貞操逆転世界で異種族ハーレム

@unonosasara

第1話 未知との遭遇

その日、俺は迷っていた。

夜の山道。 不安と焦燥に押し潰されそうになりながら、手ぶらで暗闇の中を進み続けた。


「やばい……やばい……。 誰か通りがかって……。」


時刻は深夜12時を回っていただろう。 偶然人が通る可能性など皆無だった。

辺りは見覚えの無い植生が広がっている。 見知った山の中を歩いていたはずだったが、気づかぬ内に相当な距離を進んでしまったようだ。

まるで別の世界に迷い込んだかの様な感覚。 山が怖いなんて思った事も無かったのに、無限大に広い世界、どこかの遠い国で一人ぼっちで歩き続ける、そんな心地にさせられていた。

すぐに見知った道に着くはずだ、とズンズン歩いたのが失敗だった。 こうなると知っていれば暗くなる頃には動くのをやめて朝を待つべきだった。

山で遭難したら無闇に動き回らない、そんな基本をなぜ俺は忘れてしまったのだろう?


持ち物は何も無い。 スマホも財布も家に置いて、ジャージ一丁のまま推定10時間以上も山を歩き続けていた。

毎日の様にしていた趣味の散歩で、登山なんてものではない。 近所の山道を歩くだけ。 標高も低い、小学生が学校登山で登るような危険の無い山。

道なき道を歩いた記憶は無い。 だから、多少迷ってもすぐに知ってる道に出てこれるはずだった。 視界の開けた所からは盆地に広がる市街が一望出来る。 だのに、気づいたら、俺は見知った全てが見当たらない場所を歩いていた。

草木も道も、漂う雰囲気も、何もかも違う。 戻れないくらい遠い場所に迷い込んだ。

こんな簡単に、遭難してしまうのか。 熊に遭遇すれば死の危険があるし、そうでなくとも水が飲めなければ3日で人は死ぬ。

一度悪い想像をしてしまってから、船底に穴の空いた船の様に、心に不安が侵入してきている。

死の予感を振り払う事が出来ないまま、俺はただ足を前に進めた。

歩くというよりも、ただ足を前に突き出すだけ。 さっきから俺はこんな事を、何時間も考え続けている。 堂々巡りで、何も閃かず、何も整理出来ないまま、ただ不安を抱えて山道を進み続ける……。


ガサガサッ

パキッ


……!? なんだ……? 人……じゃない! ……野生動物。 鹿かイノシシか、多分、俺の周りにいる。

それまで何時間もぶっ通しで動いていた足が止まった。 全身が石の様になって震え一つ起きない。

風の音じゃないはずだ。 獣……だが熊ではないと思う。 だって熊は朝方か夕方に主に活動するんだ。 俺だってそれぐらいは知っている。 それぐらい知ってるから、一番ビビったのは夕方だった。 そう、不安になり始めたのはあの時だったな。

熊に食べられるかもしれないと思って、急いで下山するために俺は急いでしまったんだ。 留まってても熊に襲われるかもしれないんだから、俺はやっぱ間違ってないよな? 結果的に遭難したけどさ。深夜に熊は出ない。 遭難して飢え死ぬかもとは思ったけど、熊に出会う事は……熊……。 危険ではない。 熊ではない。 今は暗い。熊、熊なの? お願いだよ。 神様……。


「ククク……。お坊ちゃん、いけませんねぇ。 こんな夜道を一人で……。」


!!!!!!!!!!!!!

心臓が破裂しそうだった。 極限まで緊張して耳を澄ませていたら、なんとそいつは人間だった!

やったー! 助かる。 これで助かるんだ。 助かった、助かった……。

……なんだ……? 目の前に見えている状況の奇妙さに脳が混乱を起こす。

台詞──妙に不穏な──と共に、暗闇からユラユラと出てきた女はまるでコスプレの様に現実離れした風体だった。

女子プロレス? デカいな……多分190cmくらいで……肩が筋肉で丸くなってる。

毛皮を身に着けて、肌を大胆に露出させている。 物凄い巨乳だな……。

そして最悪なのは、右手には刃物が握られていた。 ナイフ? 月光が反射して鏡の様にピカピカ光ってる。 犯罪系……? ヤクザ……?

緊張と緩和の連続で脳がバグを起こしていたが、「自分を助けるために垂れた蜘蛛の糸ではない」事は瞬時に理解出来た。 女の姿を視認してからここまで、およそ0.5秒。 俺は目線を外さないまま後ろに後退りした……。


ずむっ


え……? 壁? さ、下がれない。 情報の洪水に思考を硬直させたまま振り返ると……。


「おわああ!!!!!!」


「おっとこっちには戻れませんよ坊っちゃん。フフ……」


な、なんだ!? 人だ! もう一人いた! 後ろにも女、こいつもデカい。 挟み撃ちにされてる。 こいつらはきっと山賊か何かで、俺みたいな通行人を攫って殺すんだ。 手に持った刃物で旅人を解体して捨てるんだ。

なんなんだよこれ……? 理解出来ないけど不味い事が起きてる。 現実感がなさ過ぎる。 でも逃げなければいけない。 こいつらには悪意があって、俺に何か悪い事をしようとしている。 事の整合性よりも身の安全を確保しなければ。


「あの、あの! 僕お金とかなくて。 本当に、何も見てないですし。 迷ってただけで。 あの、すみません。すみません。」


「うるせえ!いいから黙って……こっちに来な!とにかく大人しくしてればいいんだよ。」


強い力で地面に引き倒される。 ゴザの様な物が敷かれていて、土は付かなかった。

急に投げられたショックで思考停止している最中、服をまさぐられていた。


「姉御、武器は持ってねえみたいですぜ。しかも正真正銘男一人。ツイてますねぇ……。」


「ウクク、ウプ。ウグ……ウククククク♪ おい坊っちゃん……大声なんて出すなよぉ。 これ分かるよなぁ。」


ゆっくりと2回うなずく。 本物のナイフ。 多分、逆らえば何の躊躇もせずに切り刻まれると感じた。


「アタシらも別に……お前をいじめたい訳じゃねえんだ。な?分かるな?お互い楽しい方が良いよな?痛いの嫌だよな?」


コクコク。 とにかくうなずく。 助かるために絶対に刺激してはならない。


「うんうん……分かってくれたら良いんだよ。 お前が分かってくれるならアタシらもこんなナイフに用は無いんだから……騒いだり逃げたりするんじゃないよ。」


逃げるという考えは、消え失せていた。 かけっこをしても一瞬で捕まる事は目に見えている。 人は、明確なフィジカル差を前にすると抵抗をする気力が消失する。

心も身体も凍りついて、石像になるのだ。 そして、ただ目の前の嵐が過ぎるのを待つ様になる。 経験は無いが、いじめ、虐待、そして性的暴行被害に遭う人間もこんな気持ちなのだろう。

全力で暴れていれば、急所を狙えば、なんて傍からは言いたくなるかもしれないが、

それは岡目八目という奴だ。 とにかく俺は、ナイフがあろうと無かろうと、この世界に自身の全てを差し出し沙汰を待つ様な心持ちだった。


「あ、あ、姉貴。コイツ、ガッチガチに固くしてますぜ。」


え……? 気づいたら二人の女は裸になっていた。 しかもパンツが下ろされてる。 どういう状況……? 急速に死の恐怖が後景化していき、頭の中にピンクな想像が駆け巡る。 いや、そんな事は起きないはずだが。 なんだ? 何が求められている?


「あえ、あう、あ……、お、お前ぇ!!!!!!!!」


姉貴と呼ばれた女は口の端に涎を垂らしたまま、キョロキョロと俺の顔と陰部とを見比べると、酷く興奮した様子で俺に覆いかぶさる。 噛みつく様に口で口を塞がれ、隠す様に全身を抱擁される。


「あちょっ私にも!ちょっと……ねえ姉貴ぃ、私にも触らせてって!ねえ!」


なんだこれ──美女に取り合いされて──柔らかい──飲み込まれる──。

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