12. クレイジーな1日の始まり
ミシェルから呼び出しがかかったのは、ブルーベルが撮影場所を訪れた翌日ーー久しぶりの休日の昼過ぎのことだった。寝起きの掠れ声で電話に出た私にミシェルは今から来れるかと尋ねた。
「え、無理。今日は忙しいの、これからまた寝る予定だから」
『それ忙しいって言わないでしょ』
電話の向こうの友人はため息混じりに突っ込んだ。まるで何かの漫画で読んだことのあるようなやりとりだ。
「とにかく寝るから、おやすみ」
ミシェルのことだからまた面倒なことを頼もうとしているに違いない。「これから寝る」というのはパワーワードなのだ、少なくとも私にとっては。
『寝るな! とりあえず話を聞いて』
通話終了ボタンを押そうとした私を大声で制したミシェルは、今日私に電話した理由を告げた。
『ハウスキーパーのニーナに誕生日プレゼントをあげたいのよ。ニーナが夕方に家に来るまでに選びに行きたいから、その間ベンとポニーを見ててもらいたいの』
ベンとポニーというのはミシェルの家にいる5歳の元気過ぎる双子の兄妹で、ミシェルの母ガーネットの歳の離れた妹セシリアの産んだ子供たちのことだ。複雑な事情によりセシリアは姉と同じく未婚のまま双子を産むことを決めたが、出産してすぐにセシリアが病気で亡くなり、姉であるガーネットが引き取ることになったのだという。
以前からミシェルは完璧に家事や掃除、育児の手伝いまでしてくれるニーナのことをよく気にかけていた。ぶっきらぼうだけれど、ミシェルは案外優しいところがある。
「分かった、これから行くわ」
友人の頼みとあっちゃ仕方ない。私は大欠伸をかましたあと、寝起きの身体を無理やり起こしてベッドから出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます