ルブラニア中期史

@samayouyoroi

伝説を訪ねて(1487年)

去り行く英雄の影

代表弔辞全文

9月16日、私は最後の従士の帰天を聞きました。


貴方が連邦に齎した功績は枚挙に暇がない。近年では第二次軍政改革を実施して三軍の再編成による統合幕僚本部を設置し、外交面ではレイブランド共和国、ファロンとの相互不可侵条約の締結を主導した。貴方は我らが連邦の偉大な守護者でした。


我々は知っている、貴方は唯の軍人ではなかったという事実を。我々は知っている、貴方は彼らの最後の一人だったという事実を。我々は知っている、かつて我が連邦の危機を救った偉大なるバルサスの四従士最後の一人の名を。


ルティネイツ・マティニソン、貴方を言い表す言葉は多い。ロードマイン大公、連邦軍初代総監、単独元帥、円卓の騎士、連邦軍大将、あるいはやはりここに帝国騎士団団長という立場も加えるべきだったかも知れません。貴方は固辞したでしょうが。


レイブランド共和国、ファロン両国との不可侵条約を締結した今、貴方を最後の従士と表現するのには些かならず躊躇いはありました。この表現は南北戦争の記憶を刺激するのではないか?と。しかし私は敢えてこの言葉を貴方に捧げたい。


戦争は悲劇しか生みません。そしてそれを我が連邦を含む三大国に身をもって示し、そしてその悲劇を乗り越えたからこその相互不可侵締結だと、私は考えるからです。貴方を最後の従士と称するのは、かつての悲劇が完全に終わった事を示すものです。


貴方を表す言葉は多い。しかし私はかつての過ちの戒めとして貴方をこう称したい。バルサスの四従士最後の一人、ルティネイツ・マティニソンと。


貴方に救われた一人として御霊の安穏を祈る。

我らは常に光と共に。


大陸歴1487年10月11日

第十九代ルブラニア帝国皇帝レクセオン二世

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