第19話 事件現場へ
「ヒルダとはいつ契約して、いつ力を得たの?」
青春の目的を聞いたついでに、力の秘密を問う黄緑。
「……そうだね、元々ヒルダは……」
『あのォーそろそろいいっすか~?』
いちゃついてる二人に、待ち合わせ場所に来ていた三バカが恐る恐る聞いてきた。
「あ、ごめん。じゃあ揃った事だし、行こうか」
と、青春は黄緑から離れる。
……三バカは黄緑に睨まれている。まるで蛇に睨まれた蛙のように三人は震え上がった。
話は途切れ、少し残念に思った黄緑。しかし目的は別にあるため仕方ない話だ。
それから全員で今回の目的、猟奇殺人事件の起きた事件現場へと直行する事に。
♢
――都内某所。
とても首都にあるとは思えないような、寂れた廃墟に、ガラクタの山が辺り一面にあった。
ここは解体現場か?と、錯覚しかねないほどの場所だった。
元々なにかで仕切ったり、立ち入り禁止のカラーコーンなどもなかったらしいので、工事現場だったわけではない。
だが、今はさすがに猟奇殺人鬼が出入りし、事件を起こした現場ともあり、警察官の姿もあって、ちゃんと立ち入り禁止になっていた。
青春達は少し離れた所で立ち尽くしていた。
「……まあ、当然入れないよね」
「青くん、夜にでも侵入する?」
「夜にも多分警備の人くらいいるよ」
「じゃあ強行突破?」
拳を振り、シャドーボクシングする黄緑。……青春はため息つく。
「……警察のお世話になるだけだからやめときなよ」
「ならどうするの?」
「……聞き込みでもしようか。人数いるし。何でもいいから今回の事件の事とかさ」
「了解!……でも青くんそういうの苦手でしょ?」
……エスパーかなにかか?と、青春は思った。
図星だからだ。
青春はおとなしい性格なため、知らない人に話しかけ、聞き込みとかするのは得意ではない。
というか苦手だ。
黄緑はそんな青春の性格を熟知していた。
無表情で黙ってる青春を見て、肯定と判断した黄緑は、
「なら無理しなくていいよ!そのためにこいつらがいるんだからさ!」
三バカを指差す。
「さあ、聞き込みしてこーい!」
「「サーイエッサー!!」」
文句一つ言わずに三バカは聞き込みに向かった。
面倒事を引き受けてもらうというのは、助かるが、少し気が引ける青春。
「……なんか三人に悪いね。後でジュースでも奢ろうかな」
「も~お人好しなんだから~でも、そんな所が好き!」
黄緑はいつものように抱きつこうとするが、青春はスルッと回避。
さて、その間どうするか……そう思っていたら、
「ちょっと君!なにしてんの!」
警官が騒がしい。
何事かと思うと、一人の女がカメラもって、現場を撮影しようとしていたのだ。
「ここは立ち入り禁止だし、撮影も禁止だ!」
「まあまあ固いこと言わず~」
「ダメだダメだ!帰れ!」
警官達に追い出された女性は舌打ちしている。
大きな丸眼鏡をかけ、容姿がわかりづらい女性だった。
髪は燃えるように赤く、長いロングヘアー。背丈は黄緑ほどではないが、そこそこ高身長。
……よく見ると、黄緑と同じ学園の制服を着ていた。ということは虹色学園の生徒のようだ。
今日は休日なのになんで制服着てるのかは謎だが。
女性はこちらに気づくと……
「あれ!?夏野氏ではないですかあ!」
黄緑を発見すると手を振って近寄ってくる。
青春は訪ねる。
「知り合い?」
「あーうん……先輩。漫画同好会の部長でもあるんだけどね」
となると、彼女は三年ということになる。
黄緑は所属してるわけではないが、漫画やアニメが好きなため、ちょくちょく顔は出していた。だから知り合いなのだ。
「先輩一体何してるんですか?こんなところで」
「取材でござるよ〜今度書く同人誌のネタになるかと思って〜」
「は?殺人事件の現場が?なんで?」
黄緑の疑問に急にわたわたしだす先輩。
「そ、それより黄緑氏もなんでこんなところに?それに隣の少年は……」
青春を見て動きが一瞬止まる先輩。
そして鼻息荒くして青春の至近距離に近寄る。
「か、可愛いですなあ!フーフー……こ、これは今度出すBL系同人誌のネタに」
「ストーップ!!」
黄緑は先輩の首根っこつかみ、青春から離れさせる。
「先輩、この子をネタにするのは許しませんよ?……ていうか近寄るな」
無言の圧をぶつける黄緑。
だが先輩はビビる様子を見せずに、
「おやおや?大事な子なのですか?」
「ええまあ……」
少し照れくさそうに鼻をかく黄緑。
「ふむ……それより僕、お名前は?ウチは秋葉という者でござるよ。虹色学園の3年生」
「……闇野青春です。中等部の1年です」
深々と頭を下げた青春。
秋葉はニヤニヤしながら黄緑を見る。
その態度にいらつく黄緑。
「なんです?」
「いや~?まさか黄緑氏にショタコンな趣味がお有りとはおもわなくてえ……」
「……」
否定しない黄緑。
わりと自覚があるのかもしれない。
ただそれとは別に秋葉の態度がむかつくので、殴りたくなっているのだが。
「……秋葉さん。何かこの事件について知ってますか?」
青春は聞いた。
取材してるというので、なにかしら掴んでるかもと思い聞いたのだ。
「何かとは?」
「例えば事件内容とか、犯人についてとか」
「犯人はある不良グループの人間。この周辺の人を手当たり次第惨殺したとか。その中には仲間もいたらしいでござるね」
その殺しの手口はなかなか残忍なものだったと聞く。
遺体はバラバラなものもあれば、腹を掻っ捌いて臓器をえぐり出したかのような死体もあったらしい。
それが複数ともなれば、現場は相当凄惨なものだったはず。
「ただ警察への通報は犯人がしたとか。でも自首とかではなく犯行は否定してるという謎行動してるらしいでござるね。凶器は見つかってるし、犯人の指紋もべったり。返り血もめちゃくちゃついてて状況証拠はバッチリらしいでござる」
そうなると犯人じゃないと疑う余地はなさそうだが……
「犯人はなんか化け物がどうとか言ってたらしいけど、薬でもやってると思われてたらしいでござるね。ただ薬物反応はなかったみたいでござるけど」
「……どうも」
青春は礼を言うと考え込む。
(妖魔の犯行だとすると、現場にまだ潜んでる可能性は高い。いや、サイクロプスのように根城にしてたとすれば……)
青春はもう一つ質問する。
「似たような事件、ここであったりしませんか?」
「数年前にヤクザの抗争で殺しまくってた構成員いたらしいけどそれは関係なさそうでござるね。でもそのさらに前にもなんかあったとか聞いた気が……」
「ヤクザの抗争って犯人は?」
「なんか自殺したとか」
まだ確証にはいたっていない。
でも青春には妖魔の仕業にしか感じられなった。
青春はふと、上を見上げる。
事件現場の隣には廃ビルが見える。
ビルには立入禁止の札はあるが、見張りはいない。
「夜、ここから侵入でもしてみようかな……」
ボソリと漏らすと、
「えっ!?侵入するでござるか!?ふ、ふふふ!楽しそうでござるね!混ぜてほしいでござる!」
秋葉が興奮しだす。
どうやら失言だったようだ。
関係ないものは巻き込めないというのに。
「いや、そんなことはしませんよ。言ってみただけですから。それじゃありがとうございました。お姉さん、行こう」
否定し、そそくさとその場を離れる二人。
秋葉はそんな二人を手を振って見送った。
――つづく。
「青くんにしては凡ミスしたねえ。でも先輩の事だしなんかついてきそう……」
「次回 現場侵入 さて、なにが出るかな、なにが出るかな〜」
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