06-10

 私は戦場で、そう、かくあるべき使われ方で、実に久しぶりに殺人をたのしんだ。殺さなければ殺される、そして全方位に敵がいるこの絶望的状況。主を守り、本懐を遂げさせる。それが従者たる私の務めである。そしてそれが剣の存在意義である。殺し、殺し、殺しまくる。逃げる敵兵には目もくれず、少年は馬を走らせる。敵兵は少年の馬を射た。幾本もの矢が馬に当たり、ついには倒れてしまう。少年は助かる見込みのない傷を負った愛馬の首を、躊躇ちゅうちょなく切り落とした。そして少年は走り、殺し、そしてまた走り、一直線に本陣に到達した。そこまでに切った雑兵の数は百や二百ではなかっただろう。もちろん、もし剣が私でなければ、こんな事はできなかっただろう。

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