第179話 家名
「よぉ~し、みんな! お肉の回収は終わったね?」
「はい、完全に」
「見落としもありません」
「うん! それじゃあ領都に戻ろうか!!」
「「「ハッ!!」」」
というわけで僕らは、ミノタウロスというお肉の回収を終えて領都へ戻る。
領都に戻ったら……ミノタウロスのお肉でバーベキューだ……
フフッ……楽しみだね……
「おそらく、多少でも危機察知能力のあるモンスターなら……ノクト様から発せられているヤバい気配を察して、思いっきり逃げようとするだろうな……」
「ああ、喰われるかもしれんって身の危険を感じている奴は、全力で逃げの一手だろう……」
「俺……正直、気配を読むのって苦手なんだけど、今ノクト様が発しているヤバい気配だけは分かっちゃうもんなぁ……」
「だな……そして、そんな喰われる心配のない俺たちですら分かってしまうのだから、その辺のモンスター共としちゃあ、これ以上ないぐらい恐慌状態に陥ってるだろうさ……」
「そう思うと……ちょっとかわいそう?」
「いやいや、モンスターなんぞがかわいそうなわけあるかい!」
「まあ、モンスター共には……俺たちの領都もガッツリやられたもんなぁ……」
「とはいえ……こんなことをいうもんじゃないんだろうけど、不正を働いてた上の連中がゴッソリ始末されたこと……これだけは、ぶっちゃけよかったなって思っちまうんだよな……」
「確かになぁ……人手不足で俺らも大変ではあるんだけど……それでも、クソみたいな上司共がいなくなったのはありがたい限りだよ……」
「あとは……ちゃんと復興できるかどうかだよなぁ……」
「まあ、ファーレン様や魔法士らのおかげで瓦礫の撤去や建物の土台作りはできて、あとはどんどん建てていくだけ……そういった意味で復興自体はどうとでもなりそうだけど……問題は次に来る領主様だろうな……」
「う~ん……しっかりした領主様だといいんだけどねぇ……」
「でもまあ……ちゃんと領地経営をしていないとモンスター共にやられるってことは教訓として得ただろうから、とりあえず大丈夫なんじゃないか? 少なくとも、これからしばらくのあいだぐらいはな……」
「だといいんだが……こればっかりは、領主様が来てみないことには分からんか……」
「だなぁ……ホント、お願いしますよって感じだ……」
おしゃべりに興じているものの、みんな最低限の警戒だけはしている。
そして僕も、気配を探りながら歩いている。
まあ、それでモンスターの気配を感じないから、多少みんなの口数が多くなっているっていうのはあるかもしれないね……
そんなことを思いつつ森の中を歩き……ようやくといった感じで領都に到着。
よし……誰一人欠けることなく、無事に到着できてよかった!
そして門番の衛兵と帰還の挨拶を交わす。
「お帰りなさい!」
「無事のご帰還、何よりです!」
「うん、ありがとう!」
そして挨拶も済んだところで門をくぐり、領都の中へ……
「おっ! 領兵たちが帰ってきたみたいだ……」
「確か今日……ミノタウロスの集落を掃討しに行ってたって話だよな?」
「ああ……いつ飽和してもおかしくないぐらい、バチクソ危ない集落だって聞いた気がするぜ!」
「ひぇ~っ! そんなヤバい集落を掃討しに行ってたのか……」
「それを聞くと……よく帰ってこれたなって思っちまうよ……」
「う~ん……見た感じ領兵たちの表情が明るいから……たぶん、成功したみたいだな?」
「おぉっ! やったじゃん!!」
「それにしても……ウチの領兵って、そんなに強かったのか?」
「……ッ!!」
「それだけ強いのに……なんで、この前の襲撃で領主一族をはじめとした中央部が全滅することになったんだ……?」
「いわれてみれば、確かに謎だな……」
「その理由……教えてやろうじゃないか」
「……理由?」
「ほほう、興味深いな……」
「そんで、そんで? 早く聞かせてくれよ!」
「あの先頭を歩いているお方を見てみな……」
「お方って……もしかして、あの子供のことか?」
「……ん? あの子供……どこかで見たことがあるような?」
「ふぅ~む……アッ! 俺、知ってる!! アイツ! ミートボーイだ!!」
「……ミートボーイって……まさか! あの子供のことだったのか!!」
「そういえば、今回向かった先はミノタウロスの集落って話だったか……なるほどね……」
「さすがミートボーイってわけか……あれ、でも待てよ……ミートボーイがなんで領兵を引き連れて歩いてるんだ?」
「お前ら……情報が古いぞ? ミートボーイはドラゴン討伐の功績を認められて叙爵し……ミート卿となったのさ!」
「ミ……ミート卿!?」
「そして、ミート卿は各地を巡りながら、ここみたいにヤバくなってるモンスターの集落を潰して回っているのさ!」
まったく……ああやっていいふらす人がいるから広まっていくんだよなぁ……
ちなみに、叙爵した際に家名も得たのだけど、名前自体は自由にできたので「ホツエン」という家名にしたのだ。
やっぱりさ、ホツエン村の名前を残したかったからね……
というわけで、現在の僕の名前は「ノクト・ホツエン」となる。
だからさ……呼ぶんだったら、ミート卿じゃなくてね……ホツエン卿にしてくれないかな……
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