暴君 (long ver.)

Grisly

暴君. (long ver.)

K王国の王は、暴虐の王であった。


昼間はろくに政治もせず、

毎晩、国中の美女を徴用しては、

お遊び三昧。

飽きれば、容赦なく斬り殺した。


加えて、

酒、宴、余興、国費を費やすこと甚だしい。

いさめる者達もいたが、

逆らう者は容赦なく殺した。


ついに戦争までも始め、

逆らう者達を皆、最前線へ送ってしまった。


当然、国は傾き、餓死者も増える。

王の遊び道具にされた

国民達は、嘆き悲しむ。



このままではいけない。

重臣達は、王子を持ち上げて、

クーデターを起こし、

王を追放した。




新しく王になった王子。

彼もまた、王のお遊びでできた子供である。

散々虐げられて来た。


彼のようにはなりたくない。

自分に深く刻まれている

決して消えることのない苦い記憶。


当然というべきか、

彼はとても優秀な王様になった。


積極的に政治に関わり、

重臣達の話を聞き、

次々に良い政策を打ち出し、


酒や宴の類は一切せずに、

貴重な国費を、

全て福祉や人々の生活向上に割り当てた。


国民や重臣達もまた、

必死で王を支えた。

なにせ昔のひどかった時代を知っている。

二度と同じ過ちは繰り返さない。



数年後、当然と言っていいだろう。

国はかつてないほど大繁栄を遂げる。

彼もまた、王妃を迎え、

次の世継ぎも手に入れた。


苦労を強いられてきた王である。

やっとできた心許せる家族。

これ以上ない程、家族を愛し、大事に思った

当然、妾も一切とらなかった。



ある時、繁栄している国の噂を聞きつけ、

遠い国から使者がやってくる。


国の繁栄をアピールすれば、

外交的に有利となる。


使者を精一杯もてなし、

国の至る所を案内する。


感動した使者が、涙を流し王に訴える。

「こんな王国は見たことがない。

 私は感動致しました。

 よっぽど

 親御さんの教育が良かったのでしょう。」


王は複雑な気持ちになる。

実際のところ、全く逆なのだ。

私は彼のようにならないため努力して来た。

それだけを目指したと言ってもいい。


しかし、

確かに私がこうなれた原因は父であり、

親の教育が良かったと言えば、

そう言えないこともないのだ。

皮肉な事だ。彼はにやけてしまった。




けれども、彼の顔は、

すぐ真っ青になってしまう。

たまたま近くに

ハイハイして来た息子を見た時だ。


この理論通りに事が進めば、

彼はひょっとして暴君に育つのでは…






















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