第2話 仲間の笑い声

 私は、日差しを浴びて、ふかふかのベットで起きた。あれ、さっきのは夢だった? でも、すごくリアルだった。ただ、ベットにいるままだと、体がベットに深く落ちていき、起きれなくなるから、無理して起きたの。


 学校では、1時限目は体育で水泳だった。更衣室で着替えて、クロールとか25mを何回か泳いだ。得意ではないけど、普通には泳げる。終わってから制服に着替えようとすると、ブラがない。周りを探したけど、トイレの中に、汚物と一緒に落ちていた。どうして、こうなんだろう。


 先生に言っても解決できないわよね。むしろ、今以上にいじめが過激になりそう。そう、何もないふりするしかない。私は、ブラを洗ってからゴミ箱に捨てて、体操着とブラウスを着た。


 クラスでは、私がブラをつけずに、だらしない女だと、何人かがクスクス笑っていた。そんなことは、今に始まったことじゃないから、無視しておけばいい。私だけが、いじめられて、このクラスが平穏のまま過ごせるなら、それでいいじゃない。


 でも、学校から帰る灰色の風景の中で、頬に涙が流れた。砂埃が目に入ったからかもしれないわね。でも、親には、悲しんでる姿、見せたくないから公園で顔洗ってから家に帰らないと。


 さっきの夢と比べれば、無事に生きていけるんだから、こっちの方が幸せよね。でも、あの夢に出てきた人たちは、家族とかを守ろうと、あんな状況の中でもイキイキと生きていたように見えたけど、本心はどうだったんだろう?


 私は、スマホがあっても話す相手がいない夜を迎え、ベットで眠りについた。


 起きた、その時だった。また、埃ぽい部屋で戦闘にいくぞと大声が聞こえた。そして武器をしっかりと持ち、眩しい外での戦闘に参加した。


 30分ぐらいした時だろうか、昨晩、横にいて話しかけてくれた男性の頭に敵のビームがあたり、粉々に飛び散り、その血は私にも飛んできた。頭を失った体が、少しぐらぐらしながら、ゆっくり後ろに倒れていった。あの優しそうな人が、目の前で死ぬなんて。私も、いつまで生きられるかわからない。


 リーダーが率いる中で、2手に分かれ、敵を挟み込み銃撃戦に持ち込んだ。双方から攻められた敵は一時退却を始めた。そして、私たちも避難所に戻った。


「リーダーはどこですか? 見当たらないですけど。」

「リーダーは、さっき敵に撃たれ死亡した。これからは、私がリーダーを代行する。苦しい戦いだが、頑張るぞ。よろしく。」


 そうだったのね。ご家族を大切にして、みんなを守ろうとしていたリーダーは、もういない。あまりにも、過酷な現実。


 今夜は、家族がいる人たちは、家族のもとに帰っていったわ。そして周りは、若者ばかりとなった。


 そんな中で、缶詰の肉を食べながら少し休んでると、笑い声が聞こえた。先が見えず、やけになっているの?


 でも、よくみると、昨日、喧嘩していた2人が相手の肩に手をかけて大笑いしている。女性だと、あんなひどい喧嘩になれば、もう関係は修復できないけど、男性って、こんなに簡単に仲直りできるの? それとも、こんな過酷な環境だから?


 二人が大笑いする中で、みんなの笑い声も増えていった。人もいっぱい亡くなったのに、現実を忘れようとするのか、みんなの顔は明るかった。


 よくわからなかったけど、みんなが明るくなれたのはいいこと。もしかしたら、男性って、厳しい現状を打破するために、明るい未来だけを見て前に進める生き物なのかしら。そうじゃないと、前に進めなそう。


 そういえば、女性として暮らしている私も、前を向いて進むしかないかもね。後ろを向いてばかりいても、何も変わらないから。今、こんな環境なのに、目の前で大笑いしている男性たちをみて、そう感じた。


 そう思うと、前回は薄暗く感じた避難所が、とても暖かい空間に思えてきた。周りの男性たちは、明るく活気があり、誰もが大切な人を守ろうと暖かい気持ちで溢れている。


 みんなは汗まみれで、お風呂も入れないようだし、男性の汗臭さが充満していたけど、そんなに嫌な匂いじゃなかった。むしろ、みんなが仲間だと感じられた気がした。


 また、この環境だからかもしれないけど、男性たちは、みんな、誰か大切な人を守ろうとしていて、自分のことなんて心配していない。私もそうだけど、みんな、怖いんだと思う。でも、誰一人、逃げようとしない。本当に、みんなは頼もしい顔をしてる。


「おい、木村。少し暗いんじゃないか? 明るく行こうぜ。」

「そうだね。でも、怖くない?」

「そりゃ、怖いさ。でも、ここで何もしなければ、守らなければいけない人も全て失っちゃう。俺は、明るい未来のためなんて、かっこいいことは考えていない。大切な自分の子供と妻を守りたいだけなんだ。お前だって、同じだろ。弱気になるな。」

「分かった。」


 私は、そう答えるしかなかった。そして、眠りについた。

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