4-7 ただいま
春哉さん達の活躍により、新千歳空港には北海道警察も駆けつけ、莉央奈ちゃんと西条さんが連行された。
私たちも詳しい取り調べのため、旭川警察署までパトカーに乗って行くように指示を受けた。しかし、どうか普通列車で旭川まで向かわせてもらえないかと春哉さん達は強く懇願した。
私も皆さんと最後まで一緒に行動したかったので、懸命にお願いした。
その結果、私服警察官を同行させたうえで、普通列車で旭川へ向かわせて貰えることになった。
札幌と岩見沢で乗り換え、取り調べを受けながら北へと進んでいく。
そして、新千歳空港を出発して約3時間、待ちに待った到着を知らせる放送が流れる。
『この先、揺れることがありますので、お気をつけください。終着、旭川に到着いたします。忘れ物のないようお支度の上、足元にお気をつけてお降りください。今日も、JR北海道をご利用くださいまして、ありがとうございました』
18:34、1800キロ以上の旅路の果てに、ついに旭川へ到着した。
夏帆さんはジャンプしてホームに飛び降りて両足で着地すると、両腕を伸ばして背伸びをする。
「あー、やっと着いたー!!」
慣れ親しんだ高架のホームに数ヶ月ぶりに降り立ち、数年ぶりのような懐かしささえ覚える。
「美柚さんのお母さんは改札の外で待っています。こちらに来てください」
同乗していた私服警察官に案内され、エスカレーターを降りて木の温もりを感じるコンコースを進んでいく。すると、階段から見下ろした改札の先に、ずっと会いたかった人が大きく手を振って待っていた。
「美柚!!」
「・・・・・・お母さん!!」
その姿を目に捉えると、誰よりも真っ先に階段を駆け降りる。
溢れる感情を抑えきれず、改札を抜けて、駆け寄ってきた母の胸へと飛び込んだ。
「うわぁぁぁん、お母さん!ただいま!会いたかった!」
「お帰りなさい、美柚!生きて帰ってきてくれてよかった!」
母もまた嬉しさのあまり涙を流していた。いつまでも抱きついて、この温もりを感じていたい気分だった。
「・・・・・・心配してくれてありがとう。無事に帰って来れたのも、一緒に付いてきてくれた皆さんのおかげなの」
遅れて改札を抜けてきた春哉さん達を母に紹介する。彼らは私たちの再会を喜んでくれて、目を潤ませていた。
3人に向けて、母は深々と礼をする。
「本当にありがとうございました。なんとお礼をしたらいいか・・・・・・」
「いえ、いいんです。俺たちの希望で付き添ってきたので。むしろ、ほとんど普通列車を乗り継いできたので、何日も待たせてしまって申し訳ないです」
春哉さんが返事をすると、母は笑みをこぼしながら答える。
「とても信じられないです。気が張り詰めてずっと落ち着かなかったでしょう?長旅、本当にお疲れさまでした」
つい数日前まで不自由な生活をしていた頃には、ここへ帰ってこれるとは思わなかった。大阪でこの3人に出会えなかったら、私は一体どうなっていたのだろう。命の恩人といっても過言ではない。
感動の余韻に浸っていると、その場に一緒にいた警察官に声をかけられた。
「水を差すようでごめんなさいね。もう少し取り調べがありますので、署まで来ていただけますか?念のため、病院で診察も受けていただいたほうが良いと思います」
「えー、車内でもたっぷり話したのに。これ以上はもう勘弁してほしいわ」
渋った反応をみせる夏帆さんを、稔さんがなだめた。
「まぁ、いいじゃん。俺たちの疑いは晴れたわけだし、美柚ちゃんが罪に問われることもないだろう。もうちょっとだけ付き合ってあげようよ」
「取り調べが終わりましたら、今夜は私たちの家に泊まってください。たくさんお礼をしたいので」
「やった!ありがとうございます!美柚ちゃんのお家に泊まるの楽しみ!」
お母さんの誘いに夏帆さんが興奮気味に答える。私も自宅で皆さんと過ごせることを嬉しく思う。
楽しいひと時を過ごす前に、私たちは警察官に連れられて駅舎の外へと踏み出た。
久しぶりに降り立つ旭川の空気。駅の外に広がる夜空には一番星が輝いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます