第二幕 My sword has proof of determination

第6話 萎れた花は返り咲く

「あ’’あ’’あ’’あ’’あ’’」

 まだ頭の中で並風さんの言っていた言葉が頭の中で響いている感じがします。

(リミッター?ふざけたことを)

 自身でもわかってます。私が気に入った相手でなければ本気が出せなくなってしまっているんです。昔にあった剣での交流でそう身についてしまった変な癖。

「どうしたんだい向日葵?まだ引きずっているのかい?」

 ええ、そうですとも。引きずりまくっていますとも。日々の研鑽では補いきれない精神の弱点、私にはこれをどうにかしなければいけませんし。

「剣聖戦ですか。確か夏休みと被っていましたっけ」

 もう一つ懸念にしていることです。正直表舞台で戦うことなんてないにも等しかったので少々心に引っ掛かりができるんですよね。

「剣聖戦くらいなら向日葵くらいの実力ならいいところまでいけるんじゃないのかい?」

「そう簡単にいけば私だってこんなナヨナヨした状態になりませんよ。あ、これ資料です」

 薫さんに必要な資料を渡しながら答える。

「ありがとう。そうだなぁ、迷っていても仕方ないんだし、もっと剣を持って確認してみてもいいんじゃないか?」

「剣に誓いを…ですか。一度自分自身と対面するのもいいかもしれませんね。というわけで」

 徐にソードケースを手に持ち、柄をレバーのように倒してサンフレアを抜刀する。

「いきます」

 剣を胸元まで掲げ、剣に誓うように頭を近づける。

「ふうむ、これでうまくいけばいいのだが」

 息を巻いてしてみたはいいものの何をどうすればヒントになるようなものを導き出せるのかがわからずやめてしまいました。

「わかりませんね。どうすればいいのかすらわからないです」

「じゃあ今じゃないんじゃないかな。然るべき時にきっとわかるはずだよ」

 それではこのモヤモヤは今のところじゃ解決できないじゃないですか。

「まあ、いいですよ。私だって思うところがあって今回の剣聖戦にエントリーしようと思ったんです。それでもまだ迷いがあるのだとしたら、それは私が未熟だからです」

 剣を握る手に力が籠る。

 これまではたかが剣だと思っていましたが、この考えも改めないといけませんね。あの時並風さんと戦って剣を交えて負けて、この負けは価値のあるものだと思いました。私が剣を持つ理由はただ家がそうだからとか、薫さんの護衛のためだとかじゃない別の何かに近づいた気がするんです。

「私は剣士ではありません。アナタの使用人です。でも、剣聖戦では無類の強さを誇って勝ち上がってみせます」

「その意気だよ向日葵。そういえば伝え忘れていたけど、剣聖戦、僕も出席することにしたから」

「んえ」

 一人で行こうと思っていたのにも関わらず、急な申し出によって気の抜けた返事になってしまいました。



「ってことがありまして、剣聖戦に出ることになりました」

「すごいね、あれに参加するんだ月下さん」

 放課後歩きながら前までにあったことを式野さんに話していました。

「私としては不安で仕方ないんですけどね」

「ふふ、いいじゃない?ある程度の緊張は必要よ」

 それはそうなんですけど、まだまだ心の突っ掛かりが取れません。

「それなら応援に行ってもいい?私も少し興味があるの」

 式野さんもきてくれるなんて嬉しい誤算です。正直薫さんだけと行っても面白くないですからね。

「そういうことならいいですよ。一緒にいきましょうよ。時期も夏休みですし、剣聖戦の合間合間でプレンティアを観光しましょうよ」

「いいわねそれ」

 放課後歩いて帰るには蒸し暑い時期に楽しい予定ができました。あとは、鍛練のみです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る