第29話 防風

 奥へ奥へと進んでいくオレたちはヤツと出会った。

「はーい、ここからは通行止めだよ。いいかい?勘違いしないでくれたまえ、僕は君たちと戦う気はないのさ」

凍牙フロストバイト

塗装ドロウ氷弾アイスダンス

 躊躇いなく吹雪の嬢ちゃんと仮面を被った坊主が氷を放つ。しかし、なんらかの影響によってそれが跳ね返ってきた。

「そう上手くはいかないようね」

「チッ、外れたか」

 跳ね返ってきた氷をオレとカリムの坊主と共に防ぎはしたが、こいつはどうも面倒だと思っちまうような相手だと直感で感じる。

「君たち……、なんで僕の話を聞かないかなァ!僕は君たちとは戦わないって言ったよねぇ?なのに君たちは僕に危害を加えようとした!君たちにはうんざりだよ」

 コイツのいう通りではあるのだが、コイツが明確な敵ということを除けば概ね合っている。

「お前たち、オレが気を引くから先に行け。質問は無しだ」

「分かった」

 吹雪の嬢ちゃんは聞き分けがよく、状況をすぐに感知してすぐに先へと走り出す。

「あとはお願いします」

 カリムの坊主は心配そうなツラをしてオレに告げながら走り出したが心配するな。

「この喧嘩はオレのものだ」

「そうかいそうかい!君が僕に喧嘩を売ってきたってことだね?」

 頭に血が上りずっとキレ散らかしている目の前のクソガキは舶刀をその場で振り回し、血走った目でオレを見つめていた。

「ああ、そういうことだ。勘のいいガキで助かるぜ」

「君はこの僕をもっと怒らせるのかい?いい度胸だよ!」

 クソガキはさっきまでキレ散らかしていたと思ったら、今度は急に落ち着いてオレに剣を構える。どうなってるんだ情緒。

黒の舶刀ブラックカットラス、コードネームバウ」

「名乗りをあげるとは気前が良いじゃないか、なら、ベルナール・アイゼン」

「いくぞ!」「いくよ!」

 少なくとも剣士としての心得を持っているらしい。敵…、テロリスト風情と思っていたことを詫びよう。オレはお前を心から相手しよう。

「だが!」

 踏み込みが甘い。互いに間合いを詰めるがオレの方が先に辿り着いている。所詮はガキだということだ。

 そう思いながら振った剣槍はナニモノかの影響によって、オレが放った剣撃と同じモノが飛んでくる。すぐにそれに気づき、それを防いだのだが訳の分からない事象を体験したオレは少々混乱した。

「あははは!良い顔だねぇ!どうせ僕のことチビだのガキだの侮ったんでしょ?その結果がこれだよ」

 確かに剣槍を振った際には何もなかった。だが気づいたら目の前にオレと同じ剣を振るっている軌道が見えた。何をした?

「ああ、一瞬だが侮ったのは違いねぇ。それは詫びよう。すまない」

「なんだ、聞き分けが良いじゃないか」

 オレが詫びを入れたところ素直にそれを受け取り、きょとんとした顔をしてその場で佇んでいた。

 しかし、あの何かは厄介だ。吹雪の嬢ちゃんたちが放った氷が跳ね返ってきたり、オレが攻撃をしたタイミングで飛んできた攻撃は一体どうやってやったのか?

「試してみるか」

 再び間合いを詰め攻撃を仕掛けていく。牽制なんて野暮なことはしない、正真正銘の致命傷を狙った一撃。

「だからそんなんじゃ……、ッ!?」

「イッテェ、なぁ!!」

 跳ね返ってくる斬撃を胸で受け止め、文字通り肉を斬らせて骨を断つように刃を敵に突き立てる。

「ぐう、なんだっていうんだ!」

 どのみち当たらないと思っていた一閃は相手に浅くもダメージを与えた。

 オレでさえめちゃくちゃな戦い方だが、これが通るということは絶対的なものじゃねぇってことだ。そしてもう一つ、この攻撃の太刀筋はオレの太刀筋そのものだ。ということはだ。

「ふん、このくらい安いもんだ」

 受けた傷は深くない。まだまだ戦える状況だ。しかし、長期戦に持ち込まれると不利なのは変わらんのはこれで分かった。

「全てを飲み込む嵐のような舞を見せてやる」

 距離をとっさにとろうとする敵に即座に暗いつき、嵐を纏うように剣槍を回転させて攻撃のタイミングを察知されないように間合いに入る。

「この狂人めッ!」

 普通の剣士ならばテメエの能力にビビって接近することを躊躇うかもだが、普通じゃない剣士は誰を前にしても剣を交えることに嬉々することだろう。

「褒め言葉だ」

 回転させた剣槍は純粋な振った時に送らられる力と遠心力が組み合わさり、文字通り暴風を纏った剣槍が相手に襲いかかる。がしかし、またなんらかの力による攻撃が来るのを感じる。

「ソイツはもうオレには効かない」

 攻撃時に剣槍と共に回転することで回避およびその攻撃を受けつけることを可能にしている。だからこそこの反射してきていると言ってもいい攻撃は単調で、出てくる場所さえ分かっちまえば楽勝だ。

「まだ終わらないよ!」

 その掛け声と共に風が湾曲してくるのを感じてすかさずその一閃に自身の攻撃を当てに行く。

「緩いわ!」

「ヒッ!バケモノめ!」

 人をバケモン呼ばわりとはいいご身分だと言ってやりたいが、それはこの殺し合いを制してからでいい。

「セアアアッ!」

 反射をぶち抜きながら勢いを殺さず、そのまま小僧を斬り殺すように剣槍を振り下ろす。

「ヒィイ!」

 小僧の身体へと刃が斬り込む寸前で刃を止める。

 もうコイツの戦意はないに等しい。その証に自身が持っていた剣を落として攻撃に怯えるように小さくなっていたからだ。

「あーーくそッ!」

 こういう時は後味が悪い。どこまでいってもガキはガキだったか。だが、オマエの先程までの戦う姿に敬意を表する。

「フガッ!」

 剣槍の柄でとりあえずぶん殴り、大きく吹っ飛んだ小僧はぴくりとも動かず伸びていた。

「しかし、少し喰らい過ぎたか」

 攻撃を受けながらの攻撃行動は諸刃の剣と言える。自身にダメージが入る分相手は面食らった顔をして思考停止してくれるのはありがたいな。肉を斬らせてなんとやらだ。

「嬢ちゃん達に追いつけるのはもう少し先か…」

 少しだけ休むことにしよう。この小僧とも話がしたい。剣士になって剣士としての義務と役割を果たせたんだ。少しくらいは神も見逃してくれるさ。

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