男性様が一人で?
「質問の一つ目は名前。キャラの性格とか外見に関わる事だからこれは後で考える、と。
二つ目は誕生日で、答えが七月二十一日。えっと、深堀りはしません。
三つ目は、年齢で十八歳。実年齢で問題なし、と。
四つ目の質問として、わざわざ性別に関して質問する必要があるかどうかも、後で考える事にしましょう。
ここまではいいとしても、出身については止めた方がいいと思います。ご実家に迷惑が掛かる可能性があるので」
「あーちゃん、今まで聞くに聞けなかったんだけど……」
藍子の耳元で小声で何やら訪ねている燈子。それを受けて、今までシャキシャキと仕事を進めている風だった藍子の表情が引きつり、そして小さく頭を横に振った。
藍子の反応を見て、燈子は深呼吸をした後、覚悟を決めたような表情で切り出す。
「
もちろん家からここまでずっと一緒におられたはずですよね?」
「あぁ、ちょっと事情がありまして、田舎から一人で出て来たんですよね」
何でもないように答える伊吹だが、燈子にとっては信じられない答えだった。
このビルに伊吹の護衛が来ていない事、わざわざ宮坂警備保障の社員が護衛を務めている事、しかもその護衛は社内で特に重要な任務を任されている上級職員である事。
普通では考えられない状況に巻き込まれている。そんな嫌な予感がして、燈子はもっと踏み込んだ質問を投げかける事にした。
「一人で、ですか? 護衛も連れず、侍女も執事もいないんですか?」
「ええ。新幹線に乗って、東京駅で在来線に乗り換えて。スマホのアプリで目的地を入力すれば、大抵の場所なら問題なく辿り着けますよ」
男性が身を守る護衛も身の回りの世話をする侍女も公私の予定を管理する執事も連れず、一人。
生まれた瞬間から死ぬその時まで一人になる機会などないであろう男性が、一人で外出など本当に出来るのだろうか。誰かがわざわざ公共交通機関の乗り方を教えた? 大事な大事な男の子に? あり得ない。危険過ぎる。何かあったらどうするのだ。
そこまで考えて、親や従者が伊吹が行方不明になったと警察や男性保護省へ通報していれば……。
場合によって、自分達が誘拐犯として逮捕される可能性まである事に気付き、藍子も燈子も顔を真っ青にする。
「お嬢様方。伊吹様についてのご懸念に関しまして、
コンコンコンッ
ちょうどそのタイミングでオフィスの玄関がノックされる。お見えになりました、と小さく告げ、小杉が玄関の扉を開ける。
「まったく、引退したバアさんをこき使うんじゃないよ」
「ママさん?」
「「おば様!」」
入って来たのは喫茶店のママさん。格好は喫茶店の時と変わらないが、護衛のお姉さん達と同じく耳にインカムを仕込んでいる。
ママさんこと
「そんな顔をしなくても、全部上手く行ってるから心配ないよ」
不安そうに自分を見つめる二人の姪へ声を掛け、そして隣へ座る伊吹に向き直る福乃。
「さて、
★★★ ★★★ ★★★
ここまでお読み頂きましてありがとうございます。
次話より章が変わり、伊吹の過去編になります。
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