子にその場でスマホで銀行口座を調べさせ、確かに今も入金されてない事を確認させてやったよ。
YourTunesの設定で銀行口座が間違いなく紐付いてる事もね。相手は弁護士だ、のこのこ怒鳴り込んだ事でさらに自らの状況を不利にしたのさ」
向こうの代理人である弁護士が、間違いなくYourTunesから振り込みされていない事と、申請の設定が間違いなく行われている事を確認した。
つまり、VividColors側には完全に落ち度がないとGoolGoal側代理人が確認してしまったのだ。
ちなみに、事前に智枝がさくっと作成したVividColors側には完全に落ち度がないと確認しました、という書面にGoolGoal側代理人に署名をさせている。
本来であれば絶対に署名しなかっただろうが、宮坂家相手に恫喝をした、という事実を公表されると自分の弁護士としての立場を失う為、泣く泣く署名したとの事。
その話を聞きながら、恐らく彼女はGoolGoalの代理人を解任されるのだろうな、と伊吹は思った。
伊吹は藍子に、その弁護士へ何かあればいつでも話を聞くと伝えておくように言った。
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