第2話 女の子は箱入りお嬢様
あのあと5時の鐘がなったので、帰宅した。
翌日学校帰り見に行ってみたがいなかったが、かわりに諭吉がおいてあった。
「女の子が諭吉に…」
とりあえず怖いので、そのまま秘密基地においておくことにする。僕は千円から上のお金など拝んだことがない、そのため諭吉なんぞ恐怖でしかない。
しばらく秘密基地でゲームをしていると、ガサガサと草をかき分ける音がする。
気になった僕は秘密基地の覗き口からひょっこりと顔を出してみると、女の子が秘密事の入口付近で、ウロウロしていたのを見つける。
相変わらずボロボロだけど、元々あった腕の傷はなかった。代わりに火傷をしているように見えるが、ここからでは少しばかり遠い。
「ね!君どうしたの?」
秘密基地の入り口から顔をだし聞いてみる。
「ひゃあっ⁈」
おっと、ビックリさせてしまったようだ。反応が可愛らしく、声もいい。
「ごめんごめん、僕驚かせるつもりはなかったんだ。あの後ちゃんと帰れた?怪我してたみたいだから消毒しといたけど…」
いきなり声をかけたのは悪いと思っているが、秘密基地では神出鬼没でいたいのだ、仕方がない。
「えっと、この前はありがとう…?その、迷惑かけた癖に悪いんですけど…しばらくここに居させてもらえませんか?」
「いいよ!」
二つ返事である。
しょうがないよね、だって可愛いんだもんこの子。ボロボロだけど…
それに秘密基地ってのは自慢したいものだ。
あ、でも自慢すると秘密じゃなくなってしまうし、うーん?
「ま!いっか!」
「………?」
ひとまず女の子を秘密基地に案内する。入り口は隠してあるので、見つけにくいはずだ。
僕が案内してあげないといけないだろう
僕に手を引かれて女の子は秘密基地に入った、少し目を見開きながら辺りを見渡す。
「どうだ!すごいでしょ?ね!僕一人で作ったんだ」
「2回目ですけど、凄いですね。しかもこれを一人で作ったんですか?」
「そうだよ?大体2ヶ月ぐらいかかった」
異能のおかげで疲れないけど、作業が多かったのもあって時間はかかっている。
「それで、君名前は?僕は
「私は、
とても丁寧に自己紹介してくれた女の子…いやユイの言葉は、壁を作るようにした言葉に思えた
「別にそんな畏まらなくていいよ、言葉崩してくれた方がとっつきやすいし」
「いいんですか?叱ったりしないんですか?」
「……?しからないけど?」
驚いたような表情をしたユイは、しばらくすると意を決したかのような顔になった。
「わ、わかった。よ、よろしくですッ‼︎」
ギュッと目をつぶって、何かの衝撃に備えるかのように体を強張らせた。
しばらくして、なにもやってこないことに気づいたのか、ユイゆっくりと目を開けた。
「えっと…何してるの?」
「………痛くない」
「腕は痛そうだけどね」
「怒ってないの?本当に⁈」
「怒ってないよ?」
なんだかわからないけど、ユイはとても嬉しそうだ、不思議である。
「とりあえず色々聞いていい感じ?その怪我とか…」
「うん!わかった、言います!なんでも!話したい‼︎」
とてもテンションが高いユイは、聞いてもないことから何まで色々と話してくれた。
話を聞く限り、ユイはお金持ち、親が厳しい、ユイのママヤバい、怪我は専属の医者が治してくれる、火傷はお仕置きのせい、なんだとか。
火傷がお仕置きとは過激すぎる…
逆に何したのかと思えば、作法の授業てミスをしてユイのママがキレてやったらしい。
そんな聞くだけで痛そうな話を嬉しそうに話すユイは、自慢話をする子供みたいだ。
僕のような同年代の子どもには会ったことがないらしく、話すことが楽しいらしい。
「学校は?」
「行ってないよ、家庭教師だけ」
「へー、大変だね。ちなみに話が変わるんだけど、異能ってどんなの?僕はただの強化系だからつまんないんだよね」
「私の異能は支配系の【契約】だよ」
「能力に名前付いてるってことは凄いかんじ?」
異能に名が付いたものは、軒並み強力と判断された異能につけられる呼称のようなものだ。
「凄いかどうかはわからないけど、大体のことはできるよ?」
すると、目の前にいたはずのユイは一瞬で姿を消した。
「え⁈」
「うしろだよ」
バッと勢いよく振り向くと、確かにユイがいた。
「スゲーッ‼︎かっこいいね!」
「私の能力は、自分や相手、物と契約したり、契約を押し付けたりして、その内容を実行できる能力なの。相手の同意があれば効果はもっと強くなって、契約内容を精密にすれば体力の消耗も減らせるし、効果も長持ちして出力も上がるようになるの」
なかなかにえげつない能力だな…
「でも契約って二人以上の同意がどうとかって話を聞いたことあるけど?」
「まぁ、能力は人が勝手につけた名前だから、多少の違いはあるかな?」
「で、さっきの瞬間移動はどうやったの?」
「さっきのは、自分に対して【私は一瞬でツヅムの後ろへ移動する】って内容の契約をしたの。契約は文章さえできてれば、頭でその文章を浮かべるだけで契約できるよ」
「じゃ、じゃあ僕も契約すれば…」
「できるよ、瞬間移動したい?」
「うん‼︎」
俺の返事を聞いたユイは、嬉しそうに笑って両手から羊皮氏と羽ペンと出現させた。
「え゛?ナニソレ」
「契約書だよ?この紙にこの羽ペンで内容を書くと、まさしく契約ができるの。さっき説明した能力と別に、これは相手との同意も必要だし、私の同意も必要。でもそれ以上に強力な強制力と力があるんだよ」
「それで、どんな契約を…」
緊張した趣で僕はユイの言葉を待つ。
「まぁ、今回は使わないけどね」
いたずらっぽく笑ったユイが、ネタ晴らしかのようにそう言った。
「使わないのか…」
その後も詳しくユイの異能を解説してもらう。
強力無比な能力に僕は魅入られ、ワクワクとした高揚感が全身を襲った。
僕だって男である、かっこよくて強い力にはあこがれるのだ。
聞くだけで楽しい自分とは無縁の未知な異能、僕が
契約書の詳細については、明確な目的を書けば大抵の場合発動する、ただしあやふやでは契約失敗となり、発動しない。
一度発動すると契約内容によっては、永続的に効果が発動する。契約後は契約者同士に紙が配られ、その紙を契約者全員が破くことで契約破棄が可能。
発動しない例で言うと、【Aは最強になる】これは発動しない、最強という点があやふやだからだ。
しかし、【Aはこの契約後、戦闘訓練の末、クマに勝てるほどまでに強くなる】これは発動するのだ。
明確で詳細な条件があれば、発動する。
ただしあまりにも無茶な契約は発動せず、あくまで対象に可能性があれば発動するらしい。
「さっきからスゲーしか言ってないかもだけどスゲー…」
ユイは僕の言葉を聞いて、嬉しそうに笑っている。その後急にモジモジし始めたユイは、少し緊張した様子で言った。
「あ、あのさ…そのっ、わ、私と一緒に遊んでください!」
「もちろん」
「やったぁ!」
そんなわけで、僕は、ユイと日が暮れるまで遊んだ。
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