第6話 帰りたい……


「えっ!? ああっ……!!」


 身なりと言われて、私はハッとする。


 どうやら門番の人たちは、私の恰好を見て不審者だと思ったみたいだ。

 たしかに私は地上に出てから、着の身着のままでここまで来てしまっていた。これじゃあ怪しいと思われて当然だ。



「うぅ……すみません」

「もしや、本当に何の準備もなくここへ……?」

「重ね重ね、申し訳ありません……」

「あぁ、いやすまない。貴女あなたを責めるつもりはないんだ。しかし年頃の娘になんてことを……ドワーフの王は一体なにを考えているんだ?」


 私は赤面し、その場でうずくまってしまう。

 すると優しい兵士さんの一人が、上着を私の肩に掛けてくれた。



「あ、ありがとうございます……」

「門番長はただ職務に忠実なだけでね。別に悪気があって、あんなことを言ったわけじゃないんだ。許してやってくれ」

「はい、それは勿論です……」


 その兵士さんの方を見上げれば、愛嬌のある笑顔を浮かべた、若いエルフが居た。


 なんだか活発そうな雰囲気で、短めの茶髪が良く似合っている。

 でも皮の鎧を着ている門番長さんとは、少し違う格好なのは何でだろう?

 彼は飾りのついた立派な剣と、魔物らしき素材でできた光沢のある鎧を身に付けていた。



「俺の名前はジェルモ。本来は門番じゃなく、王族を護衛する騎士をやっているんだ」

「王族の護衛……そんな人がどうしてここに?」

「名はヴェルデと言ったか? 俺はキミを迎えに来たんだ。まぁ固いことはともかく、これからよろしくな!」


 ジェルモと名乗った騎士エルフはニカっと笑うと、私に向けて右手を差し出した。

 こんな私を迎えにわざわざ? い、良いのかな……?


 不安と申し訳なさを感じつつ、私はおそるおそるその手を掴む。



「ところで、ヴェルデは独りで歩けるか? いや、その様子だと時間が掛かりそうだな……」

「え? あ、あの……」

「よし、こうしよう。ドワーフほどじゃないが、俺は力が自慢なんだ。担いでいってやるよ」

「えっ、ちょっ……きゃあっ!?」


 私が何かを言う前に、彼は私をひょいと抱え上げ、肩に乗せて城の方へと歩き出した。


 ま、待って!

 ドライアードの次は、エルフにも担がれるの私!?


 通りを歩く人たちが、次々と振り返る。


 みんな何事かと思ってるわよね、絶対!?


「ちょっとジェルモさん! 私ちゃんと歩けますから!」


 私は恥ずかしさのあまり、涙目になって訴える。



「ん? なんだ、恥ずかしがり屋なのか? だがエルフの世界樹城は広い。ヴェルデの足に合わせていたら、あっという間に日が暮れちまうぜ」

「たしかにそうかもしれないですけど……だからってこれはっ!」

「あっはっは。心配しなくても、途中で地面に落としたりなんかしないって」


 ダメだ、この人!

 私の話をまったく聞いてくれないんですけど!?


 ジェルモさんは私をしっかり抱え直す。

 え、これ以上なにを――。


「よーし、それじゃあしっかり捕まってろよ。ちょっと走るからな!」

「ひゃああ! 服がめくれて……やめてぇええ!」

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