満月の夜

いしも・ともり

ショートショート 

満月の夜は出産が多く

満月の夜は交通事故が多い


満月の夜は衝動性が高まり

満月の夜は犯罪が多発する


満月の夜は狼男が出現し

満月の夜は人を突き動かす


「満月は人を狂わせる」らしい…


私が運転する車の助手席には私の親友

今夜は車窓から

大きなオレンジ色の満月が見える


逸る気持ちがアクセルを強く踏む

いけない ここで急いてはいけない

ここで満月の力に負けてなるものか

アクセルを緩める

ハンドルを握る手に力がこもる


親友を道連れにする

今夜の儀式は朝まで続く

親友はまだ何も知らない


きっと後悔するとわかっていて

それでも私を突き動かすこの衝動を

誰も止めることはできない


すべてはこの満月のせいなのだ

わたしはこの満月に負けるのだ


***


「で?この大量のつまみとお菓子とお酒は何なの?」

「え?ダメ???」

「あんた、また家で朝まで飲み明かすつもり?

 何?またなんかやらかしたの?!」

「今夜も飲み明かそうぜ!心の友よ!!」

「やだーー!また太るじゃんーー!」


そう、すべてはこの「満月」のせいなのだ―――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

満月の夜 いしも・ともり @ishimotomori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ