06-09

 夜も白み始める頃に、少年は私だけを持って、おそらくは少年の愛馬にまたがって、敵の本陣に真正面から斬り込んだ。戦略も戦術もあったものではなかった。ベレム砦と名付けられていたあの遺跡から、敵の本陣までまっすぐに、少年は駆けた。勿論いくつもの防衛線はあったが、全てが手薄だった。それもそうだ。前日までに少年の部下だった将軍や貴族のほとんどが王国側に寝返り、反乱を起こしていた少年たちは孤立無援の状態に陥っていたからだ。少年たちの全滅は誰の目にも明らかで、故に兵士たちは完全に油断していたのだ。そしてそこにきて、私の存在があった。

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