オカン男子TS、謎多きイギリス系美少女と入れ替わる?!

大福金@書籍発売中

第1話 僕たちどうなるの!?

「おっ、いたいたすずちゃん。ジャージの膝の所が破けちまってさぁ、どうにかならん?」


 僕の机の上にドサッとジャージを置いたのは、隣のクラスの山田あきら。見た目は少しチャラいけれど友達思いの優しい奴、サッカー部のエースで女子からはかなり人気がある。

 僕はというと、鈴木堅志郎ケンシロウって名前は男らしいけど、地味で大人しい。

 そんな僕らに共通点などないんだけど……。


「何やってこんな事になったの?」

「ちょっとさ、サッカー部の奴らと悪ふざけしすぎてな? 俺さぁ、この後体育なんだよ。こんなジャージ着てできないじゃん。頼むよ鈴ちゃん」


 山田は両手を顔の前で合唱し、必死に懇願してくる。

 そんな姿を見て断れるわけなどない。


「もう、分かったよ。チャチャっと直してあげるね」

「さっすがオカン男子、鈴ちゃんだな」

「そのあだ名で呼ばないで」


 なぜかみんなからオカン男子と言われている。堅志郎ケンシロウって強そうな名前があるのに、呼び名も誰が言い出したのか〝鈴ちゃん〟だし。

 みんなから鈴ちゃんって呼ばれるのは、別に嫌じゃないから良いんだけどね。

 裁縫も好きだし、料理も好き。

 だけどそれは、忙しい両親に変わって下の子の面倒を見ないといけなくて、自然と家事全般が身に付いただけなんだけど。


 つい癖でクラスメイトの面倒まで見ていたら、『行動がオカン』とか誰かがが言い出して、今に至る。


「はい完成。もう破かないでね?」

「仕事が早い! さすが鈴ちゃん。ありがとな」


 山田は嬉しそうにジャージを握りしめて去っていた。

 おっと、僕も次の授業の準備をしないと。その後は楽しみにしていたお昼休み。

 今日は特別な場所で食べるんだ。


 四時間目が終わると、僕はお弁当を持ってすぐさま教室を出た。


 向かうは一直線、学校の屋上。


 本来なら、立ち入り禁止で入れないはずなんだけど、昨日たまたま鍵が壊されているのを発見しちゃって。そんなの見つけちゃったら、行きたくなるのが男心ってもんでしょ。

 まぁ、お昼をゆっくり食べたいってのもあるんだけど。

 理由はみんなが僕のお弁当を味見しに来るから。

 嫌じゃないんだけど、たまにはゆっくり一人で食べたい時だってあるんだ。


「よし、この階段を上がれば屋上だ」


 階段を一気に駆け上がると、通れなくしてあるチェーンの下をくぐり、その先にある屋上の扉を開ける。


「うわぁー! 見晴らしがいいなぁ。運動場奥まで見える……ん?」


 景色に感動していたら、頭の上に何かが降ってきた。


 ハンカチ? 

 落ちてきたのは、今流行りのうさぎのモッフンが刺繍された、可愛いハンカチだった。

 妹の優里亜がモッフン大好きなんだよなぁ。


 ……って、なんで上からハンカチ?


 一歩前に出て振り返り上を見ると、屋上に入る入り口の上部がさらに高台になっていて、横にある壁付けされたハシゴから登れるようになっていた。


 あそこから落ちてきたんだよね?

 ……誰かいるのかな?


「ごめん、落としたみたい」


 高台を見ていたら、上からひょこっと顔を出してきたのは……!!


「如月さん……!」

「……………うん」


 如月きさらぎ姫乃ひめのこの学園の誰もがしているであろう有名人。

 シルバーに近いプラチナブロンドの髪に、青く綺麗な瞳。陶器のように白く透き通った肌。お父さんは日本人なんだけど、お母さんがイギリス人だからこの見た目らしい。

 遠くから見たことはあるけど、話をしたのは初めて。

 そういえば寡黙であまり誰とも話をしないって山田が言ってたな。


「ハンカチもらいに降りるね」

「えっ」


 如月さんがハシゴを使って降りようとしたんだけれど!!

 ちょっと待って! 僕の位置からだとパパパッパン……下着が見えちゃう。

 慌ててくるっと回転し、背を向けた瞬間。


「キャァ!」

「えっ!?」


 悲鳴が聞こえて再び振り返ると、如月さんがハシゴの前で足をぐらつかせ、そのまま下に落ちそうになっていた。


「うわぁ!? 危なっ!」


 手をバタバタさせて、必死に重心を後ろに戻そうとしているんだけれど。


 これは————落ちる!


「如月さん!」


 この時、とっさに落下地点に向かって走った。


 何だか落ちてくる如月さんがスローモーションに見えた。


 下に回り込めたっと思った瞬間。


 頭に衝撃を感じ、僕は如月さんの下敷きになったんだと確信した。


「いてて……如月さん大丈夫?」


 頭を打ったのかな? ズキズキと痛い。

 あれ? 下敷きになったはずなのに人の上に乗っている感触が?

 慌てて起きると。


「え?」


 僕が寝そべっていた。


 ————僕がいる!?


 ちょっと待って、マジで意味がわかんない。

 なんで目の前で僕が寝てるの!? 

 

「いちち……ああ〜ビックリした。死ぬかと思ったやん」

「えっ……あ……」


 僕が起き上がり喋り出した。

 しかも関西弁?


「あっ、あの……」


 恐る恐る声をかけると、僕が僕を見た。何だかややこしい!


「なっ、なんでウチがおるん!」

「え?」


 ウチ? 僕が僕を見て指さしてビックリしている。

 

 視線を下に下げて自分の姿を確認すると、今の僕はスカートを履いている。


 これって……


「僕たち」「私たち」

「「入れ替わった!?」」

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