闇夜の少年挽歌

メガゴールド

出会い

第1話  少年との出会い

 ――深夜0時。都内某所。


「はぁはぁっ!」


「無駄だょ。どこに逃げようが助けなんてこないにょ」


 一人の女性が、甲高い声の異形な存在に追い回されていた。


 異形はスライムのような姿をしている。粘っこく、ぐにゃぐにゃしてる。

 顔も小さいながらある。人の顔より小さい目、鼻、口。


 動き事態はそこまで速いわけではない。だが、女性は次第に走り疲れ速度を落とすが、異形のスライムは落とさない。

 よって、ジリジリと距離を詰められ……。


 ついには路地裏の行き止まりまで追い詰められてしまう。


「なに、なんなの? なんだってのよ!?」


 女性は気が動転としているようだ。無理もない。こんな気味悪い化け物に追い回されてるのだから。


 おまけに逃げ場がなくなった。

 女性は肝が冷える。想像したくない、だが彼女は思ってしまう。


(こ、殺される……?)


 顔をブンブン振る。


(嫌……嫌だよ。こんなところで死にたくない。まだ花の女子高生、やりたいこともいっぱいある)


 彼女は腰が抜け、地べたにへたり込む。


(パパ、ママ……。誰か、助けて……)


 目から大粒の涙がこぼれ落ちようとした時だった。


『お姉さん大丈夫?』


 頭上から、少し高めの男の子の声。

 女子高生は顔を見上げる。


 すると、背にしている壁の上に、幼さの残る綺麗な顔立ちをした、背丈の小さい男の子の姿があった。


 見るからに年下。さすがに誰かに助けを求めたかった女子高生も、こんな少年に助けてなど言えず、


「に、逃げて! か、怪物が!」


 少年に逃亡を促した。

 だが少年は、異形のスライムを見ても眉一つ動かさずに、壁から降りて女子高生の前に立つ。


「ど、どうして!? なんで逃げないの!?」

「なんでって……必要、ないから」


 澄まし顔で少年はつぶやいた。


「お姉さん、助けてほしいでしょ?」


 少年は女子高生へ質問した。

 当然助けてはほしいだろうが……


「この場を切り抜けるには、僕が助けるしかないんだ。だから、助けを求めてくれないかな」

「は、は? な、何言ってるの君? さすがにあなたみたいな少年に助けて!……なんて、恥ずかしくて言えないって」


 女子高生はわりと高身長。女性とはいえ、大の大人と大差ない背丈。

 一方少年はいくつかわからないが、小学生くらいの背丈の子供だ。


 横から見れば、大人が子供に助けてと言ってるみたいに見えるだろう。たしかに恥かもしれない。

だが、そんなこと言ってる状況などではない。


「羞恥心なんて捨てたほうがいいよ。死にたくないよね、お姉さん」


 少年の言葉に、女子高生はゆっくり頷く。


「女性は素直が一番だよ」


 口元だけ、ニコリとする少年。

 そんな綺麗な顔を見て、女子高生は顔を赤らめる。


 幼い少年に釘付けになるのはいかがなものかと思われるが。


「じゃあ一言、助けてって言ってほしい」


 女子高生はもう一度頷き、一言。


「た、助けて……」

「……了解」


 少年が了解の一言を告げた瞬間すぐ、一瞬でスライムはバラバラに弾け飛ぶ。

 少年がなにかしたのだろうか?


 スライムの破片は地に落ちていき、煙を出しながら消滅していった。


 気づくと少年の手には小さなナイフのような物が握られていた。

 これで退治したのだろうか?


 少年は担いでいたバックから、何かごそごそと探しだす。

 女子高生はその少年のバックに名札が付いてることに気づく。そこには【闇野青春】と書いていた。


 これがこの物語の中心人物となる、二人の出会いだった。



 ――つづく。


「状況が読み込めてない、そんな私。何故こんな事に? 化け物は? そして君は一体……」


「次回 闇野青春やみのあおはるくん。 ……せいしゅんくんじゃないんだ」

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