第9話 至福の3日間

 実は今までの人生で、3日間だけ膜がなくなる、という不思議な経験をしたことがあります。


 それは、20代後半ぐらいの時の出来事です。


 ある時、私を覆っている分厚い透明な膜が、いきなり強制的に取り除かれていったのです。


 するとその瞬間、外界のあらゆる情報が入ってきました。

 そこで、色々な目に見えない細かい事も分かるようになったのです。


 それは、まさに「世界と繋がっている」という普通の健康な人の感覚でした。


 その後、色々なことが、見える見えない両方の大量の情報が私の中に入ってきたのです。


 その時私は、ほとんど会話をしないでいた妹とも、うまく会話をすることができるようになりました!


 その時は、世界のあらゆる情報網と繋がっていて、あらゆることが「分かった」ため、場の空気を読みながら会話をすることが可能でした。


 「普通」って、本当に凄いんだな!! って、心から感じ、その状況を楽しんでいました。


 ですが、それはたったの3日間しか続きませんでした。


 3日後、信頼できない人と会話をしたその途端、また膜が私を覆ってしまいました。


 あの時の「奇跡」は、どこから起こっていたのか分かりませんが、本当に不思議でした。


 再び膜が覆ってしまった後に、あの時みたいに「奇跡」が起こることを心から望みました。が、もうずっと、膜が取れることはありませんでした。


 でも、あの時に分かりました。


 普通の膜の無い人って、あんなにも素晴らしい世界を感じているんだなってことが。


 今もまだ、膜がかかったままです。今はとりあえず諦めて、膜のかかったままの状況で、幸せになれないか? と考えています。


 今はまだ、「一生膜があるかもしれない」を受け入れようとすると辛いです。が、それを受け入れたら、何か変わるかもしれないなと、最近は思っています。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る