第20話 厳しい合宿を終えて決戦の韓国へ

 6月12日(月)の休日、1ヶ月以上に及んだ長く辛い合宿を乗り越えたご褒美に、チョンブリ―県の海で思いっきり遊ばせることにした。真もひと時の休暇を楽しんだ。岩にくっついている貝が牡蠣に似ていたので「これはおいしいぞ」と言って食べてみせた。味も牡蠣そのもので美味しかったのである。

 海に飛び込む者、走り回る者、寝そべってだらだらとしている者、人それぞれ精一杯に楽しんでくれたと思う。こう見てみると、彼らはまだあどけなさの残る中学生であり、遊んでいたい年ごろなのだ。そんな彼ら見つめていると、1か月以上にわたって厳しい練習で縛りつけてきた真は、複雑な思いになっていた。

 昨日、ミネベアの責任者であり野球連盟を設立した柏原さんが激励に来てくれた。バッティングでの腰と腕の使い方、グラブのはめ方、ボールの握り方、スローイング方法、ゴロの2種類の捕る位置、1時間以上にわたって熱心に指導をしていただいた。

 終わって「今回の1ヶ月以上の合宿は、ちょっとやりすぎたんじゃないかな」と真が感じていたとおりの同様の課題意識から、今後はこのような機会に参加するにしても、もう少しゆったりとやった方がいいことを確認した。13日(火)に、選手たち全員を一時帰宅させ、6月15日(木)、いよいよタイのAAナショナルチーム一行は、11時30分発ソウル行の飛行機に乗り込んで出発したのである。

 飛行機に乗って安定飛行になると、子どもたちは徐々に騒がしくなってきた。立ち歩く者もおり、とにかくガヤガヤとうるさかったが、初めての海外への飛行機での移動の者がほとんどだったこともあり、真はしばらく選手たちの様子を見守っているうちに久しぶりに口にしたワインであっという間に酔いがまわり、長い合宿の疲れからか寝てしまった。

 起きるとすぐに朝食が出る時間で、急いで食べ終わると朝7時にソウルに到着した。空港からは韓国のスタッフに案内されてバスに乗り込みホテルに向かった。バスの中でも、選手たちには少し浮かれた雰囲気があったので、静かにするように言おうか迷ったが、初めての海外なら無理もないと静観していた。

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