何もかもが手遅れだった人生から

コーフィ(仮)

第1話 後悔だらけの人生


人生には数え切れない無数の分岐点が張り巡らされており、人はその無数の分岐点を幾度となく歩みを続ける。そして、その分岐点が1つでも違えば、たとえどんなに些細な選択であっても、その人の人生が180°変わってしまうことだってある。


そういうのを総じて、人生のターニングポイントと呼ぶ。


代表的なもので言えば、高校や大学、就職先の選択は間違いなく今後の人生を大きく左右するが、そんなことは誰だって分かるし、選択を間違えないために必死に考える。

しかし、それは人生の半分も満たない。残りは全て日常の中に眠る小さな分岐だ。今日は何時に起きよう、朝御飯は何にしよう、何時に家を出よう、何時に家へ帰ろう、家に帰ってから何をしよう、何時に就寝しよう……このようなことを人は、意識せずとも1日に数え切れない程、多くの選択をしている。

そして、その小さな分岐の中のたった1つ間違えるだけでも、今まで順調に回っていた歯車が全て狂ってしまうことだってある。



これから描くのは、人生が狂い、後悔に苛まれた1人の男が、張り巡らされたターニングポイントをやり直す物語だ。


果たして、これまで歩んだ道は間違いだらけだったのか……?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一度した過ちは形而上であれ形而下であれ、何かしらの形でこの世に残る。その残ったモノに未練があるのかと言われれば、大抵の人はイエスと答える。

俺もその1人だ。

 

「いらっしゃいませー」

 

店内に入ると、少し気の抜けた挨拶が聞こえて来るが、全く意に介さず、いつものコーナーへ足を運ぶ。

透明なガラス越しにある2本の缶を手に取り、そそくさとレジで会計を済ませる。

 

「2点で396円になりまーす」

「1000円でお願いします」

「はい、604円のお返でーす」

 

淡々としたやり取りをし、店を出る。

 

「さっぶ」

 

白い吐息が空気中に舞う。秋の若干の肌寒さを超え、本格的な冬が到来している。日が落ちるのも早くなり、まだ18時になっていないにも関わらず、完全に日が落ちていた。


帰り道には部活終わりの学生や仕事終わり社会人といつもと変わらない光景だが、俺はその光景が苦痛だった。

学生達は帰れば、母親が作ってくれた温かいご飯を食べ、社会人は奥さんの作ってくれたご飯で楽しく団欒と言ったところか。

まあ、そんなのは俺の勝手な妄想で、実際はそんなことはないかもしれない。

けど、少なくとも俺よか良い人生を送っていると思う。

それぐらい俺は自分の歩んだ人生は後悔だらけだった。

もし、あの時こうしていれば、もっと早くこうしていれば、あんなことをしなければ、全て後になって気付く。


……駄目だ、今日はとくにネガティブなことを考えてしまう。


俺は突き当たりの人通りが殆どない暗い路地へ曲がる。

街灯の灯りはあるものの、それらはほぼ機能しておらず、数十メートル先は真っ暗で何も見えなかった。

そんな薄気味悪く、いつもなら絶対通らない帰路。

しかし、今日は気分の落ち込みも相まって、その帰路を選択した。


ただ、その選択はまた1つの後悔を生んでしまうことになる。

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何もかもが手遅れだった人生から コーフィ(仮) @Akmt4415

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