ヘビ女のキス
ヘビの噂
「任務、終わりました。」
「あ、おかえり!」「お疲れさん。傷はないか?」
私が部署に戻ると、マイとチナツさんが暖かく出迎えてくれた。
ただ、私はそうやって感情を向けられるのに、まだ慣れれなくて、言葉を返せず、コクリと頷くだけ。こんな自分が嫌になる。
自責の念で黙りながらに、デスクへ戻る。
すると隣のデスクのヒナが呆れた様に私を見ている。
「あんた、何年目よ。この前入ったばっかのファーストの方が何倍も『徒花』っぽいわ。」
「……ごめん」
「あー、何謝ってんのよ!もっとどっしり構えてなさい!あんたがそんなだと、同期のアタシまで格が下がんでしょうが!」
「……あ、コーヒー。」
ヒナが私に強く言葉を吐いた時に、手にも力が篭ったみたいで飲んでいたコーヒーの缶がひしゃげてしまった。
「はぁ、もう。あんたと話してるとホント調子狂うわ。」
「……ごめん。」
「あー!もー!だからねぇ…っ。」
またヒナの小言が始まりそうな時、タバコの匂いが部屋に流れた。ヒナは口をつぐんで正面に座り直す。
それに倣う様に部屋にいる皆んなが一度居住まいを正した。
タバコの匂いはヒツジさんが来る合図だからだ。
「悪い。昨日の二日酔いで遅れた。」
ヒツジさんはいつものように目の下にクマを作って気怠そうに部屋に入ると、隊長の席に重く腰掛ける。
「隊長!いい加減困ります!ヒツジ隊長がしっかりと模範的な姿を見せないと、
ランさんが隊長に詰め寄り、これもまたいつもみたいに説教を始める。
ヒツジさんはそれを適当な相槌を返してあしらってゆく。
「ですから!「あー、そうだった。最近、ヘビがまた出たそうだ。」
「ヘビ?まだ冬だし、ウチとは関係ないんじゃないの。」
ファーストが首を傾げる。
「ちっちっちっ!違うよ、ファーストちゃん。この音色……じゃなかったハーモニ様が説明してあげるよ。ヘビってのは動物のことじゃなくて、一般人、魔法少女、ヴェイグリアかまわずエネルギーを吸うっていう、ウチらの追ってるランク4の討伐対象の魔法少女のこと。分かったかな?」
「そっ。」
「ちょいちょい、お礼は?お礼はどうしたよ?先輩だよ?」
「だから?それとも何、無理にでも頭下げさせたりとかしたいの?」
「やや、そういうこと……じゃなくてさ。」
ファーストの喧嘩腰にハーモニの声がどんどん小さくなっていく。彼女は肝が小さい。
このハーモニがかつてはランク3の討伐対象だったのが、私には未だに信じられていない。
ヒマワリさんがスカウトしたからには本物だったんだろうけど。
「ハーモニの説明の通り、ランク4の討伐対象であるヘビがまた被害を出し始めた。今回は一般への被害が多いそうでな、上は早急に手を打ちたいそうだ。魔法少女課から何人か出すのに加えて、『
「勿論です。ヒツジさんの頼みならどんな」
私の口はヒツジさんの人差し指で止められた。
「ストップ。言っただろう?ここじゃそうじゃない。『徒花』のメンバーのためならだ。」
「はい……『徒花』の皆んなのために、隊員番号05、リルカ。この任務受けさせていただきます。」
「助かる。」
私の頭をぽんぽんとヒツジさんが撫でた。
……少し気恥ずかしかったけど、嬉しい。
「それでは、マイ、ハーモニ、ファースト、必ず任務を成功させましょう。」
「おー!」「はーい。ランク4かぁ、大丈夫かな。」「了解……チッ、なんでアタシがリーダーじゃねぇんだ。」
即席のチームによるヘビ討伐任務は、皆んなの思い思いの言葉で始まった。
"徒花"リルカ ー対魔法少女制圧作戦担当魔法少女部隊「徒花」ー 朝定食 @33333cycle
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