こじらせJCは異世界から帰りたい
高山小石
第1話 おいでませ異世界
な、なんじゃこりゃ~~!!
私は床(推定素材:石)に倒れたまま、目だけで様子をうかがった。
私はさっき中学校から帰宅して着替えて、自宅のリビングで住み込みお手伝いの小夜さんが煎れてくれた美味しいお茶を飲んでいた、はず。
なのになぜか倒れている私の周囲には、リビングにきれいに飾られていた置き時計や写真立て、使っていたカップやらが散らばっている。
小物の向こうから、いつでも刺せるように槍を構えた戦士っぽい人たちが等間隔で私をぐるりと囲んでいるっぽい。ぽいのは、見えない背後からも鋭い視線を感じるから。
一触即発なピリピリした空気の中、私は動かず、どういう態度をとれば正解なのか考えた。
小夜さんと二人暮らしのマンションに、こんなに広くて天井の高い儀式をするような祭壇みたいな場所はない。
誘拐? とも一瞬思ったけど、戦士の衣装が現代日本ではありえないから、もしかしなくてもアレだよね。これって異世界転移か召喚だ。
今時の中学生の嗜みとして、異世界転生も転移も召喚も、もちろん読んだことがある。
準備が整っている感じからして召喚ぽいけど。
でも召喚なら、もっと好意的なんじゃないの?
なんで私、猛獣みたいに警戒されてるの?
「~~~~」
誰かの声がしたけど意味はわからなかった。
つまり私に言語のチート能力はないってことだ。
マズいなぁ。
さすがにちょっと焦ってきた。
私を殺す気ならさっさと殺してるはずなのに、殺されていないということは、相手側に私を殺す気はない。
それでもこれだけ警戒されているなら、下手に動くより、動けないふりをしている間に相手側が安心できる場所に私を運んでくれるだろうと思って動かなかったんだけど。
話もできないのはマズい。
落ち着いて話して、私に敵意がないことをわかってもらう予定が崩れた。
てかさ。テンプレなら、むしろ相手側から説明してくれるよね?
勇者や聖女になって国を救えだの、異世界の知識を与えろだの。なんで相手側からのアプローチがなんにもないの?
どうしようか考えていた私を、戦士の一人が荷物のように肩に担いだ。
ヤバいヤバいヤバい。
口を開けないくらい揺らされながら運ばれた先は地下牢で、重々しい音をたてて鍵をかけられた。
え? 詰んだ?
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