第24話 共有したファイティングスピリット
翌日のインド戦、先発も全て選手たちが考えたようである。練習でやったこともない布陣を敷いたことにより浮足立ち序盤にリードを許したが、プラッグの3塁打、ゲッターのランニングホームランなどの猛攻により、最終的には11対8逆転で勝利をものにした。ゲームセットの瞬間に選手たちは、勝利をスタンドにいた真に手を振って報告した。
6月21日(水)、気を取り直しての今大会の最終戦の対戦相手は日本であった。グランドに戻った真は、元気の足りなかった選手たちに最後の試合、全力で元気に戦うように檄を飛ばしてのぞんだのである。
台湾戦でいいピッチングを見せたチャイヤーを先発とし、台湾戦に続き実に素晴らしい試合を見せてくれた。相手打線を6点に抑えたまま最終回、最後の攻撃となった。ランナーを2塁まで進めたが、すでに2アウトである。
ここで1度も出場機会のなかった、スパーンブリー体育学校のポーンを代打に送った。全員が、最後の力を振り絞って、力の限り応援した。その思いが通じたのであろうか。彼は初打席にもかかわらずヒットを放った。最後の最後に全員で、強豪日本チームから1点をもぎ取ってこの大会を締めくくってくれた。
試合が終わって韓国滞在の最終日、タイチームは全員でソウルの街に出かけた。彼らは家族や友人たちへのお土産を探していた。そしてこの日、真が一番感動したことは、タイの代表選手1人1人が野球連盟からお小遣いをもらっていたが、ほとんどの選手たちがグローブを買っていたことだ。
彼らは「これで練習してもっと上手くなりたい」と言っていた。昨年の大人のナショナルチームと好対照の行動をとった子どもたちの計り知れない可能性に敬意を表し、真は彼らの成長を心から願うのであった。
こうして第1回AAアジア大会を終えて、タイナショナルチーム一行はタイに帰国した。真は、フィリピン戦は落としたものの、上位3チームの中で特に台湾戦と日本戦で好ゲームを演じてくれたこと、そしてこれからの彼らの人生にとって必要なファイティングスピリットを共有できたことを最大の成果と捉え、その後のタイでの野球の普及活動に、新たな決意で邁進していくのである。
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