第160話 再会を果たす

「その少年が、まだノクト君の探しているジギム君と決まったわけではないだろうが……かなり可能性が高そうだな?」

「はい、そうですね………………ジギム……」


 こうして、思いがけずジギムの手がかりかもしれない情報を入手することができた。

 ジギム……ついに僕たちは、再会を果たすことになるのかな……?

 それから、門番の衛兵さんたちの話によると、ジギムはドラゴンを討伐するとともに、これまで街や村を襲撃してきた元凶も倒したといっていたらしい。

 それで今、王弟様に会って自分の功績を認めてもらおうとしているとのこと。

 また、これにより王都からトッドさんが呼ばれ、僕たちが来る少し前に到着していたらしい。

 といったところで門を通してもらい、改めて僕たちは中央部に向かって進むのだった。


「この際、ドラゴンのことはともかくとして……ジギムと名乗る少年が、まさか姉上まで倒したと主張していたとはな……」

「クヨウさんが、実はナイン様だったということを知らなかったのか……名前までは出していなかったみたいですね……?」

「うむ……知っていて、あえていわなかったという可能性もあるが、果たして……」


 ジギムと名乗った少年が、本当に僕の知っているジギムだとするなら……いったい何を考えているのだろうか?

 クヨウさんは、あの杖でモンスターを召喚するのに魔力と生命力を使い過ぎて命を落とした。

 その姿を僕たちははっきりと目にしていたのだ……見間違いではない。

 であれば……ジギムと名乗った少年はウソをついていることになる。

 そんなことをしてなんになるというんだ……?

 なあ、ジギム……君は本当に何を考えているんだ?


「ノクト君、逸る気持ちも分かるが……まずは落ち着こう……」

「……! はい、そうですね……僕ったら、つい……」

「いや……実のところ、私自身に言い聞かせている言葉でもあるのだ……」

「レンカさん……」


 確かに、レンカさんとしても……クヨウさんを倒したとウソをついている人間が急に現れたら、心穏やかではいられないだろう……

 そうして僕たちは逸る気持ちを抑えながら、中央部へ中央部へと進んでいく。

 そして最後の門を通過し、王弟様のいる最中央部の建物に到着。


「やあ、ファーレンにノクト君、おかえり」


 そこで、先に衛兵さんたちから伝達されていたのだろう、王弟様が建物の外に出て僕たちを出迎えてくれた。


「叔父上、ただいま戻りました」

「同じく、帰りました」

「それで……ルクルゴ君の姿が見えないようだが……?」

「……」

「……」


 その瞬間、僕たちは言葉に詰まってしまった……

 そんな僕たちの反応を見て、何があったのか察してしまったのだろう……


「そうか……ルクルゴ君……」


 王弟様は、小さくそう呟いた……

 また、その呟きとともに、寂しそうな表情を浮かべてもいる……

 そしてこのとき、『ああ、ディムナン殿にも……約束を果たせぬこと……私の代わりに謝っておいてくだされ……』とルクルゴさんが言っていたのを思い出した……

 そうだった、ルクルゴさんに頼まれていたんだった……

 そんな頼み、絶対に聞きたくなかったけど……

 でも、ルクルゴさんの最期の頼みだったからさ……

 伝えないわけにはいかないよね……


「王弟様……ルクルゴさんが……約束を果たせず、申し訳ありませんと……謝っておりました……」

「そっかぁ……残念だよ……とっても……」


 そういいながら王弟様は、さらに寂しげな表情を深めるのだった……

 ルクルゴさんと王弟様は短いあいだに意気投合して、とっても仲良くなっていたからね……

 でも、変な言い方になるかもしれないけど……こんなふうにルクルゴさんのことを悲しんでくれる人がここにもいてくれて、よかったなって思えてもくるんだ……


「でも……そんな中で、ファーレンとノクト君だけでも無事に帰ってきてくれて、本当によかったと思うよ……」

「叔父上……心配をかけました……」

「心配していただき、ありがとうございます」

「いやぁ……たいしたことじゃないさ」


 こうして寂しさに包まれつつ、僕たちは再会の挨拶を交わしたのだった。

 そして、ある意味において……ここからが本題となるのかもしれない……

 なぜなら……


「よう、ノクト……久しぶりだな?」


 ジギム……僕の大事な友達……

 そして、あの日からずっと会うことがなかった……

 いや……僕自身、ジギムのことを探してはいたつもりだけど……

 でも……ルゥが命を落とすことになった原因を作ったジギム……

 そんなジギムと再会を果たすことに、僕の心の奥深いところでは躊躇していたところもあったと思うんだ……

 だから、今までジギムが見つからなくて、正直なところ安堵していた部分もあった気がする……

 そしてついに、その瞬間が訪れたというわけだ……


「おいおい……もしかして俺のことを忘れたなんて、そんな冷たいことをいうんじゃないだろうな?」

「そんなことないよ、ジギム……しっかり覚えているよ……ただね、いきなりの登場だったから、ちょっと驚いていただけだよ……」

「ま、そりゃそうか! なんたって俺の隠形は、王国一だからな!!」


 確かに、ホツエン村で一緒に遊んでいた頃から、ジギムの隠形は上手だったからね……

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