『暗闇のREQUIEM』~鬼灯さんと目が見えない僕の旅~
孤宵
第一話 暗闇
空が揺れる、それが見える
ただそれだけ、それだけが見える
他には何も見えないのに、それだけが見える事を幾度恨んだのかわからない
『暗闇のREQUIEM』
街を歩く、街というか、僕にとっては暗闇なのだが、確かに歩く
「あっ」
何かにつまずく、何か堅いものに、そして倒れる、地面に向かって
すると、何かに助けられる
「いつも、ありがとう、鬼灯さん」
感謝を告げる、隣にいるであろう人に、彼女の名前は鬼灯さん
背の高さは僕より高く、髪は黒く、すらりとした美女、らしい、友達が言っていた
「気にしなくてもいいんですよ、眼が見えないのなら仕方がありません」
そう、僕は目が見えない、生まれつきのものだ
だから見えない、何も、隣にいる人の姿も、目の前にいる建物も、何も
それを助けてくれるのが生まれた頃から隣にいる鬼灯さん
ずっと僕の隣について、助けてくれる
この人がいないと、僕は命がいくらあっても足りないだろう
「つきましたよ、ご主人様、教室です」
そう、鬼灯さんに言われ、教室のドアを開き、足を踏み出す
そして、いつも通り、教室の中を見る
すると、白い何かが線のように宙を浮いている
そして、その線は壁に跳ね返ったりしながら、全て僕の顔に向かって走っている
そう、これが、僕の日常だ
「おはよー!響!あと鬼灯さんも」
「よぉ響、宿題やったか?」
「おはようございます、響さん、そして、鬼灯さん、今日もお綺麗ですね」
いつものメンバー、幼馴染の三人が僕に声をかける
活発でいつも元気な美緒
明るくて、ちょっとやんちゃなサッカー部の恭介
真面目で委員長をしている雫
顔は見えないし、姿もわからないけど、皆大切な友人だ
「おはよう」
そう言って、鬼灯さんに連れられながら自分の席に座る
左の角、窓際で一番後ろの席、ずっと変わらない、その席に座る
そして、いつもきまってある方向を見る、まぁ結局は暗闇なのだけれど
白い線、僕が唯一見えることができる、その線がない方を見る
これが僕、新藤響の日常だ
基本的にこうやって一定の方向を見ながらぼーっとする
先生は僕の事情を知ってるから、なにも言ってこない
そのまま、ずっとぼっーーとする、それが日常、そして平穏
だから、このまま学校が終わり、家に帰る、それで一日が終わる
そう、この日も、そうなるはずだった
「そんな生活に何の意味があるの?」
誰かに声を掛けられた、僕に声を掛ける人なんていないはずなのに
誰かが僕に声を掛けた、それを聞き、びっくりして前を見る
すると、真っ暗闇の中、一人の少女が立っているのを見つける
「わぁっ!」
驚いて、席を立つ、そして、少女を良く凝視する
不気味な笑顔で佇んでいる少女を
その瞬間、椅子が倒れる音と共に、自分の中の常識が壊れる音がした
そして、これが僕と鬼灯さんの旅の始まりだった
『暗闇のREQUIEM』~鬼灯さんと目が見えない僕の旅~ 孤宵 @musubime_koyoi
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